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コラム

コラム:割高でも手放せない米超大型ハイテク株

[オーランド(米フロリダ州) 11日 ロイター] - 今年の米株式市場の上昇は銘柄による偏りが大きい。ほんのひと握りがS&P総合500種指数全体をけん引しており、こうした銘柄は今のところ他の95%よりも著しく割高になっている。

5月11日、今年の米株式市場の上昇は銘柄による偏りが大きい。ニューヨーク証券取引所で2013年10月撮影(2023年 ロイター/Carlo Allegri)

投資家にとって重要なのは、このバリュエーションのギャップが埋まり始め、それが今年前半と同様に後半も市場の方向性に影響を与えるかどうかだ。

アナリストによると、このギャップは極めて大きいが、様子見姿勢をやめて新たな投資に動かない限り、バリュエーションと市場動向の短期的な相関は小さい。向こう1年間の市場動向はポジション取りや金利の動きなど他の要因に左右される可能性が高い。

しかしこうしたバリュエーションギャップに関する数字には無視できないほど驚くべきものもある。

アップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コム、エヌビディアのS&P500種時価総額上位4銘柄は、34兆4000億ドルという市場全体の約19%を占める。

これら4銘柄は年初来の上昇率が45%余りに達しているが、他の496銘柄は2%程度にすぎず、指数全体では8%弱にとどまっている。

リフィニティブのアナリスト、タジンダー・ディロン氏によると、12カ月先予想の株価収益率(PER)の合計は上位4銘柄が31.6倍であるのに対し、他の496銘柄は16.4倍、指数全体は17.9倍となっている。

またトゥルーイストのキース・ラーナー共同最高投資責任者の計算に基づけば、上位4銘柄は12カ月予想の平均PERが約42.0倍で10年平均の49.6倍を下回っている。しかしこれはアマゾンが足を引っ張ったためで、他の3銘柄はいずれも以前より割高だ。

ラーナー氏の話では、他の496銘柄の12カ月予想平均PERは約20.8倍だが、倍率が極端な銘柄を上下で除くと16.3倍まで下がる。

いずれにせよ「メガ(超大型)ハイテク株」は他の銘柄と比べて極めて割高で、年初から実質的に横ばいで推移している割安な銘柄は大型ハイテク株からバトンを受け取る準備が整っているはずだ。

米連邦準備理事会(FRB)が経済の「ソフトランディング」を成し遂げることができれば、それが実現するかもしれない。

とはいえ、失業率は50年ぶりの低水準で、インフレ率が2年ぶりの水準まで下がったことでソフトランディング論は勢いを増しているが、それでもなお警戒感は冒険心を上回っている。

ラーナー氏は「水面下で非常な割高からより妥当なバリュエーションに向けた変化が起きている様子が見受けられる。しかし平均以上のマクロリスクに照らすと、まだ十分な説得力を持っていないのではないか」と話す。

<取引の集中>

米国の債務上限問題、米地銀セクターの混乱、信用状況の悪化、わずか1年強での500ベーシスポイント(bp)の利上げによる経済活動への打撃など、こうしたリスクは現実に存在し、しかも拡大している。

JPモルガンのアナリストは、発行済み株式総数に占めるハイテク企業株の空売り比率は米国株セクターの中で最も低く、ファンドはこの数週間にハイテク株を買い越していると指摘した。

中央銀行から確定拠出年金401k口座を持つ個人投資家まで、誰もが超大型ハイテク株に投資したがっている。安全性、流動性、金利やバリュエーション、人工知能への投資、ESG(環境・社会・企業統治)への関心など、理由は枚挙にいとまがない。アップルは4.15%という高い預金金利をひっさげて銀行業にも進出した。

株式市場の構造に目を向けると、実に上部ばかりが肥大化している。バンク・オブ・アメリカは過去10年間の月次グローバルファンドマネージャー調査で最も集中している取引として「米国ハイテク株の買い持ち」を挙げてきたが、4月の調査では初めて「大型ハイテク株の買い持ち」という表現になった。

そうなると値上がりの可能性があるのは、これまでの相場上昇にあまり参加していない割安なセクター、つまり大手ハイテク株以外のほぼ全てのセクターであり、こうした銘柄は「ソフトランディング」の恩恵を受ける可能性がより高いだろう。小型株、金融などの景気循環株、素材、一部の工業株やエネルギー株などがそれにあたるだろう。

プリンシパル・アセット・マネジメントのマルチアセット投資グローバル・ヘッド、トッド・ジャブロンスキー氏も超大型ハイテク株が割高だと考えており、米国と海外の株式をアンダーウエートにしている。また株式よりも債券を圧倒的に選好している。

しかし大型株については、相対的に安定していて標準偏差が低いとして、割高にもかかわらず戦略的にポジションをオーバーウエートにしている。「次の相場上昇に向かうにはより広範な銘柄の巻き込みが必要」と分析したが、年内にこうした展開が起きることはないと付け加えた。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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