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アングル:AIアートが本格化、芸術家は「デジタル窃盗」を懸念

[エディンバラ 7日 トムソンロイター財団] - 原色がぶつかり合い、ゆがんだピエロの顔が連なるその絵は、一見すると画家の作品のようだ。油彩らしい筆のタッチと、薄汚れた感じの背景部分がその証しに見える。

 原色がぶつかり合い、ゆがんだピエロの顔が連なるその絵は、一見すると画家の作品のようだ。だが、スコットランドのアーティスト兼映画監督、ペリー・ジョンソンさん(31)がタブレット端末で見せてくれたその絵は、実は彼が人工知能(AI)を使って創造したものだ。同氏提供(2022年 トムソンロイター財団/Perry Jonsson & AI)

しかしスコットランドのアーティスト兼映画監督、ペリー・ジョンソンさん(31)がタブレット端末で見せてくれたその絵は、実は彼が人工知能(AI)を使って創造したものだ。文字入力された指示に従い、アルゴリズムがデータを分析して何千種類もの絵を創り出した後、彼のお気に入りの何枚かを選んだ上で仕上げを行った。

「ちょっと不気味な感じもする」ものの、「人間らしさが現れているところが気に入っている。こんな風に、実在する芸術家が描きそうな絵を求めていた」とジョンソンさん。自分で絵を描く才能は無いが、AIがあれば自分の創造性を広げることができると語る。

クリエイティブの世界では今、ジョンソンさんのようにAIの利用を試す人が増えている。近年はAIが生成した画像が、デジタルアートのコンペで優勝したり、高額で落札される事例もある。

しかし機械を使った芸術創作を巡っては、倫理面および法律面での懸念も高まってきた。

ジョンソンさんは著作権のある作品の利用に関しては「公明正大」であろうと努めている。しかし、自分の作品を創作するためにAIが利用するデータに、著作権のある作品が含まれていないことを確認するのは難しいと認める。

画像生成AIの中には、既存の画像を検索し、著作権で保護された作品のスタイルをまねて新たな作品を生み出すものもあり、「デジタル窃盗」に当たるのではないか、との不安がアーティストの間で生じている。

例えば米国と欧州連合(EU)の著作権法では、AI生成の芸術作品が明示的にカバーされていない。

雑誌の表紙やポスター、ロゴなどの製作にAIを利用する動きは広がっており、AIが最終的にアーティストの職を奪うのではないかとの疑問も持ち上がっている。

受賞歴のある3Dグラフィックス・アーティスト兼映画監督のデービッド・オライリーさんは「AIに貢献する人は皆、自分自身のオートメーション化を加速させているのだ」と警鐘を鳴らした。

<人間の著作者不在>

米テクノロジー企業、イマジネーション・エンジンズのスティーブン・ターラー最高経営責任者(CEO)は、AIを使って創作した絵の著作権を申請したが、ことし2月に米著作権審査委員会に却下された。「人間の著作者がいない」というのがその理由だった。

アムステルダム大学の著作権法教授、ベルント・フーゲンホルツ氏は、今後の訴訟では人間が創作的な選択を行ったかどうかが判断基準になりそうだが、これは「非常に抽象的な基準だ」と言う。

人がボタンを何回か押しただけ、あるいは「サルが変な帽子をかぶった絵を創って」など大まかな文字の指示を出しただけなら、創作活動ではなく、EUの著作権法では著作者と見なされない可能性があるとフーゲンホルツ氏は説明する。しかし、非常に具体的な指示を出し、多くの画像を生成してその中から1つを選び、さらに手を加えた場合には正当な著作者になり得るという。

<著作権の侵害>

原作を基に新たな作品を創作した場合、著作権が認められるためには、その作品が十分なオリジナリティを備えている必要がある。

米オープンAIが運営する人気画像生成プログラム、「DALL―E」は、この点で最近批判を浴びた。

こうしたプログラムは膨大なデータについての機械学習を訓練されており、人間のアーティストが過去に創作した数百万種類の画像を取り込んで洗練された作品を生み出す。

AI企業が、著作権付きの画像を使用したことを正直に申告しないのではないか、あるいはそもそも使用したことに気付かないのではないかと、疑問を呈するアーティストもいる。

オープンAIが7月、DALL―Eの利用者に対して生成作品の商業使用を認め、有料サブスクリプション・サービスに進出すると、オライリー氏はこれは「詐欺行為」だとインスタグラムに投稿。オープンAIは「人間による大量の創作活動」に乗じて利益を得ていると批判した。

しかし同社は、DALL―Eが利用する数億種類の画像データはライセンスを取っているか、もしくはフリー素材だと説明。自社で製作した画像について著作権を得られるはずだとも主張した。広報担当者は「過去に存在したことのない唯一無二でオリジナルの画像」を創っていると述べた。

これに対してオライリー氏は、IT企業は著作権法の不透明さに乗じているだけだと指摘。アーティストが自身の作品からきちんと利益を得られるようにするためには、アルゴリズムの改善に使われたデータを公に監査するとともに、アーティストに作品を提供するかどうかの選択権を与えるべきだと主張した。

先週米国で開催された「コロラド州見本市」では、アーティストのジェイソン・アレンさんが出品したAI生成作品が優勝し、物議を醸した。

何人かのアーティストはソーシャルメディアで怒りを表明し、自身の生計が脅かされると不安を訴えた人もいた。

冒頭に登場したジョンソンさんは、ビデオの絵コンテ描きなどはいずれ自動化されると予想。「単に時間の問題だ」と語った。

(Joanna Gill記者)

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