[東京 26日 ロイター] NEC6701.Tは26日、国内外で1万人規模の人員削減計画と2012年3月期業績予想の下方修正を発表した。人員削減を中心とする事業構造改革費用の計上に加え、今期の下方修正に伴う繰り延べ税金資産の取り崩しで、連結当期純損益は1000億円の赤字になる見込み。
従来予想は150億円の黒字だった。同社は11年3月期も125億円の最終赤字を計上しており、2期連続の赤字となる。
同社は、円高や欧州の信用不安で業績回復が見込めないことで人員削減に踏み切る。内訳は、国内7000人、海外3000人を予定しているが、国内の7割程度は外部委託人員を想定。11年3月期の連結人員は11万3000人だが、記者会見した川島勇取締役によると、1万人のうち社員の削減は約5000人規模の見通し。
当期損益が1000億円の赤字に転落するのは、人員削減に伴う事業構造改革費用で400億円、税制改正や業績悪化による繰り延べ税金資産の取り崩しで740億円を織り込んだことが要因。
<携帯電話販売を大幅下方修正>
通期の業績予想は、売上高を3兆1000億円(従来予想3兆2500億円)、営業利益予想を700億円(同900億円)にそれぞれ下方修正した。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、アナリスト6人が過去90日間に出した営業利益予想の平均値は803億円だった。海外での投資抑制の影響でキャリアネットワーク事業の売り上げが想定を下回ったほか、携帯電話の販売が伸び悩んでパーソナルソリューション事業の売上高が減少した。さらに、これまで予想に含んでいなかったタイの洪水の影響を織り込んでサーバー製品の販売減を見込んだことも響く。
特に携帯電話事業は、アップルAAPL.Oの「iPhone4S」が発売となった10―12月期の販売が不調で、4―12月期の出荷台数は330万台にとどまった。このため今期の携帯電話の販売計画は従来の650万台から500万台に下方修正した。損益分岐点は600万台としてきたことから、連結子会社のNECカシオモバイルコミュニケーションズは今期赤字になる見込み。
連結予想の下方修正に伴い、今期の年間配当は無配にする。昨年10月27日の4─9月期決算発表時は未定としていた。2011年4―12月の連結業績は、売上高が前年比3.5%減の2兆1122億円、営業損益は14億円の赤字(前年同期は123億円の赤字)、当期純損益は975億円の赤字(同535億円の赤字)になった。ITサービスが売り上げ増や不採算案件の減少で好調だったが、アップルやサムスン電子005930.KSなど海外メーカーの国内市場の攻勢でスマートフォンの販売が伸び悩んだ。
<12年度4兆円の売上高計画は「不可能」>
記者会見した遠藤信博社長は、円高や欧州の信用不安で事業環境の急回復が見込めないことで「現状の売上高レベルでも収益を上げられる体質が必要」との認識に至ったことが人員削減に踏み切る理由だと説明した。1万人の削減は13年3月期上期をめどに実施するという。これにより今期は400億円の構造改革費用を特別損失に計上するが、13年3月期は営業利益で400億円が改善する見込みで、14年3月期も追加の費用削減で400億円の改善に寄与するとの見通しを示した。
同社はリーマン・ショック後の09年1月にもグループで2万人超(正規社員と非正規社員は半分ずつ)の削減を発表。約1万人の正社員の削減は10年3月以降に実施したが、電子部品会社のNECトーキンの削減が大半だった。今回は課題事業を(1)携帯電話事業、(2)サーバなどプラットフォーム事業、(3)キャパシタ事業を展開するNECトーキン――の3分野と想定し、構造改革を進めていく。
同社の中期経営計画は、2013年3月期に売上高4兆円、営業利益2000億円を目指すこととしていたが、遠藤社長は今回の業績予想の下方修正を受けて「4兆円は現在のわれわれの実力からみて不可能だ」と述べた。ただ、営業利益率5%の目標については「固執していく」として全社的なコスト構造を見直していく考えを示した。課題3事業を見直していく一方で、(1)ITサービス、(2)キャリアネットワーク、(3)社会インフラ(4)エネルギー――の4分野に集中投資していく方針とした。
(ロイターニュース 村井令二 大林優香;編集 内田慎一)
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