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コラム:世界経済は低体温症、米国債が「最後の楽園」に
2016年2月19日 / 07:42 / 2年前

コラム:世界経済は低体温症、米国債が「最後の楽園」に

[東京 19日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が利上げのサイクルに入ったのに、米長期金利が低水準で推移しているのはなぜか──。世界経済が加速せず「低体温症」に陥っていて、安全で比較的高い利回りを維持している米長期国債に資金が流入しているためだと考える。マイナス金利に直面した日本の投資家の目も米国債に注がれているが、そこにはドル調達コストの上昇というハードルが待ち構えている。

 2月19日、米連邦準備理事会(FRB)が利上げのサイクルに入ったのに、米長期金利が低水準で推移しているのはなぜか──。世界経済が加速せず「低体温症」に陥っていて、安全で比較的高い利回りを維持している米長期国債に資金が流入しているためだと考える。ワシントンのFRBビルで2014年10月撮影(2016年 ロイター/Gary Cameron)

<高まる世界経済減速の気配>

昨年12月にゼロ金利を解除し、利上げのプロセスに入ったFRBだが、その後の経済、市場環境は想定通りに行っていない。特に長期金利US10YT=RRの動向が過去の利上げプロセスと異なっている。

今年1月下旬から2%を明確に下回り出し、2月11日に一時、1.5%台に下がってしまった。

今年に入ってからの世界的なリスクオフ心理の強まりを指摘する声が、市場では圧倒的に多い。そのリスクオフの原因をたどっていくと、「中国経済の先行き不安」「原油下落」「地政学的リスク」「欧州銀行株の急落」「米景気後退リスク」など複数のテーマが出てくる。

その結果、不透明な中ではっきしてきたことがある。2016年の世界経済は「減速感が強まる」ということだ。

経済協力開発機構(OECD)は18日、2016年の世界成長見通しを3.3%から3.0%に引き下げ、17年も3.6%から3.3%に修正した。国際通貨基金(IMF)も1月19日、16年の世界成長率見通しを3.6%から3.4%、17年も3.8%から3.6%にそれぞれ引き下げた。

<10年米国債は最後の楽園>

世界経済の減速感が強まれば、ビジネスの収益率も低下する。それを先取りするように今年1月から世界的に株式市場が下落局面となり、米、独、日などの国債が買われた。米、独、日とも長期金利は低下傾向を鮮明にしているが、マイナスにいったん「水没」した日本やゼロに接近中の独と比べ、米長期金利は下がったとは言っても1.5%台は維持している。

ある国内銀行関係者は「主要国の運用者から見ると、安全で流動性があり、相対的に高い利回りを維持している10年米国債は、最後の楽園的存在」と話す。

言い換えれば、一定程度の利回りを確保しつつ、中程度以下のリスクにとどまっている運用先が激減しているということだ。さらに俯瞰して見れば、かつてのように収益性の高いビジネスが多く存在していたというのは過去になり、世界中を見回しても、高い収益を確保できるビジネスが急速に姿を消しているということではないか。

この現象を私は「世界経済の低体温症」と呼んでみたい。利上げ局面における米長期金利の異例な低水準は、世界経済の活力低下の象徴と言えるのではないか。

<原油下落の背景にある構図>

実際、日銀が1月29日にマイナス金利を決定したのも、強力に物価を押し上げる「効果」を期待してのことだと思われる。同時に強力な押し上げ効果を加える必要があるほど、かなり強い押し下げの力も働いていると見るのが自然だろう。

その強い下押し圧力の象徴が「原油下落」であり、背後にあるのは、一部の新興国を震源地にした需要の減少だ。原材料の爆買いが急にしぼみ、コモディティ価格が急落すると、予想を超えて米株市場の下落を招いた。

「世界経済の低体温症」は、金融政策における緩和強化だけでは、対応が難しいという声が、米欧の有識者から出始めている。26、27日の上海における20カ国(G20)財務相・中銀総裁会議でも、一部の国からは財政面でのテコ入れの必要性を主張する動きが出てきそうだ。

ただ、即効性のある対応策がなかなか見つからない事態を、現実の姿として直視するべき状況になっているのではないか。

とすれば、財政・金融の追加パッケージという「解熱剤」に頼るだけでなく、イノベーションを促す企業や個人、大学などの動きをサポートする対応を打ち出し、10年先を見つめた長期ビジョンを打ち出すことも必要だろう。

<立ちすくむ日本勢>

とは言え、マイナス金利政策に直面した銀行やその他の経済主体は、少しでも高い利回りを求めて、これまで以上の努力を強いられる。そこで米国債が「最後の楽園」に見えてくると思うが、日本勢にはやっかいな問題が持ち上がっている。ドル調達コストの上昇だ。

ドル調達コストは、今月15日に3カ月物で115bpに上昇。一時、5年米国債US5YT=RR利回りを上回り逆ザヤに陥った。

「最後の楽園」に入る切符は、日本勢にとって相当に割高になっているのだ。

「G20後に急激な円高と株安が発生しませんように」──。多くの日本の市場関係者が祈るような心境になっているのではないか。

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