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アングル:ミャンマーに強硬になれないタイ、背景に親密な軍関係

[バンコク 2日 ロイター] - ミャンマーでは2月1日にクーデターを起こした国軍による暴力と流血が悪化の一途をたどっている。この状況についてタイ政府は語調をやや強め、「重大な懸念」を持っていると表明した。ただ専門家の見方では、両国の軍が親密な関係にあることや、大量のミャンマー難民流入への不安から、タイがミャンマーに対してこれ以上踏み込んだ行動をしそうにはない。

 4月2日、国軍による暴力と流血が悪化するミャンマーについて、タイ政府は「重大な懸念」を表明した。ただ両国の軍が親密な関係にあることなどから、タイはこれ以上踏み込んだ行動をしそうにはないという。写真はミャンマーのミン・アウン・フライン総司令官(左)とタイのプラユット首相、2017年8月にバンコクで代表撮影(2021年 ロイター/Sakchai Lalit)

こうしたタイの姿勢は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の対ミャンマー外交を巡り、タイと他の幾つかの加盟国との間に足並みの乱れを生み出している。半面、タイが仲裁役として働く立場にもなり得る。

タイのチュラロンコン大学の政治学者パニタン・ワッタナヤゴーン氏はロイターに「(同国の立ち位置は)難しい。それでもわれわれは(ミャンマーの)重要なパートナーになっているので、(何かできる)機会はあると思う」と述べた。

タイとミャンマーの両軍の関係が近いことは、ミャンマーの事実上の国家指導者だったアウン・サン・スー・チー氏を政権の座から追い落としてわずか数日後に、同国のミン・アウン・フライン総司令官がタイのプラユット首相に「民主主義への支持」を要請したことでもよく分かる。

早速支持を表明したプラユット氏自身、2014年に軍の最高指導者としてクーデターを起こし政権を奪取した経緯がある。その後プラユット氏は、民政移管のため19年に行われた総選挙で首相に選出され、選挙不正があったとする野党側の批判をはねつけ続けている。

彼らの個人的な友好関係はかなり早くに始まった。かつてはビルマ(現ミャンマー)、シャム(現タイ)と呼ばれ、歴史的には敵対関係にあったが、近年の両国軍部はそうした反目を脇に置いて久しいようにもみえる。2018年のバンコク・ポストの報道によると、タイは当時ミン・アウン・フライン氏に対し、タイ軍を支える同氏の姿勢に敬意を表する形で、外国人に贈る最高勲章とされる王室の「白象勲章」を授与している。

<温度差>

タイのカセトサート大学の歴史学教授、ラリタ・ヒングカノンタ氏は「両国の軍部にとってこの仲間意識は非常に重要な意味を持つ。(だから)暴力がエスカレートしてもタイ政府が方針を変えて難民受け入れを拡大するとは思わない。タイ政府はミャンマー軍部との友好関係をより深めたいと望むだけだと思う」と述べた。

タイがミャンマーに持つ利害関係は他のASEAN加盟国よりも大きい。2400キロにわたって国境を接するためだ。ミャンマー側から見ても、近隣諸国の中で最も長く国境を接するのがタイだ。

タイは地政学的な位置に加え、歴史的に外交関係には慎重であることもあり、ミャンマーのクーデター発生後もタイ政府はずっと、発信するメッセージには気を使っている。クーデター抗議デモへの弾圧によるミャンマー市民の犠牲者が500人を超えた時点で、ようやく言い回しを少し厳しくした。それでもミャンマー情勢に関するタイ政府の表現は、インドネシアやマレーシア、フィリピン、シンガポールといった、軍部が政権を牛耳ってはいない他のASEAN加盟国に比べると、まだはるかにおとなしい。

一方足元でミャンマー軍は自国で、カイン(カレン)州の少数民族武装勢力の支配地域に空爆を実施。数千人の難民がこれを逃れてタイ側に向かおうとしたことで、タイにとって国境問題のリスクが改めて浮き彫りになった。軍事政権時代のミャンマーからは難民約10万人がタイに逃れ、今もタイで暮らす。これをほうふつする事態だ。タイ政府は今回、難民のタイ入り阻止を否定しているものの、難民らはタイの国境警備隊に入国を阻止されたと不満を述べている。タイの地元政府関係者はある会合で、ミャンマーからの流入を禁じるのはタイ政府の公式な方針だと語ったとされる。

<経済的な結びつきも>

タイにはミャンマー難民を受け入れるよう、またミャンマー軍部にもっと強硬な姿勢を取るよう外国から圧力がかかっているかもしれない。ただカセトサート大のラリタ氏は、それだからと言ってプラユット政権が具体的な行動に出る可能性は低いと話す。「彼らは国際社会の圧力で何らかのちょっとした対応をするだろう。『われわれはあなた方の懸念に十分に応えていますよ』という態度を見せるためだけに、多少の措置を講じるのではないか。だがそれだけのことだ」と切り捨てた。

ミャンマーとタイは経済的な結びつきも強い。タイ企業によるミャンマーへの直接投資額は国別では中国、シンガポールに次ぐ3位。1988年以降では110億ドル余りが承認されている。

19年の両国の貿易額は90億ドルを超え、多くのタイ企業はミャンマーからの出稼ぎ労働者に頼っている。公式な出稼ぎ労働者の数は160万人だ。

タイがミャンマーを必要とする以上に、ミャンマーにとってタイは大事な貿易相手で、19年の輸出額の25%近くをタイ向けが占める。その大半は天然ガスだった。

チュラロンコン大学ASEAN研究センターのピティ・スリサングナム氏によると、タイがその気になればミャンマーとの貿易取引で制裁を発動することができるが、実際にはそうした経済的影響力は行使しそうにない。せいぜい行うとすれば、水面下の外交的なルートを通じて、ミャンマー軍部に暴力の抑制と、拘束するか反逆者呼ばわりしている前政権側の指導者らと対話することを働き掛けることぐらいではないかという。

「長年知っている友人の1人がいて、ある日その友人が殺人者になったとしても、あなたがもう友人づきあいをしないということはないだろう。引き続き友人である限り、せいぜいやることと言ったら、友人と話をして、友人の行いが非常に間違っていると示すことぐらいだ」という。

(Kay Johnson記者 Panarat Thepgumpanat記者)

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