October 23, 2012 / 8:22 AM / 7 years ago

コラム:円安の背景に政治の機能不全、「日本衰退」観測も

田巻 一彦

10月23日、ドル/円が80.02円と約3カ月半ぶりのドル高/円安水準を記録。重要な政策を決めることができない「政治の機能不全」を背景に、「日本衰退」観測もくすぶり出したようだ。都内で2010年9月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 23日 ロイター] ドル/円が23日、80.02円と約3カ月半ぶりのドル高/円安水準を記録した。市場では日銀の追加緩和観測を要因として挙げる声が出ているものの、重要な政策を決めることができない「政治の機能不全」を背景に、日本が成長力を取り戻せないのではないかという「日本衰退」観測もくすぶり出したようだ。

円安を起点にした大幅な円資産のトリプル安の到来は、まだ先との見方が多いだろうが、統治機能の大幅な低下が続けば、予想外に早くマーケットが日本への"警告"を発する可能性もある。

<臨時国会で重要法案審議できないリスク>

円高が日本の輸出企業の国際競争力を削ぎ、日本経済をデフレに陥れているとの声が日本国中に満ちあふれている。与野党を問わず永田町は円高阻止に向けた金融緩和要望の大合唱であり、経団連も円高是正を訴えている。日銀も円高進行に伴う企業や個人のマインド悪化による景気下振れリスクを注視し、このところの追加緩和決定に際しては、直前に円高が進行していたケースが多かった。

この観点で言えば、足元で起きている円安は、日本経済にはフォローのはずだ。だが、どうもマーケットのセンチメントは違った要素に敏感になっている節がある。その核心部分は「政治の機能不全」だ。

国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを引き下げ、米国を除く先進国や主要な新興国で経済のもたつきが表面化しつつあるにもかかわらず、日本の政治は外的環境があたかも今年初めと変わっていないかのように、全く反応しない。「近いうち」に衆院を解散するかしないかで民主党と自民党・公明党が対立し、今月29日に召集される臨時国会では、重要法案が軒並み審議できないリスクに直面している。

<3兆円の貿易赤字、深刻な意味>

短期的には、特例公債法案が未成立で放置されれば、11月末には国庫の資金繰りが窮迫し、行政サービスの一部に明確な支障が出るリスクが高まっている。公的な支出の抑制は、日本国内の需要を減退させ、外需の減速で足元がおぼつかない日本経済の軌道を底割れさせる懸念がある。

しかし、市場の一部でささやかれている懸念は、もっと本質的で深刻な問題だ。22日に発表された2012年度上半期の貿易収支は、過去最大の3兆2190億円の赤字を記録。「貿易立国・ニッポン」という姿が、遠い過去となってしまったことを印象付けた。

<見えない次世代の主力産業、成長力低下を放置する政治>

一部電機メーカーの業績不振に代表されるように、日本の輸出産業は「負け組」に転落した企業が目立ってきた。スポーツチームに例えれば、老いが目立ったかつての主力選手から、進境著しい若手に起用をスイッチするマネージメントの妙が問われる局面だ。

だが、政府が作成した「日本再生戦略」は、イノベーション、エネルギー革命、少子高齢化の克服策という3つの欠かせない重大なポイントを外し、成長力を高める"決定力"に欠けている。新しい主力選手の不在が、長期化しそうな情勢となっている。

<構造変化に鈍感な与野党>

さらに「衆参ねじれ」という国会状況の下で、法案の成立は遅々として進まず、成長力の強化はおろか、足を引っ張る存在としてマーケット参加者に映っている。このままでは「貿易赤字の増大傾向が続き、日本の成長力と国力はますます低下するのではないか」(国内金融機関の関係者)という不安感が、一部で急速に高まっている。

潮目の変化は、気づかないところで起きることが多い。「政治は材料にならない」という声が東京市場では多数派だったが、そう遠くない未来に「機能不全の政治は日本売りの材料」とみなされるのではないか。国力の低下に対し、民主党や自民党の幹部から、何ら発言がないこと自体が、政治の機能不全を象徴していると指摘したい。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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