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日本の未来図:地方をシリコンバレーに、世界の拠点を=滝波氏

[東京 2日 ロイター] - 自民党の滝波宏文参議院議員は、米国の「シリコンバレー」のように世界経済と直結した地方の拠点作りこそ地方創生のカギを握るとの認識を示した。実現にはインフラ整備も重要だが、経営者側の発想の転換が不可欠とした。

台頭する中国との向き合い方では「大中華圏」で親日家が作れるかが重要と語った。

──30年後を展望し、何を変えるべきか。

「人口減少問題をどう解決していくかが、今後50年を見越した時に大きな課題だ。2040年までに市町村の半分が消滅危機に陥るとした増田リポートでも地方創生と女性活躍がカギを握ると示された」

「自然体に任せるのではなく、政府が意思を持って取り組み、地方に人が動かなければ国自体がもたない。安倍政権がいま取り組んでいる地方創生と女性活躍、この2本柱で人口減少問題に答を出していかなければならない。地方創生では、『シリコンバレーを日本の地方で作らなければならない』と主張してきた」

──狙いは。

「(官僚時代に)スタンフォード大学に客員研究員として行かせてもらったが、同大のあるシリコンバレーという地域は都会ではない。グーグルやアップル、ヤフーやインテルにしても、人口10万人前後の街に本社がある。公共交通機関はなく車でなければ移動できない。豊かな自然のなかに世界に冠たるIT産業の集積地が出来ている。つまり、あの地域のポイントは、米国の大都市を経由しなければ海外につながらないということではなく、田舎の地方が世界経済につながっているということだ」

「リーマンショック前の米国は『東の金融と西のシリコンバレー』でもっていた。リーマンショックで東の金融が倒れても、シリコンバレーというもうひとつの軸があったためにV字回復した」

「日本も東日本大震災を経験し、南海トラフ地震に備え、国土にいろいろな軸を持っておくべきだ。しかしそれは、太平洋ベルト地帯以外の都市が大都会になって人口が増えることがポイントではなく、シリコンバレーのように田舎のままでいい。地方を支える中堅企業が世界経済と直結して仕事ができることがポイントだ。世界経済に直結する自立した地方を作っていくことだ」

──政府の役割は何か。

「政府の役割は、インフラを整備し地方の潜在力に火をつけることだ。子育て環境としても良い場所になる。世界経済ともつながり大きな仕事もできるという雇用が確保されれば、地方が生き延びる要素がある。この実現が人口減少の答えになる」

「日本は大企業病みたいなところがあって、大きな会社に入れば安泰、小さな会社では二流・三流とみられるところがある。しかし、経済も変わり陳腐化していくなかで、新しい時代に沿う産業を作っていかなければならない。都会の大企業が創業イノベーションについていけないのであれば、地方の企業が可能性を模索すべきだ。地元・福井の鯖江市はメガネの産地でそれぞれが独立した中小企業だが、技術を転用して医療関係に進出している企業もある」

「政府だけの開発による地方創生ではなく、地方に眠る様々な技術や、日本が今でも強いであろうBtoB(企業間取引)を世界につないでいくことによる地方創生が、目指す道だろう」

「もうひとつ重要なのが企業経営者のマインド設定を変えていくこと。日本の技術は注目されており、日本の伝統工芸に対する海外の関心は高い。現代生活に転用できる部分がないか、素材的に使えるものがないか。風呂敷のように、それ自体が着目されることもある。世界市場視点で技術を発掘し地方の雇用を生むマーケットを作っていくこと。そのなかでイノベーションが起きていく」

──台頭する中国との向き合い方について。

「注意すべきは、中国は中華人民共和国だけではないということ。台湾も、シンガポールも、香港もある。米国やカナダに移住した中華圏の人もいる。今後50年を展望した時、大中華圏と日本がどう向き合うかは非常に大事だ」

「私の経験から、中華系の人の政府に対する意識は日本人と全く違う。日本人は『お上』といって政府に対して潜在的な信頼感がある。他方、中華系の人が信じるのは政府ではなく、親戚や友人だ。大中華圏のなかでどれだけ親日的な人を作っていけるかが、日本の今後の生き残りのカギになる」

──量的・質的金融緩和(QQE)の評価は。黒田総裁以前の手法は限界だったか。

「黒田バズーカは正しかった。他の国が物価2%を目標に金融緩和を行っている時に、日本が1%を目標に控え目に穏当な言い方をすれば、金融的にはその差1%分、間違いなく抜ける。目標を合わせたことは正解だった。なぜ失われた20年となったか。金融政策の誤りの部分は間違いなくあった。それを安倍政権・黒田日銀が『気迫こめて金融緩和をやる』ことで成長をもたらしたのは間違いない」

吉川裕子:編集 佐々木美和

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