コラム：テスラ、米政府の税優遇排除は「かすり傷」

［ワシントン　１１日　ロイター　BREAKINGVIEWS］ - 米電気自動車（ＥＶ）大手テスラは、バイデン政権が打ち出したＥＶ税優遇策の対象から外れるが、同社ならこれを軽々と乗り越えられるはずだ。政権の大型歳出法案には、労働組合のある工場で製造されたＥＶに絞った税優遇策が盛り込まれており、テスラ車は条件を満たさない。しかしイーロン・マスク最高経営責任者（ＣＥＯ）には他にも成功の原動力があり、その筆頭が中国だ。

バイデン氏の税優遇策により、自動車メーカーの明暗ははっきりと分かれた。この措置は、米国内の労働組合のある工場で製造されたＥＶとＥＶ電池について、現行７５００ドルの税控除をさらに最大５０００ドル増やすもの。現時点で条件を満たしているのはゼネラル・モーターズ（ＧＭ）の「シボレー・ボルト」ＥＶのみだ。ただ、フォード・モーターのピックアップトラック「Ｆ─１５０」やＧＭの「キャデラック・リリック」、「ハマー」のＥＶも、将来のモデルが条件を満たす見通しとなっている。

米国最大のＥＶメーカー、テスラにとっては不利になる。同社はカリフォルニアに加え、間もなくテキサスでも自動車を製造するが、労働組合は持たない。同社はトヨタ自動車やホンダなどの外資系メーカーと並び、税優遇策を批判した。

もっとも、テスラにとって今回のショックはかすり傷にすぎない。エクスペリアンによると、同社は第３・四半期時点で米国のシェア７３％を押さえている。テスラ車はかねて他社モデルよりも価格が高い上、累計販売台数が２０１９年に規定の２０万台を超えたことで現行７５００ドルの税優遇が縮小されているにもかかわらず、販売は落ち込んでいない。ことし第３・四半期の販売台数は７０％以上も増えた。

マスク氏には他にも、中国という有望な市場がある。中国はテスラの主要な輸出拠点であり、昨年の売上高は倍増して６７億ドルとなった。米国は昨年、２０％増の１５２億ドルだ。ライスタッド・エナジーによると、中国は９月時点で世界のＥＶ販売全体の約半分を占めた。中国政府は２０２５年までに全自動車販売の４割をＥＶとする目標を掲げている。

テスラ車よりも安いシボレーは米国市場にある程度食い込んでいるが、エクスペリアンによると、電池のリコール騒動で第３・四半期のシェアは４％と、前期の半分以下に落ち込んだ。テスラは２０２３年にも２万５０００ドルのモデルを導入する計画で、今より低めの価格帯への進出が既に予定されている。バイデン氏の後押しを得なくても、これで販売は好調を保てるだろう。

●背景となるニュース

＊ペロシ米下院議長は９日、バイデン大統領の大型歳出法案について、採決を１５日の週に行うとの目標を示した。法案にはＥＶ購入の税控除を現行の７５００ドルから最大１万ドル２５００ドルに拡大する案が盛り込まれた。４５００ドルの追加控除を受けられる対象は、米国内の労働組合のある工場で製造されたＥＶ。現時点で条件を満たしているのはシボレー・ボルトだけとなる。

（筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています）

＊このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。