[東京 31日 ロイター] パナソニック6752.Tが31日発表した2013年4―6月期の連結営業利益は前年比66.3%増の642億円だった。固定費圧縮を進めたほか、リチウムイオン電池の収益が改善するなど円安効果が寄与して増益を確保した。
ただ、テレビや携帯電話の赤字削減は進まず、構造改革は道半ばとなった。
4―6月期の連結売上高は、前年比0.6%増の1兆8245億円。円安効果でわずかに増収となったが、テレビ、デジタルカメラ、携帯電話の家電機器は依然厳しく、中国市場でルームエアコンが苦戦したことから、現地通貨ベースの売上高では前年比9%減少した。
これら実質的な売り上げ減をカバーしたのは全社的な合理化の取り組みで、4―6月期の固定費削減は661億円に達した。当期純利益は前年比8.4倍の1078億円の大幅増益となったが、確定拠出年金制度への移行で798億円を計上した一時金の効果が大きかった。
一方、足元で好調な事業はリチウムイオン電池。民生用電池は円安効果で国内工場の採算が改善した。さらに自動車用電池も兵庫県加西市の工場など既存ラインがフル稼働の状況に達しているという。また、固定価格買い取り制度で太陽電池の収益力が上がっており、関連する住宅事業も販売が増加した。
<携帯事業は継続、改善策は時間かけて作る>
今期は、テレビや半導体など赤字事業で年間900億円以上の損失を圧縮する計画が重点課題だが、4―6月期では70億円の改善にとどまった。特に携帯電話事業は厳しく、4―6月期で54億円の赤字を計上。前年の37億円の損失より赤字額が拡大。
携帯電話は、NTTドコモ9437.Tがソニー6758.Tとサムスン電子005930.KSのスマートフォン(高機能携帯電話)を優遇販売する「ツートップ戦略」を打ち出したことが追い打ちをかけており、同日、NEC6701.Tはスマホの新規開発を中止する方針を発表した。
ただ、記者会見したパナソニックの河井英明常務は「携帯電話は継続していきたい」と述べて、同事業の撤退については否定的な考えを示した。NTTドコモ向けの冬モデルのスマホ開発は見送る方向で検討しており、業務用に堅牢性のあるスマホを開発するなど独自分野を切り開く方向で生き残りを図るが、具体的な改善策については「時間をかけて作りたい」と述べるにとどめた。
<構造改革費用の使途は今後の課題に>
テレビ事業の4―6月期の赤字は115億円。通期で340億円の赤字(前年同期は885億円の赤字)に圧縮する計画。
14年3月期の構造改革費用は1200億円の計画だが、4―6月期はハンガリーの太陽電池組み立て工場の閉鎖の関連費用43億円を計上するにとどまった。
残る構造改革費用の使途について河井常務は「まだ具体的には言えない」とし、テレビや半導体の構造改革など抜本対策は、第2四半期以降の課題とする方針を示した。
2014年3月期の連結営業利益予想は、前年比55.3%増の2500億円で据え置いた。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、アナリスト18人が過去90日間に出した予測の平均値は2570億円だった。
(ロイターニュース 村井 令二 編集;田巻 一彦)
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