August 31, 2018 / 2:31 AM / 16 days ago

焦点:ドローンも駆使、空売り筋「ヘイター」のテスラ包囲網

[サンフランシスコ/ワシントン 29日 ロイター] - 米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O)のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が株式非公開化計画を断念したのを受け、テスラ株にずっとインターネット上で懐疑的な見方をしてきた人たちが、同社に圧力をかける新たな好機が訪れたと色めき立っている。

 8月29日、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOが株式非公開化計画を断念したのを受け、テスラ株にずっとインターネット上で懐疑的な見方をしてきた人たちが、同社に圧力をかける新たな好機が訪れたと色めき立っている。写真はマスクCEOとテスラの新車のコンビネーション写真。それぞれ都内とカリフォルニア州で2014年9月、2018年8月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai and Mike Blake)

マスク氏は8月7日、1株当たり420ドル(約4万7000円)で自社の株式を非公開化することを検討しているとツイッターで表明。非公開化することにより、空売りから解放され、世間の目から財務状況を隠すことになるはずだった。

だが同氏は24日になって突如、非公開化計画を断念すると発表。米証券取引委員会(SEC)が、非公開化を巡るマスク氏のツイートを調査するとのメディア報道は、「反テスラ派」を活気づかせた。

「実にばかげた状況だ」と、カナダ人のブロディ・ファーガソンさん(25)は言う。ファーガソンさんはマスク氏の他のベンチャー事業に関する動画を見て、テスラに関心を抱くようになった。

「非公開化の断念で、私たちの懐疑的な見方が勢いを得ている」と、テスラ株に弱気のポジションを取るファーガソンさんはツイッターを通してロイターに語った。

ファーガソンさんは、ツイッターを利用したクラウドソーシングによって、財務データや、テスラ施設の写真や衛星画像や動画を集め、同社の生産・販売台数を解明して、同社の株式が過大評価されているという考えを裏付けようとしている大勢の反テスラ派の1人にすぎない。

テスラの広報担当者は、空売り投資家についてコメントしなかった。マスク氏の支持者はしばしばツイッター上で、空売り投資家のことを「ヘイター(憎む人)」と呼んでいる。

ジム・チェイノス氏やデービッド・アインホーン氏のようなウォール街で最も有名な空売り投資家とは異なり、このようなコミュニティーに属するのは、主に個人投資家や、「@TeslaCharts」などのツイッターフィードと一緒になって趣味で調査を行う人たちだ。

「反テスラの立場を取るコミュニティーの住人は、多くが全く普通の人たちだ」と、中小企業の経営者で、「@Latrilife」というユーザー名を使うツイッター利用者は言う。彼もテスラ株に対し弱気なポジションを取っている。

匿名を希望する@Latrilifeさんはロイターに対し、マスク氏がアナリストとの電話会議で、潜在利益や資本要件に関する質問に答えなかったことを受け、テスラ車の生産・流通・販売に関する調査を開始したと語った。マスク氏はその後、この件について謝罪した。

テスラの在庫を把握するため、@Latrilifeさんはカリフォルニア州の保管場所を監視している。流通センターに出荷される前までここに保管されているという。@Latrilifeさんはこうした保管場所の動画をツイッターに投稿している。

テスラによると、カリフォルニア州各所に保管場所があるという。

また、テスラの生産工場の動画を撮影するためドローンを使ったり、同社の財務報告書を徹底的に調べ、マスク氏の発言に矛盾はないか洗い出したりする人もいる。

マスク氏が8月7日のツイートで、非公開化のための「資金は確保した」と述べ、その後ニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、自身に批判的な人たちについて「小ざかしい」と語ったことは、ネット上で激しい怒りを買った。

 8月29日、米電気自動車大手テスラのイーロン・マスクCEOが株式非公開化計画を断念したのを受け、テスラ株にずっとインターネット上で懐疑的な見方をしてきた人たちが、同社に圧力をかける新たな好機が訪れたと色めき立っている。写真は、ネバダ州のテスラ工場。18日撮影(2018年 ロイター/Bob Strong)

空売り投資家は今後、テスラに対する訴訟やSECによる調査の進捗(しんちょく)状況、また同社のキャッシュフローと債務を注視していくと話す。

赤字企業のテスラは今月、投資家に対し、第3、第4・四半期には黒字化が期待できるとし、株主に追加出資を求める計画はないと繰り返し強調。だが、ウォール街のアナリストはこれを疑問視している。

<最大のリスク>

ウォール街では、テスラに対する見方は大きく分かれている。

トムソン・ロイターI/B/E/Sの集計では、テスラ株をカバーするアナリスト27人のうち、投資判断を「ホールド」としたのは10人、「買い」は9人、「売り」は8人だった。

テスラ株は米国で最も空売りされており、売り建玉は約101億8000万ドルに上ると、金融分析会社S3パートナーズはみている。

空売り投資家は、株を借りて売った後、安値で買い戻して差額を得る。マスク氏は空売り投資家をばかにし、彼らの主張の一部はうそだとしている。彼らの敵意が自身と会社に損害を与えているとも語っている。

「空売り投資家がイーロン(・マスク氏)とテスラの株価に及ぼす最大のリスクは、彼らが公開している情報だ」と、シカゴを拠点とするコンサルタント会社で働くポール・フィエットナー氏は指摘する。同氏は、昨年にテスラが量産型セダン「モデル3」の生産目標を達成できなかったことを受け、テスラ株に対し弱気のポジションを取るようになったと語る。

同氏は、テスラ幹部の辞任や同社に関連する訴訟に関する情報をクラウドソーシングすることに注力しているという。

「空売り投資家は、イーロンの車の生産を止めているわけではない」と同氏は付け加えた。

テスラを注視しているのは空売り投資家だけではない。

スイスの金融大手UBSのアナリストは、モデル3の生産コストを知るため、エンジニアを雇って同車を分解した。同行は現在、テスラ株の投資判断を「売り」としている。

マスク氏がツイートした8月7日は上昇したテスラ株だが、それ以降は同氏のリーダーシップへの懸念が高まり、約9%下落している。

S3によると、この下落により、空売り投資家は9億4200万ドル超の含み益を得ている。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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