October 30, 2012 / 3:57 AM / 6 years ago

コラム:華為技術スパイ疑惑、米中問題の複雑さ露呈

先に行われた米大統領選の第3回討論会を見た人は、米中関係をこう理解しただろう。世の中には善人と悪人がいるが、悪人はすべて中国側にいると。米国は高賃金労働の勇敢な擁護者だが、中国は安価なタイヤを製造して米国民を痛めつけていると。米国は世界がうらやむ自由な通貨を持っているが、中国は為替を操作して他国の競争力を阻害していると。しかし、米中関係が抱える問題は、国家間だけにとどまらず、国家と企業の間にも起きている。

10月26日、米下院情報委員会は、中国の通信機器大手メーカー華為技術について、米国の安全保障上の脅威となる恐れがあるとの報告書を公表。米中間に横たわる問題の複雑さを露呈した。写真は同社のロゴ。9日撮影(2012年 ロイター/Darley Shen)

中国の通信機器大手、華為技術は過去何年にもわたり、米国市場への参入を図ってきた。米国でも通信インフラ設備を手掛けたい華為技術に対し、米国側は、同社が本当にスパイ組織ではないか疑いをかけている。華為技術は創業者が中国人民解放軍の出身だが、自分たちもシリコンバレーのハイテク企業と何ら変わらないと主張している。

一方、米情報機関は、スパイ活動に関する具体的証拠は発見していないものの、同社の技術はハッカー攻撃に極めて脆弱(ぜいじゃく)だとみている。米下院情報委員会は華為技術について、米国の安全保障上の脅威となる恐れがあるとの報告書を公表した。中国の国家資本主義とそれがもたらす難題は、米国政府が公式に懸念を表明する段階にまで来ている。

米国政府は華為技術の進出を阻むため、カナダ政府と共同戦線と張っているようだ。カナダのハーパー首相は、自国の対中関係は「複雑」だとした上で、華為技術との取引には安全保障上の側面があると認めている。カナダは政府の通信ネットワーク構築に関し、安全保障上の懸念から華為技術を発注先候補から排除することも検討している。

米国にとってハードルは、華為技術の前進を阻止するための共同戦線を拡大できるかだが、これは一筋縄ではいかないだろう。確かに英国議会も華為技術とブリティッシュ・テレコムの関係を調査しているが、それが必ずしも米国と同じスタンスであることは意味しない。華為技術を名指しする米下院情報委員会の報告書を受け、キャメロン首相は、英国政府と華為技術の関係は変わらないと言明した。華為技術は英国で800人を採用しており、最近実施した20億ドルの投資により、向こう数年でさらに700人の追加雇用を生み出す。華為技術の締め出しを欧州で納得させるのは一段と難しそうだ。華為技術は欧州での売上高が2011年には37億5000万ドルに達し、すでに揺るぎない地位を築いている。景気後退に悩む欧州各国にとって、華為技術は締め出すにはあまりに大きな存在なのだ。

これは世界的な大きな流れでもある。米国の同盟国の多くは、中国からの投資を積極的に受け入れている。英国の外交政策は、中国との貿易拡大に向けて企業の商談獲得に力を入れており、8月に訪中したドイツのメルケル首相も、両国の戦略パートナー関係進化や、経済協力の強化で合意した。

華為技術の問題を通じ、米中関係はより複雑かつ問題含みであることが露呈した。またこの問題は、グローバル化時代の全体像をも照らし出している。自由市場資本主義と国家資本主義の対立は深まっており、今回の例が示すのは、自由市場資本主義にとって、経済国策が最善の防衛線になるということだ。

経済国策は、アジア重視に舵(かじ)を切ったオバマ政権が放つ二の矢でもある。米国はすでに軍事力をアジアに移し始めたが、こうした外交政策の転換を持続可能なものにするには、ソフトパワーも巻き込んでいかなくてはならない。米国は、安全保障の面ではアジアで広く存在感を示している。しかし経済については、アジアでは中国の影響力だけが拡大の一途にある。

中国は、国家資本主義と自由市場経済の衝突は「お互いさま」であることを十分認識している。米国が華為技術の進出を渋る一方、中国はフェイスブック、ツイッター、グーグルの同国進出を阻んでいる。ツイッターとフェイスブックは中国ではアクセスが遮断されており、グーグルは検索結果の検閲をめぐって政府と対立したままだ。中国国内では、彼らと競合する現地企業や彼らを模倣したサービスが成功を収めている。

米国にとって、共同戦線を張れるパートナーの1つは日本だ。私は最近1週間ほど日本に滞在したが、尖閣諸島(中国名・釣魚島)をめぐる問題で世論は反中に大きく傾いている。中国は日本にとって最大の貿易相手国だが、日中関係が早期に修復されると考えている人は私が会った中には1人もいなかった。日本の自動車メーカーは、反日感情の再燃で中国需要が落ち込んだのを受け、成長戦略を見直している。

米国は、経済的国家戦略に磨きをかけ、同盟国や同じ考えを持った自由市場経済国家が中国側になびかないよう働きかける必要がある。米国がうまく立ち回れるかどうかはわれわれには分からないが、その重要性はますます高まっている。

(26日 ロイター)

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*本コラムは筆者ヘのインタビューを基に、個人的見解に基づいて書かれています。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below