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コラム:金銭面だけではない「不平等」=サマーズ氏
June 9, 2014 / 9:28 AM / 4 years ago

コラム:金銭面だけではない「不平等」=サマーズ氏

ローレンス・サマーズ

 6月6日、不平等と巨額の富が今回あらためて着目されたことにより、いかなる民主的社会においても最も根源的な課題、すなわち健康とすべての市民に対する教育を支えるという課題から注意がそれてしまうとすれば、悲劇的なことだ、とサマーズ氏は指摘。写真は昨年1月、香港で撮影(2014年 ロイター/Bobby Yip)

[ニューヨーク 6日 ロイター] - トマ・ピケティ氏の著書「21世紀の資本論」がベストセラーに躍り出たことで、不平等は経済政策をめぐる国民的議論の中心テーマになった。

ピケティ氏、そしてこうした議論の多くは、人口の上位1%と0.1%、および0.01%が得る所得および富の割合が急増している点に焦点を当てている。

これは確かに重大な問題だ。著書に用いられた特定の数値をめぐる論争がどのような決着を見るにせよ、上位1%に回った所得の割合が過去1世代の間に10%ポイント上昇し、下から90%人々の所得の割合が10%ポイント低下したのはほぼ確実だ。上位1%よりも所得を急速に増やしているのは、上位0.1%や0.01%の人々のみなのだ。

この議論は政策を建設的な方向に導くのに役立つ。

税の抜け道をなくし、より累進的に課税する税制改革を行うと同時に、一段と効率的な投資の配分を促進することは可能である。

地域区分条例から知的財産保護に至る分野まで、また金融規制からエネルギー補助金まで、公共政策は現在、優れた製品やサービスを生み出す者というよりは、政治システムに働きかけることを最も得意とする者に巨額の富を与える仕組みになっている。

ディーン・ベーカー氏やマンサー・オルソン氏など多くの著名なエコノミストが強調する通り、こうした利益追求の営みによる利益を抑制する政策を講じる必要があるのは明白だ。

ねたみを美徳としない限り、不平等を懸念すべき最大の理由は、中低所得層の労働者があまりにも与えられていないことであり、富裕層が多くを手にしすぎていることではない。従って不平等に関係した政策を評価する際の基準は、政策が中間層と貧困層にどんな影響を及ぼすかという点であるべきだ。

今日の米国から示される証拠を普通に解釈するなら、経済成長の見通しを著しく損なうことなく累進課税を強化するためにできることはもっと多くある。

しかし、不平等の重要な側面は限定的な所得の再配分のみを通じて解消されるものではないことを念頭に置くことは重要だ。

人生における2つの根源的な要素を考慮してみたい。それは健康と、子供にチャンスを与えられる能力だ。

ブッキングス研究所のバリー・ボズワース氏と同僚の研究者は、1920年生まれと1940年生まれのそれぞれのグループについて、55歳時点の平均余命の変化を調査した。結果は最富裕層の平均寿命は約6歳伸び、中間層では約4年伸びる一方、最下層の人々は2年の伸びにとどまった。がんによる死亡率がゼロになろうが2倍になろうが、平均余命の変化は4年に満たないことに照らせば、より客観的にこの数字を眺められるだろう。

このような差が生じるのはなぜか。医療を受けるゆとりがあるかどうかよりも、生活様式や食生活、ストレスの変化が大きく関係している可能性が高い。比較的高齢の人々を対象とした調査であるだけになおさらだ。米国民は65歳になった途端に、例外なくメデイケア(高齢者向け公的医療保険)の適用を受けられるのだから。

過去2世代の間に、富裕層の子供と貧困層の子供との学業成績の格差は2倍に広がった。

所得層の下位25%の子供が大学に入学する割合は6%から8%に上昇したが、所得層上位25%の子供では40%から73%に上昇している。

何がこうした傾向を助長しているのだろうか。多くの要因があることに疑いの余地はない。しかし、決定的なのは、平均的な富裕層の子供は教養などを高めるための活動を、平均的な貧困層の子供に比べて6000時間分も多く与えられているという点だ。具体的には本を読んでもらったり、博物館に連れて行ってもらったり、スポーツのコーチなど大人から受ける他の刺激が含まれるだろう。しかもこの格差は1970年代以降大幅に拡大した。

1920年代に作家のF・スコット・フィッツジェラルドとアーネスト・ヘミングウェイ両氏が展開した著名な論争は、時間の経過とともに真偽は怪しいとしても簡潔なやりとりに要約されている。 フィッツジェラルドの「金持ちは君や僕とは異なる人種だ」という主張に対し、ヘミングウェイは「そうだ、彼らは多くのお金を持っている」と反論したのだ。

このような医療と子供に対する教育機会を与える能力に関する分析からは、富裕層とその他すべての人々の違いは単なるお金の問題ではなく、もっとその根底にあるものであることがうかがえる。

今より公正ですべての人を包み込む社会にしたいなら、富裕層への所得配分の急速な増加に対する政策を立案することは必要だ。しかし、残りの人々を支援する対策が少なくとも同等に重要であると認識することが重要だ。

不平等と巨額の富が今回あらためて着目されたことにより、いかなる民主的社会においても最も根源的な課題、すなわち健康とすべての市民に対する教育を支えるという課題から注意がそれてしまうとすれば、悲劇的なことだ。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*ローレンス・H・サマーズ氏はハーバード大学教授。元米財務長官。

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