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アングル:彭帥選手の曝露に沈黙守る元副首相、中国当局の影

[北京 25日 ロイター] - 元中国副首相による性的暴行をソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のウェイボ(微博)で暴露した後に行方が分からなくなっていた女子プロテニス選手の彭帥さんが、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長との電話会談という形で姿を現した。しかし、その彭帥さんが糾弾した当人である張高麗元副首相は沈黙を守り、中国指導部を覆う謎のベールの奥にとどまったままだ。

 11月25日、女子プロテニス選手の彭帥さんが糾弾した当人である張高麗元副首相(写真)は沈黙を守り、中国指導部を覆う謎のベールの奥にとどまったままだ。ニューヨークの国連本部で2016年4月撮影(2021年 ロイター/Mike Segar)

彭帥さんは今月2日、今月で75歳となる張高麗氏から3年前に性的関係を強要されたと告白。彼女は張高麗氏側から関係を解消されるまで、断続的に不倫をしていたことも明かした。

投稿は公表後、間もなく削除され、中国国内でこのトピックに関する情報は完全に遮断されている。ただ、彭帥さんが3週間近く消息不明になると、国際社会から彼女の安全を懸念する声が上がり、SNS上には「彭帥さんはどこに」というハッシュタグがつけられた。

最近になってバッハ氏とのテレビ電話を含め、彭帥さんの幾つかの映像は伝えられているものの、テニス界や国際機関の間では、本当に彼女の身の上が大丈夫なのかという疑念が消えていない。

人権団体のアムネスティ・インターナショナルは、IOCとバッハ会長が来年2月に北京冬季五輪を控えている中国による「人権侵害の可能性をなかったことにする試み」に関して、その片棒を担いでいると非難した。

一方、これまで彭帥さんに比べると、張高麗氏の注目度は低かった。2018年に引退した張高麗氏は、ほぼ全ての共産党指導者と同じように公的な場に登場することはほとんどない。

張高麗氏と中国政府は、彭帥さんの告発に直接のコメントしなかった。中国国務院新聞弁公室はコメント要請に回答がなく、彭帥さんの投稿にも言及せず、張高麗氏への取材窓口にもなっていない。

シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院のアルフレッド・ウー准教授は「張高麗氏に発言を許せば、冬季五輪直前に望ましくない形で中国指導部の評判に傷をつけることになる。たとえ共産党が張高麗氏に対して内部規律違反に関する処分を下すとしても、すぐに公表せず、まずは批判の嵐が収まるのを待ち、党の強さを証明する意味合いを持たせようとするだろう」と述べた。

<天津から中央へ>

張高麗氏が最後に公の場に姿を見せたのは今年7月1日で、共産党創建100周年の祝賀行事に列席していた。その場所は、6年前に同氏が冬季五輪の成功を厳かに誓った人民大会堂からほど近い。

2007─12年まで張高麗氏は天津市党委書記を務め、一時荒廃していた天津市を11年には中国で最も高成長を遂げた地域に生まれ変わらせる手腕を発揮した。13─18年は副首相として、習近平国家主席の肝いりである巨大経済圏構想の「一帯一路」を含めた経済問題のかじ取りを任されるとともに、冬季五輪の実行部門の監督役を務めた。

16年にはバッハ氏と面会し、22年の北京冬季五輪を特別かつ素晴らしい内容にすることに万全を期すための取り組みを進めているところだと説明していた。

彭帥さんは投稿で、張高麗氏と天津で初めて出会い、性的関係になったと明かしている。張高麗氏は引退後すぐに、スポーツドクターを通じて再び連絡をよこし、関係が再燃したという。

「あなたは北京(中央政府)での昇進後、私との連絡を絶った。私は全てを胸の内にしまい込みたかった。あなたは責任を取るつもりがなかったのに、なぜ、まだ私を求め、あなたの家で性行為を強要したのか」と記した。

彭帥さんは、張高麗氏の妻がこの関係を知っていたとも指摘。ほとんどの中国指導者と同様に、張高麗氏の妻は年齢も含めて詳しい情報は判明していない。夫妻には息子が1人いる。

<口を閉ざしてきた歴史>

複数の専門家によると、張高麗氏の沈黙は「パナマ文書」で汚職を批判されたり、不倫のうわさが出た過去の共産党指導者が取ってきた態度と全く同じだ。

習近平氏は、9年にわたる自身の指導体制における功績の1つとするべく、汚職の一掃に向けた包括的な取り組みを進め、党幹部に対して政治家として、専門家として、家族的道徳の上で「最も厳しいテストに合格できる」よう求めている。

上海政法学院の元准教授で現在はチリを拠点としているチェン・ダオイン氏は、張高麗氏からすれば口を閉ざすしか選択の余地はないと話す。「彼が(彭帥さんの告発を)否定しても、決して信用されないだろう。なぜなら習近平氏による汚職摘発の結果、現在の中国人民は誰でも、当局者が権力を武器に性的関係を迫るのは当たり前と承知しているからだ」と説明した。

中国では通常、政治的ないし経済的な不正が調査で見つかった当局者の「悪事」を一層際立たせる目的で、性的なスキャンダルが用いられる。

北京在住の著述家ウー・キアン氏は「自らを法を超越する存在とする共産党にとって、指導者以外の誰にも説明責任はないとみなしている」と指摘する。

また、先のチェン氏は「張高麗氏が彭帥さんの言い分を認めてしまうと、彭帥さんが中国でもフェミニスト運動が成功する好例となり、それは共産党の権力に挑戦する動きをもたらしかねない」とみる。

(Yew Lun Tian 記者)

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