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焦点:加テレサット、衛星高速ネットでマスク・ベゾス両氏に挑む

[オタワ 11日 ロイター] - カナダのテレサットは、宇宙空間をベースにしたグローバル高速ブロードバンド網の提供に向けて、地球低軌道(LEO)を周回する人工衛星群(コンステレーション)の打ち上げを急いでいる。これによって、衛星通信企業として1969年に創業したテレサットは、イーロン・マスク氏とジェフ・ベゾス氏という革新的な大資産家2人と優劣を競うことになる。

 カナダのテレサットは、地球低軌道(LEO)を周回する人工衛星群(コンステレーション)の打ち上げを急いでいる。これによってテレサットは、マスク氏とベゾス氏という革新的な大資産家2人と優劣を競うことになる。写真はLEO衛星群に関する最初のアイデアを書き留めた紙ナプキンを持つ、テレサットのゴールドバーグCEO。オタワで3月撮影(2021年 ロイター/Blair Gable)

テスラ最高経営責任者(CEO)のマスク氏は、テレサットが最初の人工衛星を打ち上げたときにわずか1歳だったが、今では自身が保有するスペースXを使って「スターリンク」と称するLEO衛星の打ち上げを進めている。

またベゾス氏が創業したアマゾン・ドット・コムは、「プロジェクト・クイパー」と名付けたLEO衛星プロジェクトを計画中だ。ベゾス氏は、ロケット製造企業であるブルー・オリジンも保有している。

こうしたライバルの存在にもかかわらず、テレサットのダン・ゴールドバーグCEOは、自社のLEO衛星計画は株主にとっての「ホーリー・グレイル(聖杯)」であり、「グローバル規模のブロードバンド網の提供において持続可能な競争上の優位」にあると述べ、自信のほどを示した。

テレサットのLEO衛星群は、スペースXやアマゾンの計画に比べ、大幅に低コストである。また衛星サービス分野におけるテレサットの経験は、ライバルより数十年も長い。さらに、個人向け市場に注力するスペースXやアマゾンとは異なり、テレサットは予算規模の大きい企業顧客に狙いを定めている。

ゴールドバーグCEOによれば、6年前、ネットフリックスをはじめとする動画ストリーミングサービスが台頭し、光ファイバー網による超高速インターネット接続が確保されたことで自社のビジネスモデルが危機に瀕していることを悟り、文字どおり眠れぬ日々を過ごしたという。

テレサットは15基の静止衛星により、主としてテレビ放送、インターネット接続事業者、政府ネットワーク向けのサービスを提供している。だがこうした顧客はいずれも、地上から3万5000キロ以上も離れた軌道上の衛星と信号をやり取りすることによるレイテンシー(時間遅延)を以前より気にするようになっていた。

こうして2015年、レイテンシーがたえず話題に上ったパリでの業界カンファレンスからカナダに戻る機上で、ゴールドバーグCEOはLEO衛星群に関する最初のアイデアをエア・カナダの紙ナプキンに書き留めた。

このときのアイデアは、最終的にテレサットのLEO衛星群「ライトスピード」へと結実した。GEO衛星に比べて地球までの距離は約35分の1で、光ファイバーに匹敵する速度でのインターネット接続を提供する。

テレサットが最初のLEO衛星を打ち上げるのは2023年初頭になる予定だが、マスク氏の「スターリンク」衛星はすでに約1200基が軌道上にある。

キルティ・アナリティクスでシニア・アナリストを務めるケイレブ・ヘンリー氏は、「運用開始はスターリンクの方がはるかに早くなる。スペースXが先手を取って顧客を獲得するチャンスがある」という。

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だがスターリンクの「先発」優位は最長でも24カ月であり、ゴールドバーグCEOは「それだけの期間で市場全体を囲い込むことは誰にもできないだろう」と見ている。

テレサットは2019年にベゾス氏が保有する航空宇宙企業ブルー・オリジンと衛星打ち上げの契約を結んだ。テレサットのデビッド・ウェンドリング最高技術責任者によれば、他に3社との協議を進めているという。

その3社とは、日本の三菱重工業、欧州のアリアナグループ、そして「スターリンク」衛星を打ち上げているマスク氏のスペースXである。ウェンドリング氏によれば、数カ月以内に契約相手が決まるだろうという。

テレサットでは、2023年初頭に、第一弾としてタレス・アレニア・スペースが製造する298基の衛星を打ち上げることをめざしている。同年後半に高緯度地方で部分的にサービスを開始し、2024年には地球全体で本格的なサービスに入る予定だ。

<「有利なポジション」>

テレサットの「ライトスピード」衛星群のコストは、約100億ドル(約1兆0940億円)とされるスペースX、アマゾンのプロジェクトの約半分になると試算されている。

「我々は有利なポジションにあると思っている」とゴールドバーグCEOは言う。「競合他社の衛星群を見ても、我々には(なぜあれほどの高コストをかけるのか)理解できない」

アナリストのヘンリー氏は、テレサットが企業顧客に注力するのは正しい道だと言う。

「個人向け市場に最適化された衛星群に100億ドル投資すると宣言している巨大企業は、すでにスペースX、アマゾンと2社もある」とヘンリー氏は言う。「もしテレサットがその半分の投資額で企業向けの高性能システムを生み出せるのであれば、なるほど、その競争力は非常に高い」

この分野での豊富な経験も、テレサットにとっては有利に働く可能性がある。

「こうした顧客とはもう何十年も取引がある。それが我々にとっては現実的な優位を与えてくれる」とゴールドバーグCEOは言う。

「(テレサットは)衛星サービス事業者であり、これまでもそうだった。このビジネスにおける専門能力と経験という両方のアドバンテージを持っている」と語るのは、調査会社ブライステックのキャリッサ・クリステンセンCEO。ただし同氏は、LEO衛星群を展開する3社のうち、生き残れるのは2社だけだろうと考えている。

テレサットは資金面でも、3分の1を株式、3分の2を社債で確保しつつある。この夏のいずれかの時点でナスダックに株式を上場する予定で、その後トロント証券取引所にも上場する可能性がある。現時点では、カナダ公務員年金投資委員会とローラル・スペース&コミュニケーションズが同社の主要株主となっている。

ゴールドバーグCEOによれば、輸出信用機関であるBPIフランスとカナダ輸出開発公社(EDC)が主な出資者になる見込みだという。ケベック州政府も4億カナダドル(約349億円)を融資しており、カナダ連邦政府も優先顧客となるために6億カナダドルの出資を約束している。さらにテレサットは、2020年度に2億4600万カナダドルの純益を計上している。

ゴールドバーグCEOによれば、今ではLEO衛星計画で頭が一杯で夜も眠れないという。

「あの世界で最も金持ちの2人がLEO衛星群などに関心を注いでいなかった頃から、我々はこの路線で行くと決めていた」

(翻訳:エァクレーレン)

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