July 17, 2013 / 8:13 AM / 7 years ago

インタビュー:増税延期なら市場に政権不信も=岩田日経センター理事長

[東京 17日 ロイター] - 元日銀副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長は17日、ロイターとのインタビューで、来年4月に消費税率を現行の5%から8%に引き上げる政府方針を予定通り実施しなければ、市場の政権不信を招くリスクがあると述べた。

7月17日、元日銀副総裁の岩田一政・日本経済研究センター理事長は、来年4月に消費税率を現行の5%から8%に引き上げる政府方針を予定通り実施しなければ、市場の政権不信を招くリスクがあると述べた。2011年8月撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

一方、流通業界などに、来春の実施を見送り、軽減税率が適用される2015年10月に10%への一括増税を求める声などがあることから、政府の最終判断は年末までもつれ込む可能性があると語った。

安倍首相が増税実施に慎重な言い回しをしている点について、岩田理事長は「推測だが、リフレ派の意見がかなり入っている可能性がある」とし、今後、増税延期の声が高まりかねない、との見方を示した。

一方、円安を背景に物価が上昇する局面での増税は、個人消費や企業の設備投資への下押し圧力となり、「スタグフレーション効果がある」と指摘。その打撃を和らげる策として、法人税減税や自動車重量税・取得税の廃止などを提案した。年金保険料の廃止と法人税減税を実施する代わり、消費税率を毎年1%ずつ引き上げるという措置も提案した。

日銀の2%物価目標達成には5年程度が必要で、公約となっている2年では難しいとの見方を示した。現行の金融政策は、金利予想が立てにくいため、マネタリーベース(資金供給量)の残高目標とは別に、利上げの時期の目安として失業率など目標達成を掲げるのも一案と述べた。

一問一答は以下の通り。

──政府の消費増税判断の行方をどうみる

「消費増税の際の軽減税率適用について、財務省は事務的に2014年度の8%引き上げの際は不可能で15年度の10%の時にしか間に合わないと主張している。 流通業界には増税幅が3%では価格の端数の処理が面倒なため、5%分まとめて上げて欲しいとの声が強い。参院選後にそのような意見が吹き出てくることが予想される。増税に踏み切るかどうかの判断は結局、年末まで決断が延びる可能性がある」

「首相官邸のアドバイザーでリフレ派と呼ばれている方々は、デフレ克服を優先すべきで、できれば増税は後ろ倒しがよいとみている。推測だが、安倍晋三首相の頭のなかにもリフレ派の方々の意見がかなり入っている可能性がある。(首相が)増税判断について『まだ最終的に決めていない』と慎重な言い方をされているのは、そのためではないか。4-6月のGDPの数字がよければ増税すると多くの人々はみているが、増税判断の時期はもう少し後にもつれこむとみている」

──来春の消費増税の是非について

「せっかく昨年3党合意で道筋をつけた増税を一度延期すれば、同様な合意が再び政党間でスムーズに成立する保証はなく、15年度の増税自体も少し危なくなる。景気が良いのに増税できなければ、市場参加者の間に安倍政権のガバナビリティ(管理能力)に対する不信のようなものが生ずる可能性がある。そう考えると予定通り増税するしかない」

──増税による景気への影響は

「この段階で増税すると、物価が上昇している時に実質消費や設備投資など民間需要が落ち込むというスタグフレーション効果がある。原発稼働停止によりLNG(液化天然ガス)輸入が増えているが、LNG価格は高い。(日銀による)金融緩和と(米国の)出口戦略を背景に、更に円安が進む可能性が強い。エネルギー価格と円安が組み合わさって、実質所得が日本から産油国に流出する形となり、企業の収益が圧迫され賃金もカットされてしまう。スタグフレーションが起きることになる」

──増税の打撃緩和に必要な対策は

「これまでマイナスだった消費者物価指数がゼロまで上昇したが、それは食料・エネルギー価格の上昇が主な要因。コストプッシュ型物価上昇だ。消費税が来年上がると3%分のスタグフレーション効果となり、カウンターバランス(相殺)する必要がある。そのため、法人税減税と自動車重量・取得税の廃止を提案している」

「2年前には、財政健全化と経済活性化を同時に達成するため、公的年金改革と法人税減税と消費税増税の3つの組み合わせを提案している。サラリーマンの場合、労使が折半で給与に応じて負担している年金保険料を廃止し、法人税は国・地方合わせた実効税率を約36%から約26%に下げ、財源として消費税率を毎年1%ずつ引き上げ20%とする。自ら拠出した保険料で退職後の年金給付を賄う積立方式と異なり、現行の賦課方式では年金保険料は経済学的には賃金税になる」

──日銀による金融政策をどう評価するか

「日銀の金融政策について、物価目標2%の達成は2年間では難しい。政府が中期の成長率目標の2%達成を果たすのであれば、5年程度かければ2%目標達成できる可能性がある」

「現行の日銀の金融政策は(マネタリーベースの残高目標という)量に対するフォワードガイダンス(政策指針)が厳格すぎるほど明確だ。一方、金利について指針がない。(金利について)市場参加者はマネタリーベース(資金供給量)が270兆円になれば現行の政策が終わり、金利も上げ始めるとしか予想できない。4月4日に黒田東彦総裁がイールドカーブ全体を下げたいとおっしゃったが、結果的にむしろ金利は跳ねてしまっている」

「日銀と米連邦準備理事会(FRB)は超過準備に付利を付けていることで、量の決定と金利の決定を分離している。バーナンキ議長が資産買い入れペースを減速しても金利の決定は別と述べているように、日銀も量の決定と金利の決定を分ければよい。FRB同様に失業率を金利決定の目標とすればよいのでは。物価が上昇してもスタグフレーション懸念があるためだ。失業率が3.6%まで下がっても賃金が安定的に上昇しなかった経緯があり3.5%を目安としてはどうだろうか」

竹本能文  編集 北松克朗

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