November 5, 2014 / 4:27 AM / 5 years ago

焦点:財務省にもサプライズ緩和、増税判断で安倍首相にフリーハンド

[東京 5日 ロイター] - 日銀が電撃的に決定した10月31日の追加緩和。マーケットはグローバルに反応し、ドル/円JPY=EBSは115円をうかがう円安基調となった。市場のサプライズと同じように[寝耳に水」だったのが、実は財務省だった。

 10月31日に日銀が電撃的に決定した追加緩和。マーケットはグローバルに反応したが、市場のサプライズと同じように[寝耳に水」だったのが、実は財務省だった。写真は2011年8月撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

それほど日銀が隠密裏に政策変更した大きな要因は、やはり想定より鈍くなった物価上昇率。機敏な対応は株高/円安を演出し、結果として安倍晋三首相が増税先送りを判断しやすい環境も作った。

<財務省にあった増税後の緩和シナリオ>

「まったく聞いていない。本来は首相の増税決断後でなかったのか」──。財務省関係者は絶句する。

財務省としては、安倍首相が再増税へのスタンスを明確にしていない中で、日銀の追加緩和は首相に再増税を決断させる貴重なカード。まさか増税決断前に日銀がそのカードを切るとは想定していなかった、というのが財務省の本音のようだ。

もともと財務省内には、日銀の量的・質的緩和(QQE)は円高是正としての所期の目的は果たしてきたが、ここにきて輸出が伸び悩み、実体経済を大きく押し上げる効果は限定的との見方があった。

仮に日銀が追加緩和に踏み切るにしても「現行政策の延長で十分」(幹部)との穏健な意見も、事前の同省内には根強くあった。

<短期間に決断、原油下落の影響重視>

この日銀の隠密行動の裏には、何があったのか。複数の日銀関係者によると、黒田総裁らごく限られた幹部が、政策変更に対応するためあわただしく動き出したのは、決定会合の数日前だったという。

情報漏えいを防ぐため、金融政策を担当する企画局の中でもごく一部の幹部のみが、事務的な準備を進めていたもようだ。

ただ、今回の追加緩和決断の少し前から、日銀内ではある見方が浮上していた。ごく一部の幹部らの間では、夏以降に消費が低迷し、原油価格の急落など加わって、物価上昇率が鈍くなっていたことを警戒する声が出ていた。

特に原油価格の下落幅が想定よりも大きくなってきたことで、日銀のシナリオに狂いが生じかねない展開になりつつあった。

当初、原油価格の下落は、実質所得の増加などを通じて中長期的に日本経済に恩恵をもたらすとの楽観論が日銀内で支配的だった。

だが、原油急落のペースが速く、足元の物価上昇率を押し下げる「効果」が予想よりも大きくなった場合、日銀が重視する期待インフレ率の低下につながり、それが実際の物価を押し下げるケースも出てくる。

デフレに逆戻りする「逆回転」への懸念が、一部の幹部らの間で急速に高まっていた。その意味で日銀の強いコミットメントと強力な金融緩和で期待の転換を実現するQQEは、まさに「正念場」を迎えていた。

<市場の地合いも勘案か>

また、事前に集計された政策委員の2015年度の物価見通しが、これまでの1.9%からかなり下方にシフトしているとの事実も判明した。

さらに黒田総裁ら幹部が注目したのは、マーケットの関心が足元で日米の金融政策の違いに再び集まり出していることだった。政策変更のタイミングとして、市場モメンタムの後押しにも絶好という判断が働いたもようだ。

一方で、政策変更に関する短期間での対応の結果、政策委員会のメンバーが黒田総裁ら幹部の決断をどのように評価し、票決に臨むのか、不透明な部分もあったようだ。

実際、与党内でも一段の円安に対して懸念が噴出するなかで、追加緩和には、異論が出ることが想像された。

ロイターの取材では、追加緩和の副作用の大きさなどに懸念を持った審議委員もおり、一部の審議委員は賛否を慎重に判断したという。

票決の結果は、5対4という薄氷の議決となった。

<首相周辺にアベノミクス・新3本の矢の声>

「ハロウィン緩和」は、世界の市場からは2発目のバズーカと映り、ダウ.DJIは1万7000ドルを回復し、日経平均.N225もいったん1万7000円台を回復。ドル/円は一時、114円台を付けた。「先手」を打った黒田総裁の決断は、今回も市場を動かしたかたちだ。

この動向を最も歓迎したのは、安倍晋三首相と菅義偉官房長官の官邸コンビではないか。消費増税の先送りを決断した場合、市場の「日本売り」が最も警戒されていた。しかし、今回の市場動向は、そうした懸念を吹き飛ばした。

首相の経済ブレーンで内閣官房参与の本田悦朗・静岡県立大学教授はロイターの取材に対し、追加緩和による株高で「首相がよりニュートラルに(消費再増税の是非を)決断できるようになった」と高く評価した。

そのうえで、今後のマクロ経済対策に関し「アベノミクス強靭化の3本の矢が必要。1本目が追加緩和、2本目は経済対策による低所得者対策、3本目が来年の消費再増税の延期」と指摘した。

他方、日銀短観の結果や雇用・所得環境の好転を強調し、物価は2%に向けて上がっていくと説明してきた強気の黒田総裁の直前までの発言は、今回の追加緩和の決定とどう連続性があったのか、という疑問が、市場関係者の一部から出ている。

黒田総裁の思惑通りに、再び物価が2%に向けて上がっていくのか。足元でバズーカ砲の威力を再認識している世界のマーケットは、いずれ日本経済の足取りと物価上昇テンポに視線を集めてくるとみられる。

もし、物価上昇に力強さが出てこなければ、その時は今回よりも早く追加緩和観測が台頭しているかもしれない。

竹本能文、伊藤純夫 編集:田巻一彦

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