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アングル:「早期緩和縮小」を確信する市場、中銀にも耳貸さず

[ロンドン 24日 ロイター] - 世界中の主要中央銀行は、近いうちに金融緩和を縮小する計画などないと口をそろえている。利上げなど言うまでもないという姿勢だ。ところが市場はそれを真に受けていないようだ。

 2月24日、世界中の主要中央銀行は、近いうちに金融緩和を縮小する計画などないと口をそろえている。ニューヨークで2020年3月撮影(2021年 ロイター/Eduardo Munoz)

米10年国債利回りは24日、一時1.4%を突破。年初来の上昇幅は50ベーシスポイント(bp)に迫り、欧州や日本をはじめ各地の国債利回りを押し上げている。

市場の読みはこうだ。バイデン米政権による財政支出拡大と新型コロナウイルスワクチン普及後の経済活動の本格再開が世界の成長率と物価上昇率を再び上向かせ、中銀は予定より早く緩和縮小(テーパリング)に動かざるを得なくなるというのだ。

確かに経済見通しの改善は利回り上昇を正当化するだろう。ただ市場を動揺させ始めているのは、名目利回りから物価上昇率を差し引いたいわゆる実質利回りが突然跳ね上がっていることだ。実質利回り上昇は金融環境を引き締め、株式から資金を吸い上げるとともに、一般的には景気回復の妨げになってもおかしくない。

これには政策担当者も内心穏やかでいられず、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長からニュージーランド準備銀行のオア総裁まで、数多くの当局者が今週、緩和政策をしばらく維持すると改めて強調している。

それでも何年も前から中銀が唱えてきた緩和継続のメッセージはもはや、市場に耳を傾けてもらえないように見受けられる。中銀トップとして世界で最も影響力があるパウエル氏でさえ、物価目標実現までまだ3年以上かかると発言した後で利回りの低下幅は数bpにとどまった。ユーロ圏でも、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が22日、最近の利回り上昇を「注視している」と述べても、利回りの動きがこれを聞き入れた形になったのは短時間にすぎなかった。

INGバンクによると、その理由は市場が超緩和政策の幕切れを「確信の度合いを高めながら」織り込んでいるからだという。

同行は「米景気回復の盤石さに対する市場の自信は非常に強く幅広いので、いわば、テーパリングを織り込む船はもう港を出た」と説明し、テーパリングがFRBの調査で示された来年初めより早く、今年末までに開始されると予想。「そのうち市場のコンセンサスがわれわれの見解に一致してくるだろう」とも述べた。

短期金融市場は、投資家がFRBの利上げ時期を来年と想定していることを示している。ユーロドル先物の場合、来年末までに25bpの利上げが実施される確率をおよそ64%と見込んでおり、1週間前の52%から切り上がった。

今後数カ月のうちに旅行や外食、買い物が全面的に復活すれば、世界中に待機する数兆ドル規模の貯蓄が一気に消費に回ってもおかしくない。米国だけで考えても、昨年12月の個人貯蓄額は季節調整済み年率で2兆3800億ドルと、パンデミック前のどの時期よりも高水準だった。

インサイト・インベストメントの債券投資責任者エイプリル・ラルッセ氏は、こうした状況が経済にとって重要な分岐点を形成し、どんなに強力なフォワードガイダンスも通用しなくなる恐れがあると指摘した。

ラルッセ氏は「市場は『ちょっと待って。あなた方は先走りしすぎていますよ』という中銀の声を耳にしているが、新しいデータが出現するとともに中銀が考え方を変えてしまうのはないかと懸念している。市場の答えは『もちろんわれわれはあなたの言うことを信じています。でも状況は変わり得るし、その状況次第で政策変更が必要になるでしょう』ということだ」と述べた。

<リスク方向が転換>

これは米国だけの現象ではない。ニュージーランドでは中銀のオア総裁が、データによって経済の明るい光景が描かれているものの、実際には下振れリスクがあると、ことさらに念を押した。しかし、債券利回りはこれを無視する形で11カ月ぶりの高水準に達した。

より重大なのは、市場の金利見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)が今年末のニュージーランドの利上げについて、小さな可能性としてではあるものの、織り込みを始めた点にある。少し前まで、政策金利がマイナスになる事態が想定されていたのが信じられないほどだ。

BNYメロンは、金利スワップの一種で固定金利と物価連動型変動金利を交換する取引で、予想物価の指標とされるインフレーションスワップ取引の1年物がカナダからオーストラリアまで各地で上昇していると解説し、「リスクは緩和巻き戻しを見越す方向に傾いている」と主張した。

成長率が持ち直す中で超緩和政策を続けると約束すれば、インフレ期待をさらに高めるだけになりかねない。だとすれば市場が中銀に、単なる口先介入でなく実際の行動を「強制」することはできるのだろうか。

主要中銀を比較すると、FRBよりも他の中銀の方がジレンマは大きい。例えば日本は10年国債利回りが足元で0.12%と18年終盤以来の水準まで上昇し、長期金利を0%付近に誘導するという日銀の方針の信頼性が問われつつある。

既に成長率と物価の押し上げに苦戦しているECBの場合も、利回り上昇に対応して今後、緊急購入プログラムの下で債券買い入れ拡大を迫られるのではないか。

モルガン・スタンレーの欧州経済責任者ジェイコブ・ネル氏は「現段階では市場と中銀の間に存在するのは対立でなく緊張だ。しかし、この先には対立がやってきかねない」と話す。だからFRBの姿勢は「市場がわれわれの想定より強い成長を見込むなら、それでいい。結果的にこれが成長とインフレの期待押し上げに貢献してくれるだろう。市場とはけんかはしない。ただ彼らを(全面的には)信じないだけだ」といったところだと読んでいる。

(Sujata Rao記者、Dhara Ranasinghe記者)

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