[東京 1日 ロイター] ソニー6758.Tは1日、2013年3月期の連結売上高予想を下方修正した。世界的な景気減速を背景に、液晶テレビやコンパクトデジタルカメラ、携帯型ゲーム機など主要製品の年間販売台数の見通しを引き下げたことが主因。中国の景気減速や反日デモの影響なども織り込んだ。
一方、テレビ事業の収益改善や資産売却などを進めるとして当期純損益予想は据え置いた。
市場では、パナソニック6752.Tやシャープ6753.Tが構造改革費用の追加計上により大幅な最終赤字見通しになったのと比較すると、ソニーは「一定の評価ができる」との声も出ている。ただ、本業が売り上げ不振に直面している構図は3社とも変わらない。日本の家電メーカーは唯一の成長市場であるスマートフォン(スマホ=多機能携帯電話)とタブレット端末で韓国サムスン電子005930.KSや米アップルAAPL.Oなど海外勢の後塵を拝している。新たな収益源もいまだ確立できず、各社とも出口の見えない苦境に陥っている。
ソニーの通期の売上高予想は従来の6兆8000億円から2000億円減額し、前期比1.6%増の6兆6000億円に下方修正した。決算会見した加藤優最高財務責任者(CFO)は、中国の景気減速や反日デモの影響について、「第2四半期は出荷ベースということで大きな影響はなかったが、国慶節といった商戦期で影響が出たと言わざるをえない」と述べ、減額した2000億円のうち、300億円が中国の販売減少によるものと説明した。中国事業の売上高は前期に比べて10%強、減少する見通しという。
液晶テレビの販売計画は従来の1550万台から1450万台に引き下げた。ただ、加藤CFOは、テレビの販売状況について、数量拡大から安定的収益拡大へと戦略を転換しているため、「今のところ想定以上の収益改善ができている」と述べ、「販売台数が落ちても、利益が落ちるとは見ていない」と語り、14年3月期の黒字化達成に自信を示した。
世界的な市場環境の悪化を受けて、テレビのほか、携帯型ゲーム機を従来の1200万台から1000万台、コンパクトデジカメを同1800万台から1600万台、パソコンも同920万台から850万台にそれぞれ下方修正した。据置型ゲーム機、スマートフォン(多機能携帯電話=スマホ)、ブルーレイディスクプレーヤーの販売計画は従来のまま据え置いた。
<今期利益予想は据え置き>
一方、当期純損益予想は従来の200億円の黒字(前年は4566億円の赤字)を据え置いた。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、アナリスト16人が過去90日間に出した予測の平均値は75億円。会社予想はこれを165.2%上回っている。営業損益も1300億円の黒字(同673億円の赤字)と従来予想を維持する。テレビ事業で収益改善が進んでいることなどに加え、加藤CFOは「資産売却やその他の施策を組み合わせながら黒字を確保する」と述べた。
マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は「利益ベースでは従来予想を据え置いており、市場コンセンサスを上回った」と指摘し、「利益を確保するという経営陣の強い意欲の表れであり、販売台数が伸びない中で一段のコスト削減を進めていく方針を示したのではないか」との見方を示した。ただ、「将来的な稼ぎ頭がどこにあるかまだ見えてこない」とし、「世界景気が一番厳しかった7─9月期を過ぎたことで今後は米国を中心とした景気の持ち直しが期待されるが、ソニーがどれだけ景気回復にキャッチアップできるか注目される」と述べた。
<4―9月期は前年並みの最終赤字>
同日発表した2012年4―9月期連結決算(米国会計基準)では、営業利益が前年同期比41.2%増の365億円となった。スマホやデジカメに搭載する半導体製品のイメージセンサーの大幅増収効果があったほか、液晶テレビのコスト削減、ケミカルプロダクツ関連事業の売却益が貢献した。
ただ、繰り延べ税金資産に対する評価性引当金を計上している関係で税金費用が膨らみ、当期損益は401億円の赤字(前年同期は424億円の赤字)となった。ソニーモバイルの完全子会社化が寄与し、売上高は同1.6%増の3兆1198億円だった。テレビ事業は168億円の赤字だった。
下期以降の想定為替レートは従来通りで、ドル/円は80円、ユーロ/円は100円。
(ロイターニュース 江本 恵美、白木真紀 取材協力:杉山容俊 編集 橋本浩)
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