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フォトログ:10歳で85キロ、少年がめざす「横綱」への道

[東京 19日 ロイター] - 土俵のうえでウエートトレーニングに励む幼い力士たちのなかで、ひときわ目立つのが熊谷毬太(きゅうた)君だ。

 1月19日、土俵のうえでウエートトレーニングに励む幼い力士たちのなかで、ひときわ目立つのが熊谷毬太(きゅうた)君だ。毬太君の体重は10歳ながら85キロ。2020年8月、東京都台東区の小松竜道場で撮影(2021年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

毬太君の体重は10歳ながら85キロ。同じ年齢の子どもたちより2倍は身体が大きく、その圧倒的な力は5、6歳年上の少年と取り組んでも負けていない。

昨年は10歳以下の世界選手権で優勝。遠く英国やウクライナから参戦したライバルたちを倒した。

毬太君を鍛える父・太助さんが考案した稽古メニューは過酷だ。

稽古は週6日。地元の相撲教室で稽古するか、あるいはウエートトレーニングを行う。相撲で必要とされる柔軟性や爆発的な素早さを養うため、水泳や陸上競技もやっている。

まだ幼稚園の頃、父親が相撲大会に参加させて以来、毬太君はこうした稽古に取り組んできた。

「教えてもないけど、試合になったらいろんなことが自然にできた」とアマチュア相撲経験者の太助さんは言う。

「相撲のセンスを持っている。あっという間に優勝してしまったので、こいつはもしかしたら何か特別なものを持っているなと」

口数の少ない引っ込み思案の毬太君にとって、相撲を続ける動機はシンプルだ。

「年上の人を倒すのがうれしい」

<「こっちにすべてを賭けて」>

息子に才能があることがわかり、太助さんは一家で東京・深川への転居を決めた。相撲ゆかりの地である深川には相撲教室がたくさんあり、相撲の神を祭った野見宿禰(のみのすくね)神社もある。ここなら、熊谷家も地元の支援を十分に得られる。

父と息子は、地元の寺の建物を借り、激しい1対1の稽古をする。最後はカーペットを敷き、上になり下になりの取っ組み合いで終わることが多い。

太助さんに猛烈な突きを食らった毬太君が、息が詰まって泣き出すこともある。だが太助さんは、それが息子の才能を引き出す最善の方法だと信じている。

太助さんは「うまく自分の時間を作れていると思うし、友達と遊ぶ時間も作れていると思う」と語り、相撲の稽古が過重な負担になっているとは考えていないと言う。

稽古には費用もかかり、母親の麻紀子さんも含め、家族全員の強い支えが必要だ。

「投資のしがいのある遊び(賭け事)は全くやらないです。その代わりにこっちにすべてを賭けていて楽しみですね」と太助さんは言う。

<1日4000カロリー>

相撲の世界で成功する鍵は食生活にある。

普通の日だと、毬太君は牛乳1リットル、多量のプロテインも含め、1日2700―4000カロリーを摂取する。お気に入りはステーキだ。

相撲界の名物である「ちゃんこ鍋」を囲みながら、太助さんは、2年後に中学校に上がるまでに、あと20キロは増やす必要があると語る。

身体がさらに大きくなれば、有力な相撲部屋から声がかかることが期待できる。太助さんによれば、すでに関心を示している部屋があるという。

現在の指導者で元関取の平真一氏は、毬太君には必要なものが備わっていると考えている。今のところ大きな才能を見せている、と平氏は語る。

毬太君がめざすのは、相撲界における最高の地位である「横綱」だ。

ただし、相撲界の制度が厳しいことも承知のうえだ。

「相撲の稽古は面白いとかじゃないから」と毬太君は言う。

「練習してて、辛くなった時、ちょっと(もうやりたくないと)思ったことある」

だが当面は、父子双方にとって、頂点をめざす修行が続いていく。

(文:Jack tarrant 記者、撮影:Kim Kyung-Hoon記者、翻訳:エァクレーレン)

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