November 4, 2018 / 11:43 PM / 15 days ago

焦点:スバルに「トヨタの轍」、新たなリコールに米国リスクも

[東京 5日 ロイター] - SUBARU(スバル)(7270.T)に新たな米国リスクがちらつき始めた。同社が1日発表したエンジン部品のリコール(回収・無償修理)は国内だけでなく、米国など海外にも対象が及ぶ。とりわけ懸念されているのが世界販売の約6割を占める米国での動きだ。かつて急成長のツケとして大量のリコールと訴訟、制裁金などに苦しんだトヨタ自動車(7203.T)と重ね合わせ、スバルがその轍(てつ)を踏む可能性を危惧する声もある。

 11月5日、SUBARU(スバル)に新たな米国リスクがちらつき始めた。写真は同社のロゴ。米デトロイトで1月撮影(2018年 ロイター/Jonathan Ernst)

スバルは米国では、通商問題という「爆弾」も抱えている。同国で販売する車の約半分を日本から輸出している同社にとって、日米通商交渉が関税引き上げという結果になれば、収益への一段の重圧は避けられそうにない。

<販売急拡大のひずみとの見方>

今回のリコールは、スバル車の人気を支える「水平対向エンジン」に使われている「バルブスプリング」という部品が原因で、同社によると、設計が不適切だったという。事故は確認されていないが、国内で94件、海外で約130件の不具合情報が寄せられており、最悪の場合、走行中にエンジンが停止する恐れがある。

リコール対象は、国内では「インプレッサ」、「フォレスター」、「BRZ」、BRZの兄弟車として共同開発されたトヨタの「86(ハチロク)」の計4車種、海外では「レガシィ」も含まれ、計41万台。スバル車は国内で約10万台、米国で約14万台、カナダで約2万台、欧州などその他の地域で約10万台。トヨタの「86」が5万台ある。スバルの17年度の世界販売は約107万台で、リコールは年間販売の半分近い規模だ。

昨秋以降、完成車の検査不正問題に揺れ続けたスバル。それに追い打ちをかける形で発覚したエンジン部品の不具合について、同社は5年以上前から情報を把握していたという。

「兵站(へいたん)線が伸び切っている」――。トヨタが急速に世界展開と車種拡大を進めた2005年ごろから、同社の経営陣がよく口にしていた表現だ。成長スピードに人や組織が追いついていなかった状態を意味する。トヨタは09年から10年にかけて品質問題に揺れ、世界規模のリコールや自主回収により、延べ1000万台もの改修を余儀なくされた。

スバルの世界販売はトヨタの10分の1ほどの規模だが、ここ約10年で倍増している。SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは、販売拡大のスピードに現場がついていけなかったことが今回のリコールの背景にあるとすれば、「今後もリコールは出る恐れがあり、関連費用は増える可能性がある」と警戒する。

特に、スバルが破竹の勢いで売り上げを伸ばしてきた米国は訴訟大国だ。今後、重大なリコールが起きれば、リコール費用はもとより裁判費用、罰金、和解金など数十億ドル単位でかさみかねない。トヨタほどの経営体力がないスバルには「とても耐え切れない」と遠藤氏は話す。

<リコール公表の遅れに不信感も>

スバルは10月23日、品質関連費用の計上を主要因として18年4─9月期の連結営業利益を従来予想の1100億円から610億円に下方修正すると発表した。引き下げた額490億円の大半がリコール費用に充てられるもようだ。

同時に、ユーザーに修理を呼びかけるリコールの公表が業績修正の発表より9日遅れたこと、さらには不具合情報の把握から5年以上も経っていたことに「ユーザー軽視」との批判も上がっている。

業績修正は東京証券取引所、リコールは国土交通省と届け出先が異なり、手続き上の時差が出たためで、スバル広報は「意図的にずらしたわけではない」と説明する。不具合情報への対応の遅れについては「原因究明に時間がかかった」ためといい、「結果的にお客様にご心配をおかけし、世間をお騒がせした」と謝罪している。

<大幅コスト上昇の懸念>

スバルが直面しているのは品質問題だけではない。完成車だけでなくエンジンなどの部品も日本から輸出している米国で関税が引き上げられれば、収益面でひときわ大きな打撃となる。関税を避ける新工場の建設は投資リスクが大きい。かといって販売価格への転嫁も難しく、大幅なコスト負担は避けられそうにない。

スバルは自動車メーカーの中でここ数年、屈指の収益力を誇ってきた。営業利益率は毎年10%以上を確保しており、18年3月期も11.1%と業界トップの水準だったが、18年4─9月期は4.1%まで低下する。

同社は5日に18年4―9月期の連結決算を発表する。19年3月期の連結予想では、為替影響などによる収益の改善はあるものの、4―9月期の下方修正分はマイナス要因となる。

「品質強化に最優先で取り組む」としてきた中村知美・スバル社長。勢いを増しかねない逆風の中で、収益への悪影響の拡大をどう食い止めるか、厳しい対応を迫られている。

白木真紀 編集:北松克朗

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