July 24, 2018 / 2:27 AM / 3 months ago

焦点:仮想通貨先進国のスイス、銀行取引停止で事業流出か

[ニューヨーク/チューリヒ 19日 ロイター] - スイス規制当局は、仮想通貨関連の取引を行う数少ない銀行のうち2行が昨年同取引を停止したことを受け、仮想通貨プロジェクトの国外流出を防止するため対策を強化している。

 7月19日、スイス規制当局は、仮想通貨関連の取引を行う数少ない銀行のうち2行が昨年同取引を停止したことを受け、仮想通貨プロジェクトの国外流出を防止するため対策を強化している。写真はビットコイン。サラエボで昨年10月撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

2行による取引停止は、始まりにすぎないと業界筋は危惧しており、スイスが、リヒテンシュタインやジブラルタル、ケイマン諸島といった仮想通貨をもっと歓迎する海外のライバルたちにビジネスを奪われようとしていることを意味する。

スイスでは、仮想通貨関連の取引は伝統的な銀行業と比べればごく小さいものの、急成長しており、数百人の雇用を抱えていると当局者は言う。また、仮想通貨を支持する人たちは、同通貨について、世界金融の未来につながる重要なイノベーションと考えている。

例えば、裕福なツーク州は「クリプトバレー(仮想通貨の谷)」と呼ばれ、ここ数年で仮想通貨関連企業200─300社が設立されている。

もしスイス政府が銀行システムへのアクセスを許可しないのであれば、こうした仮想通貨企業は離れてしまうかもしれないと、同州の財務責任者であるハインツ・テンラー氏は指摘する。銀行システムを利用できなければ、これら企業が機能することは困難だからだ。

「銀行との取引を求めて、皆リヒテンシュタインに向かうだろう」と同氏はロイターに語った。「生み出された雇用の数は多く、どれも重要だ」

一部の仮想通貨企業から中央銀行の介入を求める声が寄せられたと、スイス国立銀行(SNB)のトーマス・モーザー代理政策委員は言う。

「銀行口座の開設に問題があることに懸念を示し、助けを求めてきた」と同委員はロイターに語った。「これはSNBが扱うことではないと私は答えた。FINMAと話すべきだ」

スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は、仮想通貨ベンチャー企業が銀行にアクセスしやすくする方法について、SNBと銀行協会と協議を行っている。

「そのようなイノベーション(仮想通貨)がもたらし得る機会への扉をわれわれは閉ざしたくはない」とモーザー氏は付け加えた。

仮想通貨を利用した資金調達手法「イニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)」を行ったり、銀行が仮想通貨企業と取引したりするための法的枠組みを提供することはそう簡単な話ではない。

詐欺のリスクや、ビットコインやイーサリアムなど仮想通貨の所有者に関する透明性の欠如といったことは、世界中の規制当局を警戒させている。米国は、仮想通貨への監視を強化している国の1つだ。

<警戒する銀行>

スイスの銀行は当局に対し、仮想通貨市場にサービスを提供する前に、同通貨プロジェクトに適用されるルールを明確にするよう求めている。

これまで少なくとも主要行2行が仮想通貨の取引から撤退した。

同国第4位で、仮想通貨の発行体を歓迎する世界でも有数の大手銀の1つであるチューリヒ州立銀行(ZKB)は昨年、20社を超える企業の口座を閉鎖したと、業界筋がロイターに明かした。

また同時期に、別のスイス大手銀行がスイスのブロックチェーン技術を基にしたスタートアップ「Smart Valor」との取引を停止したと、同事業に詳しい人物は語った。銀行名は明らかにしなかった。

スイス250行のうち、ICOで調達された仮想通貨の「入金」を現金と同じように受け入れたことがあるのは、ほんの一握りの銀行だけだった。少なくとも2行が今でも受け入れていることをロイターは確認している。

ZKBのような大手銀の関与は、スイスが仮想通貨の拠点としての地位を早い段階で築くのを後押しした。

ZKBと、「Smart Valor」に背を向けたもう1行は昨年10月、仮想通貨「テゾス」のプロジェクトが、運営者の内部対立によってひどい損害を被ったのを受け、仮想通貨関連の取引から撤退したと、起業家らは口をそろえる。同プロジェクトはツーク州最大のICOを実施していた。

