July 1, 2019 / 4:16 AM / 15 days ago

焦点:短観で鮮明な企業の様子見、需給に緩み 為替次第で下振れも

[東京 1日 ロイター] - 米中貿易協議の決裂が回避され、市場や企業関係者には「安堵感」が広がっているものの、1日に公表された全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では、先行きの不透明感を背景に企業の「様子見」姿勢が鮮明となっている。また、国内外での需給の緩みが示されたほか、為替円高への警戒感も根強く、企業収益やマインドの下振れ懸念は依然として残っている。

 7月1日、米中貿易協議の決裂が回避され、市場や企業関係者には「安堵感」が広がっているものの、全国企業短期経済観測調査(日銀短観)では、先行きの不透明感を背景に企業の「様子見」姿勢が鮮明となっている。写真は都内で2016年3月撮影(2019年 ロイター/Yuya Shino)

6月日銀短観では、製造業の業況判断DIが前回調査から5ポイント悪化し、市場の事前予想を超える変化となった。一方で、非製造業は2期ぶりに改善。弱い製造業・堅調な非製造業という構図が続いていることが確認された。

第一生命経済研究所・経済調査部主席エコノミストの新家義貴氏は「この短観をもって、日銀は景気判断や経済について、シナリオを変える必要性を感じていないだろう」と述べている。

製造業DIのプラス7は、16年9月調査以来の低水準。製造業の中でも素材業種は1ポイント改善しており、悪化は金属製品や生産用機械、電気機械などの加工業種が中心。「米中貿易摩擦や中国経済減速の影響、IT関連向け需要の減少などを指摘する声が幅広く聞かれた」(日銀幹部)という。

中国の需要と密接に関連する電気機械は、前回調査のプラス9からプラス2へと一段と悪化。生産用機械は同プラス31からプラス17へ、自動車は同プラス15からプラス5へと悪化した。

ただ、軟化が続く企業マインドに対して、設備投資計画はしっかりしている。大企業・全産業の2019年度の設備投資計画は、民間調査機関の予測の前年比8.9%増を下回ったものの、同7.4%増となり、過去平均を上回って推移している。

大和証券・チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「マインドの弱まりに比べ、設備投資の強さは維持されていることが裏付けられた。緩やかな景気回復の持続は、まだ可能」との見方を示している。

ただ、3月調査時点と比べて設備投資額は0.1%下方修正されたに過ぎない。米中貿易摩擦に対する懸念が高まったのは5月上旬。短観の回収基準日は6月11日だが、企業は計画を大きく修正するには至らず、現行計画をほぼ維持して様子を見ている可能性もある。

<霧は晴れず>

若田部昌澄副総裁は6月27日、「最近、景気のメインシナリオを巡る下振れリスクには一段の注意が必要になっている」と、景気に対して慎重な見方を示した。

なかでも、米中貿易摩擦の長期化は、企業の投資マインドの悪化や金融市場のセンチメントの慎重化という経路を通じて、世界経済への下押し圧力が強まる可能性がある、と指摘していた。

米中通商協議は継続されることになったが、リスクがなくなり、霧が晴れたわけではない。まさに「長期化の様相」だ。

金融緩和を織り込みつつある欧米市場の動向に象徴されるように、世界経済の不確実性が、強く意識されている。日銀の政策について、第一生命経済研究所の新家氏は「この短観が引き金で追加緩和ということにはならないが、緩和の可能性が完全になくなったわけではない。そこは為替次第だろう」としている。

大企業・全産業19年度の想定為替レートは、1ドル=109.35円で足元の108円前半と比べて円安水準になっている。米中摩擦の行方や米金融政策次第では、円高圧力が強まるとの警戒感は強い。

大企業・全産業の19年度経常利益計画は4.6%減。今後、上方修正が見込まれ、最終的には「3%増程度の着地」(SMBC日興証券)になるとみられている。

この先に円高が進み、1ドル=105円となった場合、経常利益は前年比1.1%増程度、1ドル=100円の場合は同1.2%程度の減益となる、とSMBC日興証券は試算している。

また、米中摩擦を初めとして世界経済の不透明な状況が長引けば、実体経済にも徐々に悪影響が及んでくる。

需給判断をみると、大企業・製造業の海外での製商品需給判断(需要超過─供給超過)はマイナス7となり、前回調査のマイナス5から供給超過幅が拡大。大企業・製造業は国内需給もマイナス8と供給超過幅が拡大しており、米中貿易摩擦への懸念など海外要因を受けて「製造業を中心に需給は、若干緩んでいる」(日銀幹部)という。

需給ギャップ動向の参考となる生産・営業用設備判断(過剰─不足)も、全規模・全産業でマイナス3と3年ぶりに需給が緩む動きとなった。

みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「需給はじわりと緩んできている。内外でいくつものリスク要因が意識される中で、19年度の売上・収益が現行計画対比で下振れてしまう懸念は根強い」と指摘している。

清水律子 編集:田巻一彦

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