March 5, 2020 / 11:49 PM / 25 days ago

アングル:深まるシリアの人道危機、戦火絶えぬ医療現場

[イドリブ 2日 ロイター] - シリア北西部の産科病院。正面入口で、職員に急を告げる警告灯が点滅する。だが、近づいてくるのは患者ではない。軍用機だ。

アサド政権打倒をめざす反体制派の最後の拠点を制圧しようとシリア政府軍の攻勢がイドリブ県深部にまで及ぶ中、病院の医師たちは日々苦労しつつ妊婦たちの診療を行っている。2月27日、イドリブの産科病院で撮影(2020年 ロイター /Umit Bektas)

アサド政権打倒をめざす反体制派の最後の拠点を制圧しようとシリア政府軍の攻勢がイドリブ県深部にまで及ぶ中、この病院の医師たちは日々苦労しつつ妊婦たちの診療を行っている。

医療スタッフらは、過去2カ月間は流産・早産が顕著に増えたと話している。ロイターの取材に応じた1人の医師によれば、空爆の恐怖に脅えて自宅を逃げ出し、ショック状態で来院する妊婦もおり、毎日4~5人の胎児が死産になるという。

自身も妊娠8ヶ月の医師イクラムさん(37歳)は、「私にとっては、最近の状況がこれまでで一番辛い」と言う。

27日、10数人の小さな新生児が入った保育器がずらりと並ぶ小さな病室で取材に応じたイクラムさんは、最後に勤務した病院が空爆を受けたという。義父の家も空爆を受け、2人の幼い子ども(3歳と4歳)がふだん通っていた幼稚園の隣にもロケット弾が着弾したが不発に終ったという。

<内戦で数十万人が殺害>

彼女が話し終わって数分後、病院の警告灯が光った。航空機の接近を知らせるオレンジ色の光が瞬き、直撃の危険を示す赤色灯もついた。

この産科病院は被害を免れたが、シリア北西部における空爆・砲撃の激化により、9年間の内戦を通じて、単独ではシリア国内で最大となる難民が発生している。シリア内戦では数十万人のシリア国民が殺害された(ロシアとトルコ両首脳は5日、イドリブ県で6日から停戦することで合意した)。

12月以来、破壊された町村から逃れようとして住居を離れた人々の数は100万人近くに達する。その半分以上は子どもたちだ。その結果、国連によればシリア内戦で最悪の人道的危機になりかねない状況が生まれている。

戦争のトラウマを抱え、すでに戦闘に伴って何度も住む家を追われた人も多いが、彼らは今、南方・東方から進軍するシリア政府軍と防壁で閉ざされた北方のトルコ国境に囲まれた、狭くなる一方の地域に殺到している。

<多くの病院や学校にも空爆被害>

ロシアの後押しを受けるシリア政府は、ここ数カ月、イドリブ県の奪還を企てている。同県はトルコ国境に接する最北部から約100キロにわたってシリア国内に延びる地域だ。

シリア政府は、アルカイーダなど明白なテロ組織を国内から一掃するために戦っていると主張し、シリアの「国土の隅々まで」取り戻すと宣言している。トルコは、戦火を逃れた多くの難民に対応することはできないと述べつつ、シリアのアサド政権側と戦う反体制派勢力を支援している。

国連によれば、空爆の被害を受けた施設には多くの病院・学校も含まれており、2月だけでも少なくとも44人の子どもを含む130人以上の民間人が死亡している。

ここ数日、戦闘は急速に激化しており、北大西洋条約機構(NATO)加盟国でもあるトルコとロシアがシリア領内で直接衝突する危機が迫っている。先週、イドリブ県でシリア側の空爆により33人のトルコ軍兵士が死亡したことを受けて、トルコは、ロシアに支援されたシリア政府軍部隊への反撃を開始した。

トルコのエルドアン大統領は、今週ロシアのウラジミール・プーチン大統領と会談するなかで、イドリブ県での停戦が実現することを希望していると述べた。だが現地では、双方とも関与を強めている。

冒頭のイクラムさんは、安全上の懸念からフルネームを明かさないよう要望している。彼女は10年前、つまり反体制勢力の蜂起が始まった2011年の直前に医師免許を得た。他の医師が国を離れるなか、彼女はシリアに留まることを選択した。

医師が不足していたマアッラ・アル・ヌーマンの街で働き、その後、故郷のイドリブ市の病院に移った。イクラムさんは感情を昂らせた様子で、「自分にできることをしたかった」と語る。

イクラムさんが現在働いている産科病院は約5年前に開業したが、今もそこで働いている医師は彼女を含めて3人だけである。

<業務過多、医薬品不足、そして危険>

イドリブ市の中央病院では、先週、病院が面する道路にミサイルが着弾し、大きな陥没が生じた。28日、今もはっきり目につく弾痕を見下ろす部屋で取材に応じた外科医のモハンマド・アブラッシュさんは、この攻撃により医療スタッフ4人が負傷し、病室や職員用居住区画に損害が及んだと述べ、病院付近への着弾はここ数ヶ月でこれが3度目だと語る。

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アブラッシュ医師によれば、医療スタッフは人々の治療の最前線にいるが、業務過多であり、医薬品・医療用品も不足しており、補充もないという。

近隣の街サラケブ出身、58歳のアブラッシュ医師は「こうした状況下で働くのは、非常に困難だ」と言うと、腹部の傷から出血している男性の負傷者を治療するため、地下の手術室へと急いだ。

(翻訳:エァクレーレン)

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