 7月19日、スイス規制当局は、仮想通貨関連の取引を行う数少ない銀行のうち2行が昨年同取引を停止したことを受け、仮想通貨プロジェクトの国外流出を防止するため対策を強化している。写真はツーク市庁舎入り口に貼られたビットコインを受け入れることを示すステッカー。2016年8月撮影(2018年 ロイター/Arnd Wiegmann)

ICOを実施した一部の企業は、参加者に対してアンチマネーロンダリング(AML)のチェックを行っていないため、スイスの銀行は懸念を示していると業界筋は言う。このことはつまり、銀行自身がAMLのルールに抵触する可能性があることを意味する。

<勝ち組のリヒテンシュタイン>

「スイスの銀行の警戒姿勢により、仮想通貨空間の多くのプロジェクトが一時停止あるいは中止に追い込まれた」と、スイス・スイートブリッジ・ファンデーションの創設者デービッド・ヘンダーソン氏は話す。同財団はブロックチェーンのスタートアップ企業スイートブリッジのICOを実施するために設立された。

スイートブリッジはZKBで口座を開設する手続きがまもなく完了するところまできていたが、テゾスのスキャンダルが表面化した数日後に申請は保留にされたと同氏は語った。

スイスに設立した財団を通して予定していたICOは見送ることになり、代わりにジブラルタルとリヒテンシュタインに会社を設立し、銀行口座を開いたという。

銀行システムから締め出されている場合、仮想通貨プロジェクトがICOで調達した資金を使用することは困難だ。

ICOによる資金はビットコインやイーサリアムといった仮想通貨で調達されることが多く、より広範な経済においてその支払い能力は限られている。

「われわれのカネはそこにとどめ置かれ、動かすことができないため、給料を払うことができない」と、3行で口座が閉鎖されたスイスの仮想通貨企業の創設者は言う。

3行は同社に対し、預金を引き出すよう求めているが、まずは別の取引銀行を見つけなければそれも不可能だと、この創設者は語った。

スイスでは少なくとも2行が今でもICOで調達された資金を受け入れていることがロイターの調べで明らかとなっている。

リヒテンシュタインの「バンク・フリック」は、口座確保に苦労しているスイス企業にとって人気の取引先となっている。

同行がロイターに語ったところによると、約160の仮想通貨関連企業やプロジェクトと取引があり、そのうち60はICOを予定しているという。

<ルールと安心>

こうした課題はあるものの、スイスは銀行を安心させ、仮想通貨企業の口座を開設するよう奨励するため、新たなルールづくりに取り組んでいる。

監査法人プライスウォーターハウスクーパース(PwC)とクリプトバレー・アソシエーションが6月発表した調査によると、ICO資金調達額の国別ランキングでスイスは昨年の2位から今年は6位に転落した。同ランキングの首位を飾ったのはケイマン諸島、2位は英領バージン諸島だった。

スイスのマウラー財務相は5月、FINMAと中央銀行、スイス銀行協会(SBA)を招き、仮想通貨の銀行口座に関する協議を行った。

SBAは終了後、口座開設にあたり全銀行が確認すべき一連の項目と条件をまとめるための作業部会を立ち上げた。

「銀行は現在、詐欺やマネーロンダリングのようなリスクがあるため、ICOや仮想通貨に関連する企業の法人口座を開設することをためらっている」とSBAは声明で述べている。

スイス当局は、詐欺や金融犯罪の余地を排除しつつ、競争力を維持するための環境を整えたいとしている。

財務省もブロックチェーン技術とICOに関するより広範な法的枠組みを検討している。

その結果は年末までに連邦政府に報告され、同技術が現行の法律や規制にどうしたら当てはまるか検討されることになる。

 7月19日、スイス規制当局は、仮想通貨関連の取引を行う数少ない銀行のうち2行が昨年同取引を停止したことを受け、仮想通貨プロジェクトの国外流出を防止するため対策を強化している。ツーク市で2013年8月撮影(2018年 ロイター/Arnd Wiegmann)

(Anna Irrera記者、Brenna Hughes Neghaiwi記者 翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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