November 8, 2019 / 10:45 PM / 2 days ago

コラム:マイナス金利脱出へ動くスウェーデン、他の先進国に波及も

[ロンドン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - スウェーデン国立銀行(中央銀行、リクスバンク)は今年12月に政策金利であるレポ金利を現行のマイナス0.25%からゼロ%へと引き上げる方針だ。プラン通りであれば、リクスバンクはマイナス金利からの脱却という意味でも各国中央銀行の先陣を切ることになる。その説明を裏読みすれば、「収拾がつかなくなる前に止めておく」といったところだろう。

 11月6日、スウェーデン国立銀行は今年12月に政策金利であるレポ金利を現行のマイナス0.25%からゼロ%へと引き上げる方針だ。写真はスウェーデン・クローナ紙幣。2011年2月2日、ストックホルムで撮影(2019年 ロイター/Bob Strong)

そもそも、マイナス金利という発想は、スウェーデンが先駆者だった。リクスバンクが超過準備金に対する金利をマイナス0.25%に引き下げたのは2009年。それ以来、他の先進諸国の多くも同じ決断に踏み切った。

<マネーはとどまることなく流入>

マイナス金利からの脱却に転じようとするリクスバンクの動きは、インフレを考慮し、実質ベースの金利水準を重視する金融エコノミストらとは相いれない政策だ。彼らの考えでは、金利引き下げによる景気刺激効果は、3%から1%への引き下げでも1%からマイナス1%への引き下げでも同じである。

インフレ率が高かった1970年代の大半を通じて、実質金利はマイナスだった。彼らの考えでは、インフレ率が低い昨今では名目金利をマイナスとすることも必要かもしれないが、マイナスかプラスかという違いは本質的なものではない。

こうした議論は、長らく非現実的だと見なされていた。ドルにせよスウェーデン・クローナにせよ、融資したよりも少ない金額しか返済されないと分かっていれば、人は金を貸そうとはせず金庫にため込むだろう。それが懐疑派の主張だった。

したがって政策担当者の大半は、ゼロ金利が「下限」であると想定していた。それ以下は未知の海域であり、昔の船乗りの言葉を借りれば、そこにはどんな怪物が潜んでいても不思議はない。

だが、スウェーデンのような先駆者は、マイナス金利という海域には荒波がなく、実はとても静穏であることを明らかにした。現金をしまい込む金庫を用意するにもコストが掛かる。その結果、利回りマイナスの債券にも、マネーはとどまることなく流入した。最新のデータによれば、マイナス利回りの国債発行残高は17兆ドル。これは世界の国内総生産(GDP)の約20%に相当する。

<無謀な借り入れ招くリスク>

それにもかかわらず、スウェーデンが「プラス金利死守」という昔ながらの正統派路線に多少なりとも近づこうとする背景には、2つの理由がある。リクスバンクは10月の金融政策報告のなかで、そのうちの1つに触れている。すなわち、名目マイナス金利が相当程度に恒久的な状況だと認識されてしまえば、人々の行動が変化し、悪影響が生じる可能性がある、というものだ。

国際決済銀行(BIS)のクラウディオ・ボリオ金融経済局長が指摘しているように、無金利での融資は無謀な借り入れにつながりやすく、金融バブルに結びついてしまう。バブルが弾ければ、金融危機を招き、経済に支障が生じる。1990年代初頭にスカンジナビア諸国で不動産市場が暴落したとき、スウェーデンの商業不動産価格は3分の2も下落し、GDPは3年間で5%低下した。

この種の大惨事を防ぐには、0.25%の利上げでは十分ではあるまい。だが、国内住宅市場が過熱している国においては、そうした動きは金融機関へのシグナルになる。家計債務の上昇傾向が20年続き、家計所得の120%から180%にまで増大していることを中央銀行が懸念している、というメッセージだ。

ゼロ金利に戻す第2の理由は、現在の通貨理論に欠陥がありうるからだ。中央銀行が市中銀行に対してマイナス金利を課すことは可能だが、金融機関は一般的に、リテール顧客に対する同様の措置をためらう。利益率が圧縮されてしまうからだ。

そこで金融機関は、利益率の改善を図るなかで、たとえば住宅ローンの返済期間を延長するなど融資条件を引き下げるか、あるいは単に事業そのものを縮小する場合がある。どちらも望ましい動きではない。

プリンストン大学のマーカス・ブルネルマイヤー教授(経済学)は、「リバーサル・レート」以下に金利が低下すると、実際には事業活動が阻害されると述べている。同氏は、低金利が長く続くほど、この「リバーサル・レート」は徐々に上昇していくと考えている。過去にもっと高い金利で行われた長期融資が生み出したキャピタルゲインが、マイナス金利によって縮小していくからだ。

<特効薬ではないマイナス金利>

合わせて考えると、マイナス金利解消に向けた2つの論拠には説得力がある。そしてスウェーデンは、ゼロ金利回帰を実験するには好都合なポジションにある。リクスバンクはその知的議論のオープンさという点で定評があるだけでなく、この程度の小幅な動きであれば、クローナ高で苦しめられる懸念もほとんどない。貿易加重ベースで見れば、クローナは2013年以降、25%下落している。

マイナス金利政策が明らかに経済の追い風になっている、あるいはインフレ率を引き上げているのであれば、スウェーデンもマイナス金利脱出をもっとちゅうちょするだろう。だがマイナス金利は特効薬になっておらず、経済成長には依然として勢いが乏しい。

リクスバンクによる10月の報告書は、国内経済とグローバル経済が共に低迷し、インフレ率も低いという状況を描き出している。また、米国・英国は政策金利をプラスのまま維持しているが、それによって明らかな悪影響が出ている様子は見られない。

スウェーデンはマイナス金利を試す際にも先陣を切った。同国の最新の実験が明らかな害をもたらさないようであれば、他国もマイナス金利の世界から脱出しようという勇気を奮い起こす可能性がある。

背景となるニュース

- リクスバンクは10月23日の会合で、ベンチマークとなるレポ金利をマイナス0.25%に据え置いた。12月に0%への利上げを予定していると述べた。

- 11月5日に公表された会合議事録によれば、金利決定に関わる委員の過半数は、5年近く続くマイナス金利の実験を終了する計画を支持しているが、経済の見通しが不透明なことから、その後は慎重なアプローチを望んでいる。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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(翻訳:エァクレーレン)

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