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再送:ソフトバンクとauのiPhone決戦、回線の品質勝負へ

 [東京 7日 ロイター] KDDI9433.Tによる米アップルAAPL.Oの新型iPhone(アイフォーン)の販売で、日本での独占販売が崩れるソフトバンク9984.Tは戦略の転換が迫られている。特に、端末の差別化ができなくなった以上、「つながりにくい」と批判される電波の改善は急務だ。

 10月7日、KDDIによる米アップルの新型iPhone(アイフォーン)の販売で、日本での独占販売が崩れるソフトバンクは戦略の転換が迫られている。写真は4日、米アップル社がアイフォーン「4S」を発表した際の様子(2011年 ロイター/Robert Galbraith)

 一方で、巻き返しを図るKDDIもアイフォーンの取り扱いで通信回線がひっ迫する恐れがある。通信会社の競争軸はネットワークの「品質」へとシフトしつつある。

 アップルは、新型アイフォーン「4S」の世界販売(14日)を前に、インターネット経由でクラウドに音楽や写真や書類などを保存できる「iCloud(アイクラウド)」サービスを12日から開始する。快適にクラウドを利用するためにも通信会社のネットワークの質はこれまで以上に重視されることになる。

 KDDIは「通信品質には自信がある。アイフォーン販売でソフトバンクには負けたくない」(幹部)とネットワークの優位性を強調している。対するソフトバンクの孫正義社長は、国内のアイフォーンのデータ通信速度について、ソフトバンクの通信規格の方がKDDIの規格より最大受信速度が速いとツイッターで訴えるなど、2社の間で早くも通信回線をめぐるさや当てが始まっている。

 アイフォーン4Sの発表が日本時間5日で、翌6日にスティーブ・ジョブス会長が死去。7日に予約販売するソフトバンクとKDDIは当日なって慌ただしく料金体系を発表した。両社とも14日から発売。注目されていた月々のデータ通信料はソフトバンクが従来機種と同じ4410円で、KDDIが5460円。KDDIはキャンペーン期間は4980円にするが従来のアンドロイド搭載スマートフォンの通信料を引き継いだ。両社とも従来の料金体系を継承し、料金競争には踏み込まなかったもようだ。

 <インフラ強化乗り出すソフトバンク>

 KDDIのアイフォーン販売が報じられた翌週にあたる9月29日の新商品発表会で、ソフトバンクの孫正義社長は「これからクラウド・コンピューティングの時代になる。だから常時、超高速・大容量でストレスなしに行き来できる通信が重要になる」と述べ、通信インフラ強化に取り組んでいく考えを示した。

 具体策として、同社はウィルコムのPHSの技術を応用した最大受信速度110メガビット/秒(Mbps)のデータ通信サービス「AXGP」を11月1日から開始。NTTドコモ9437.Tの「LTE」、KDDIの「WiMAX」に対抗し、通信品質の弱さを批判される同社が独自の高速通信網でインフラ競争に乗り出す方針だ。

 すでにソフトバンクは電波改善のため、総務省が来春にも割り当てる「プラチナバンド」と呼ばれる良質な900メガヘルツ帯の獲得に向けて取り組みを強めている。NTTドコモ、KDDI、イー・アクセス9427.Tも割り当てを希望しているが、孫社長は、同じプラチナバンドの800メガヘルツ帯をNTTドコモとKDDIが持っているのにソフトバンクにはないことから「3大通信事業者でわれわれのみが得られていないのは非常に問題だ」と強調している。

 2008年からアイフォーンを販売し、ネットワークが飽和状態に近づいているとみられているソフトバンクにとって、プラチナバンドの獲得はまさに「絶対に必須」(孫社長)。電波改善のため今期から来期までの2年間で1兆円の設備投資を決めているが、割り当てを前提に「見切り発車」した。

 SMBC日興証券の森行真司シニアアナリストは、新型アイフォーンがマイナーチェンジに留まったことで、顧客はソフトバンクからKDDIへの乗り換えに慎重になるとみている。その間にもソフトバンクはプラチナバンドを獲得できる可能性があるとして「結果的にソフトバンクが電波を改善するための時間稼ぎになりそうだ」との見方を示している。

 <データ通信の「使い放題」廃止も>

 ソフトバンクに比べてネットワーク環境がよいとされるKDDIにとっても「つながりやすさ」の維持は課題だ。通常の携帯の10―20倍のデータ量が必要とされるスマホの急速な普及を受けて、ネットワークが飽和状態に近づきつつある。その対策として、WiFiやWiMAXへとデータを逃がし、回線の負担を減らす「オフロード」を進めている。KDDIの田中孝司社長は「2013―2014年になると、全体のトラフック(データ量)の半分くらいを3G以外にオフロードしていかないといけない」と危機感を示す。

 スマホによるデータ量の爆発的な増加は通信会社に共通の課題。NTTドコモでは2010年から11年にかけてデータ量は2倍に伸びる見込みだという。ドコモの山田隆持社長によると「1%のお客がドコモ全体の3分の1のトラフィックを使っている状態」で、一部のユーザーの使用に偏っているのが現状としている。米国では、アイフォーンを販売するAT&TT.Nとベライゾン・ワイヤレスの2大通信会社がデータ通信の「定額制(使い放題)」を廃止して従量制の料金体系に移行した。

 ソフトバンクは、定額制から従量制への移行について「われわれも常に検討している」(孫社長)とする。KDDIもアイフォーン販売でデータ量が増えれば回線への負荷が増して「つながりにくい状態」が頻発する恐れがあり、定額制に耐え切れなくなる時期が来る可能性がある。

 コスモ証券の川崎朝映アナリストは「KDDIはアイフォーン発売後にも今まで通りつながりやすさを維持できるのかどうかは疑問が残る。これからの競争軸は、端末だけでなくネットワークインフラにもますます目が向けられ、より総合力が問われそうだ」と指摘している。

  (ロイターニュース 村井令二 白木真紀 編集:北松克朗)

※見出しを修正して再送します。

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