January 10, 2013 / 11:22 AM / in 7 years

インタビュー:2%物価目標導入、政策効果のはき違えも=福田・東大教授

[東京 10日 ロイター] 東京大学大学院の福田慎一教授は、安倍政権が求める日銀の物価目標導入自体は海外事例からみてもおかしな事ではないものの、物価目標ありきの押し付けや政策効果のはき違えがあり、本来総合判断で行うべき金融政策に悪影響が出るとの見方を示した。

1月10日、東京大学大学院の福田教授は、安倍政権が求める日銀の物価目標導入自体は海外事例からみてもおかしな事ではないものの、物価目標ありきの押し付けや政策効果のはき違えがあるとの見方を示した。写真は2008年4月、日銀前で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

重要なのは実体経済への効果であり、その視点で政策を冷静に評価すべきだとした。ただ、日銀がここまで追い詰められた背景には、国民への説明不足や多様な意見への寛容性の不足など、組織的な問題もあると指摘。このままいけば財政規律が失われ、ある日突然市場が大きく混乱することになると警告した。ロイターとのインタビューで語った。

<インフレターゲット導入議論にみるはき違え>

福田教授は、中央銀行が物価目標を導入すること自体は一般的ながら、今回は強制的な導入のあり方が本来の金融政策の妨げになることを危惧するという。物価目標はかつては厳格な運用がなされていたが、最近は達成が困難であってもフレキシブルな運用が主流となっている、と指摘。

福田教授は「本来金融政策は、物価目標だけでなく他の経済情勢も勘案しながらの総合判断であるべきだ。しかし現状、日本の政治状況をみると、必ずしもそういう方向に進んでいない印象となっている」と語った。安倍首相の発言からは、物価目標ありきで、日本経済の実力の見極めや目標の実現可能性などが抜け落ちている印象がある、とした。

福田教授が危惧するのは、物価目標達成の意志を示すために日銀が中央銀行の節度を逸脱してしまうことだ。

「インフレターゲット達成のためには何でもやってよいわけではない。極端に言えば、本来の価格より高い価格で資産を買い入れてマネーを供給するような、言わばヘリコプターから金をばらまくようなことを、中央銀行としては決してやってはいけない」と指摘。ただ、最近日銀は、長期国債を実勢価格よりやや高めの価格で買い入れるなど、ヘリコプターマネーの色彩にやや染まっているとの見方を示した。

また、安倍首相や市場が、政策効果を株高や円安といった現象で判断しがちな点も問題視している。「肝心なのは、実体経済に効果が及ぶのかという点が見失われていることだ。政治も市場も、株価が上昇して円安になったことだけを見て、それが金融緩和の効果だと勘違いしている面がある。株価は投機により動く面もあり、冷静にその要因を見極めて、政策評価をすべきだ」と指摘する。

<ある日突然崩れる財政への信認>

参院選挙に向け、安倍政権も日銀も財政拡大と大幅な金融緩和を続ける公算が大きくなっているが、財政規律への信認が維持できるのか、不安視する声も少なくない。

福田教授は以前から日本の財政の持続性に警告を発していた。さらに、安倍政権の大型補正予算や日銀による財政ファイナンスの色彩が強まることが予想され、「現政権のスタンスはむしろ景気重視の傾向が強く、中央銀行のあり方や財政規律の考え方は前回より軽い位置づけになっているという印象だ」とみている。

その上で「日本の財政は、このままいけばいずれ破綻するのは明らかだ。それがいつのなのか、ということは誰にも分からないが、ある日突然長期金利が上昇するといったことになる。日本の場合は、財政が壊れると同時に金融システムも壊れることになる」と危惧する。

<日銀も自らの首を絞める結果に>

本来であれば、日銀は独立した存在であり、政府と連携しながらも自らが政策のタイミングや手段を判断できるはずだ。しかし一方的に2%という物価目標を押し付けられ、金融緩和の推進を余儀なくされているイメージとなっていることについて、福田教授は「ひとつには総裁交代時期にあたり、総裁人事に関しては権限がない上、現在は日銀法改正の議論まで持ち出されていることから、政府の方針に強く影響されやすい」点を挙げる。

他方で、日銀サイドにも問題点があると指摘する。「日銀の構造的な問題として、国民全体への説明が不足してきたため、国民の支持も得にくい情勢」となっている点は、多くのBOJウォッチャーも指摘している。また「日銀は従来から、他の官庁に比べて組織が一枚岩で、皆が同じ考え方をしている多様性に欠ける組織だ。それでは対応できないことがあり、さまざまな意見や議論を戦わせたり、受け入れる寛容さに欠ける。それが今のように、一方的に押し付けられるという事態に至ったひとつの理由とも言える」と福田教授はみている。

今後、新しい日銀総裁を迎え入れるにあたり、従来からの日銀の考え方とは異なるリフレ派の総裁が就任する可能性も否定できない。「かつて日銀とリフレ派の学者の政策議論がかみ合わず、非生産性的なものになっていたことを考えると、やや心配だ」と福田教授は懸念を示す。「日銀は非常に細かいことで議論する傾向があるのは、中央銀行の業務の性格上、仕方ない面もある。が、リフレ派の総裁がそうした事務方と考え方をどう整合性を取るのかが問われる」といった課題もありそうだ。

(ロイターニュース 中川泉;編集 山川薫)

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