[ニューヨーク 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の電気自動車(EV)市場は2つある。カリフォルニア州とそれ以外だ。米国の先頭を切ってEVの採用が進む同州は、EV移行でしのぎを削る自動車メーカーの指標州となっている。そしてEVメーカーの草分け、テスラにとっては不吉な兆候が見える。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は既に、ライバルの攻勢から業界首位の座を守るために価格を引き下げ、利ざやを削ることを余儀なくされている。その努力も虚しく、21日に発表されたデータによるとカリフォルニア州でのテスラのシェアは60%を切り、昨年1年間の73%強から落ち込んだ。
問題の1つは価格なのだろう。販売台数で2位に付けたのは、超低価格の「シボレー・ボルトEV」を抱えるゼネラル・モーターズ(GM)で、シェアは8.5%だった。しかし外国メーカーも順位を上げており、ドイツ車のシェアは合計13%と、昨年の7%から拡大した。
カリフォルニア州では、マスク氏自身もテスラの「お荷物」になっている可能性がある。同氏がツイッターを買収し、しきりに二極対立的な政治的ツイートをしていることに、圧倒的に民主党支持者が多い同州の消費者は嫌気が差している恐れがある。実際、世論調査会社モーニング・コンサルトの調べでは、民主党支持者のテスラ好感度は、昨年初めから今年にかけて26%ポイント余りも落ち込んだ。これはマスク氏がツイッターを買収した時期と重なる。
最近の値下げによってリベラル派の消費者を呼び戻せる可能性はあるだろう。世論調査会社ユーガブのデータによると、値下げが実施されたここ数週間で、テスラの購入検討に前向きな政治的リベラル層の数は増えた。しかし、長期的に市場に参入するメーカーが増えてくれば、リベラル派の消費者は、マスク氏の政治姿勢への嫌悪感が最後の一押しとなって他社のEVを検討するかもしれない。
米国最大のEV市場において最大の有権者層に良くない印象を与えるリスクを冒すことは、愚かな行動のように思われる。今後10年間にEV購入を検討すると答えた割合が、共和党支持者では3分の1にとどまるのに対し、民主党支持者では3分の2を占めることを考えれば、なおさらだ。カリフォルニア州におけるテスラの苦戦ぶりは、より持続的な「斜陽」の兆しかもしれない。
●背景となるニュース
*カリフォルニア州エネルギー委員会が21日公表したデータによると、今年第1・四半期の同州のバッテリー搭載EV販売は9万5946台で、テスラのシェアは約60%だった。昨年1年間の同社のシェアは約73%。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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