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米アップルの「秘密主義」、サプライヤーは情報漏れが命取り

 [龍華(中国)/台北 17日 ロイター] 中国南部、広東省深センの龍華にある大規模な工場の集積地は、警備が厳重な要塞を思わせる。施設に入るために従業員はセキュリティーカードを通さなくてはならず、車で出入りするには指紋認識装置による守衛のチェックを受ける必要がある。

 2月17日、米アップルの「秘密主義」により、サプライヤー側も情報漏れに対する厳しい対応を迫られている。写真はタブレッ ト型パソコン「iPad(アイパッド)」。サンフランシスコで1月撮影(2010年 ロイター/Kimberly White)

 広大な敷地内ではコンテナトラックやフォークリフトが四六時中ごう音を響かせ、世界的なトップ企業が作り出す電子機器や製品を運ぶため、工場から工場へと24時間体制で動き続けている。

 米アップルAAPL.Oの主要生産委託先の1つである富士康国際(フォックスコン・インターナショナル)2038.HKの龍華工場では、従業員は生活必需品のほとんどを支給されており、工場施設内には寮や食堂、娯楽施設や銀行のほか、郵便局やパン屋まで用意されている。

 施設内で普通に生活する限り、従業員があえて外に出て行く理由はほとんどないため、情報漏れの危険は少なくて済む。新製品の発表に際してメディアの目に神経を尖らせるアップルや同社のスティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)の怒りを買うリスクも減ることになる。

 携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」やタブレッ ト型パソコン「iPad(アイパッド)」などアップル製品の多くは、龍華のような生産拠点で組み立てられている。電子機器受託生産(EMS)の世界最大手である台湾の鴻海精密工業2317.TWを親会社に持つフォックスコンをはじめ、アップルの秘密を守るための取り組みは徹底されている。

 フォックスコンの龍華工場の外で取材に応じた従業員の1人は、「工場内はどこもセキュリティーが厳しく、金属探知機を使って調べている。退出時に金属性の物が見つかれば、すぐに警察が呼ばれる」と話した。

 こうした内容について、鴻海精密工業のスポークスマンとアップルはともにコメントを差し控えている。

 しかし、中国や東南アジア各地の業界関係者によると、アップルは開発中の新製品についてはどんなにささいな秘密も守ろうとしている。また、委託先の一本化による利便性を優先するほかの家電メーカーとは違い、プロジェクトによって業者を細かく選別することもあるという。「そうすれば、アップル製品に関するあらゆる秘密を持てる存在はアップルだけであることが保証される」と鴻海精密工業の子会社の関係者は語る。 

 要するに、アップルの委託生産先では、組み立てラインに立っている人でさえ、完成品の姿を思い浮かべることはできないということだ。

 アップルの「秘密主義」への執念は、本社があるシリコンバレーでは語り草でもある。これまでに情報漏れで何人もの幹部を解雇してきたし、秘密をネット上に流出させたブロガーを訴えたこともある。

 アップルの社内にはこうした秘密主義がすみずみまで浸透しており、新たなデバイスの発表に向けての準備期間であれば、それはなおさら徹底されている。プロジェクトは限られた一部の人だけで動かされ、同じ屋根の下で働く同僚が何をしているかはっきりと知らない人さえ多い。

 iPhoneの発表時にマーケティング部門で仕事をしていたという元アップル社員は「それ(iPhone)については妻とも話さなかった。沈黙は文化として受け入れられている。仕事について話さないことには慣れるし、みんなも同じことをしているので普通のことになる」と語った。

 <情報漏れに過敏なサプライヤー>

 ロイターの記者は中国で、アップルへの納入業者の一部がいかに厳重なセキュリティー体制を取っているかを目の当たりにした。

 龍華工場の外で取材した1人の従業員から、近くにあるフォックスコンの工場でもアップル向け部品を製造していると聞いた記者は、タクシーをつかまえてGuanlanという場所にある工場に向かった。

 現地に到着して公道から工場の玄関や検問所の写真を撮影していると、1人の守衛が大声で何かを叫んだ。撮影を終えた記者は待たせていたタクシーに飛び乗ったが、守衛は運転手に止まるよう命令し、タクシー免許を奪い取るとも脅した。

 タクシーから出た記者は、公道上で撮影する権利を主張したが、別の守衛も駆けつけ、フォックスコンの従業員が見守る中、工場内に連れて行かれそうになった。

 解放の要求を聞き入れてもらえない記者は現地から立ち去ろうとしたが、一方の守衛から足を蹴られ、別の守衛からも動いたら殴ると脅迫された。

 その数分後にフォックスコンの警備車両が現れたが、記者は乗車を拒否し、その代わりに警察に通報。警察が現地に到着して仲裁に入り、守衛は謝罪して問題は解決した。

 警察は記者に対し「何をするのも自由だが、これはフォックスコンで、彼らはここでは特別な地位を持っている。理解してほしい」と語った。

 こうした守衛に対し、どう行動すべきかをアップルが直接伝えているとは考えにくい。アップルは取引するサプライヤーをも対象にした行動規範を定めているし、コンプライアンス順守のために委託先の監査も定期的に実施している。

 しかし、Guanlanでの騒動は、アップルに納入するメーカーの多くが情報漏れに対して非常に神経を尖らせている姿を浮き彫りにした。

 当然のことながら、アップルとの契約には常に機密保持条項が含まれ、複数の関係者によると、違反が発見された場合には厳しいペナルティーが科されるという。

 事情に詳しい関係筋2人の話では、これまで機密保持条項違反で罰金を科せられた会社は見当たらないが、情報漏れの疑いが続く場合、契約の打ち切りもあるとアップルから警告された会社は少なくないという。

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