June 24, 2013 / 12:16 PM / 6 years ago

インタビュー:追加対応は中長期的な物価上昇が困難な時=日銀副総裁

[東京 24日 ロイター] - 日銀の岩田規久男副総裁は24日、ロイターとのインタビューで、追加の金融政策対応が必要となる経済・物価の下振れ判断について、予想インフレ率が長期的に低下し、安定的な物価上昇率2%の中長期的な達成が困難となるケースを指摘した。

6月24日、日銀の岩田規久男副総裁は、ロイターとのインタビューで、追加対応は2%の中長期的な物価上昇が達成困難な時を指摘した。都内で同日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

短期的な経済・物価の変動には対応しない姿勢を示しながら、上下双方向のリスクに対応する用意も手段もあると語った。米リーマン・ショックのような危機が再び発生した場合は、収束まで短期的な流動性供給を行う考えを明らかにした。岩田副総裁がメディアとのインタビューに応じるのは、今年3月20日の就任以来、初めて。

<異次元緩和で需給バランス改善すれば、緩和効果の好循環に>

岩田副総裁は、4月4日に導入した異次元緩和といわれる「量的・質的金融緩和」について、2%の物価安定目標の早期達成を日銀が強く約束していることが重要と強調し、これを大前提に長期国債の大量買い入れによってマネタリーベースを増加させていくことで「予想インフレ率が高まっていく」と説明。実質金利の低下によって、時間の経過とともに設備投資や住宅投資が増え、株高・円安を通じた資産効果や輸出の拡大などで需給バランスが改善。徐々に賃金や物価に波及し、「予想インフレ率が一段と上がり、実質金利が下がって、設備投資などを刺激するという効果を繰り返す好循環の過程に入っていく」と自信を示した。

<異次元緩和、実体経済に影響及ぼす芽が出始めている>

予想インフレ率の上昇を受け「マインドが改善する効果はすでに出ている」ほか、先行して改善している消費に続き、生産も増加していると指摘。有効求人倍率など雇用関連指標も改善している点を挙げ、「いろいろなところで緩和効果があらわれ、前向きな行動が出てきている」と語った。このように異次元緩和はすでに実体経済にも影響を与えているとしたが、現状は「実体経済に影響を及ぼす芽が出始めている段階」とし、今後さらに効果が広範に及んでいくとの認識を示した。

物価安定目標のカギを握る予想インフレ率の今後の動向では、物価連動債から試算したブレークイーブンインフレ率(BEI)は調整過程にあるが、同インフレ率からみた実質金利は「現在マイナス」と強調。「インフレ率は、民間アンケートなどで以前は下がるという見通しだったものが、上がるという予想に変わってきている」と語った。

<物価2%目標、2015年4─6月期になる計算>

その上で、2%の物価安定目標の達成について「2年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に達成することが最も重要」とし、達成に向けて「全力をあげて取り組む」と力を込めた。足元の消費者物価指数の前年比は東京都区部がプラスに転換、全国も今後1─2カ月で上昇に転じるとの見通しを示し、「物価が足元で上がり始めるとフィリップス曲線が上方にシフトし、もう少し物価が上がり、賃金も上がるとの予想が出てくる。そうなれば、2年程度で達成する可能性は高まっていく」と語った。さらに名目成長率目標を達成するために必要なマネタリーベースの伸びを推計するマッカラム・ルールなどに基づけば、2%達成は「今の緩和ペースで2年程度、2015年4─6月期になる計算だ」と試算した。

<経済・物価リスクは上下に存在、期待インフレ・実質金利を注視>

経済・物価の先行きをめぐるリスクは「下振れも上振れもある」と述べ、追加の政策対応が必要となるようなケースは中長期的な観点で判断し、「特に予想インフレ率が長期的に低下し、安定した(物価上昇率)2%に中長期的に到達しないような場合」と説明。経済・物価が「短期的に下振れることはいつでもあり得る」とも述べ、「中長期的なトラック(経路)に乗っているかどうか、それによって実質金利が下がるかどうかだ」と短期的な経済・物価の変動での追加対応に否定的な考えを示した。

<追加の政策手段は「持っている」、危機対応には流動性供給>

追加策は「政策委員会で討議して決める事だが、われわれは手段を持っている」と政策発動余力に言及。具体的には「いろいろな政策手段をその時の経済状況をみながら選択すべきで、今から何を買った方がいいということはない」としながら、「国債市場が一番大きいため、買う余地があるし、経済主体に対して中立的だ。国債を買うことが基本だ」と語った。

リーマンショックなど危機が発生した場合の対応については「短期的な流動性対策を危機が収まるまで行うことはあり得る」と言明。「危機対応はいつでも準備しており、監視・モニタリングもしている」とし、「信用秩序の維持と物価の安定は日銀の2つの目的なので、信用秩序が崩れるときは通常の金融政策とは別途に対応する」と述べた。

<市場は徐々に落ち着く、変動率上昇が長期化なら対応も>

アベノミクスに対する期待や日銀による異次元緩和の導入を受け、急ピッチで進行した株高・円安は5月下旬に調整局面を迎え、長期金利も0.8%台から低下しない状態が続いている。岩田副総裁は株高・円安の修正について「基本的には海外発の面が強い」としながら、「日銀の金融緩和もいわゆる異次元ということで、市場は消化にとまどっている。だんだん市場も理解が深まってくる。金融政策当局がブレることはあってはならない」と強調。日銀は6月の金融政策決定会合で債券市場安定化策として期待された固定金利(0.1%)オペの資金供給期間の延長を見送ったが、「国債買い入れオペでさまざまな工夫をしており、変動率も収まってきている。市場もだんだん落ち着いてくると思う」との見方を示した。

変動率の上昇が長期化する場合は「(オペの工夫や)他の政策手段も考えるかもしれない」としながら、対応は「現時点では必要ない」と指摘。株・為替・金利の市場全般について「わが国の実体経済は改善している。今後は、実体経済を反映して動いていくと思う」と語った。

岩田氏は、上智大や学習院大の教授を歴任し、今年3月20日に日銀副総裁に就任。金融政策でデフレ脱却が可能とするリフレ派の第一人者で、90年代には日銀官僚との間でマネーサプライをめぐり激しい論争を繰り広げたこともある。長くインフレ目標政策の重要性を主張し続け、従来の日銀の金融緩和策を消極的として鋭く批判してきた。日銀が4月に導入した「量的・質的金融緩和」は、長期国債の大規模な買い入れを中心に、 マネタリーベースを年間で60─70兆円増加させ、2年程度で2%の物価安定目標の達成を目指している。岩田氏が主張している理論に基づくいた大規模な量的緩和の側面を持ち、一部の専門家からは「壮大な社会実験」と指摘する声もある。

(伊藤純夫 竹本能文、木原麗花)

*内容を追加して再送します。

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