October 30, 2012 / 11:02 AM / 7 years ago

焦点:日銀追加緩和の効果に厳しい評価、共同文書が思惑呼ぶ

[東京 30日 ロイター] 日銀が打ち出した追加緩和や貸出支援策の効果に対し、エコノミストの評価は厳しい。市場の期待に精一杯応えようとする努力はうかがえるものの、物価目標の達成や貸出増加を通じた経済活性化は実効性が期待できそうにないとの声が広がっている。

10月30日、日銀が打ち出した追加緩和や貸出支援策の効果に対し、エコノミストの評価は厳しい。写真は日銀本店(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

それよりも市場関係者の関心を引いたのは、「デフレ脱却への取り組み」と題した政府と日銀の共同文書。政府と日銀の事実上のアコード(政策協定)だとして、政府が日銀に一段の追加緩和を迫るとの見方もあるが、逆にデフレ構造を変える自覚を政府に迫るもの、日銀法改正などの圧力をかわすために日銀が政府に手厚い配慮を示したもの、といった解釈も浮上している。

<自他ともに認める緩和「効果期待できず」>

今回の追加緩和策自体は市場の予想の範囲内として、サプライズととらえる声は聞かれなかった。それでも新たに設けた貸出支援策や、デフレ脱却をアピールするための日銀・政府の共同声明も発表し、それなりに努力の余地もうかがえた。ただし、それらが実際にデフレや実体経済の回復につながるとの評価はほとんどない。

資産買入の増額は、もはや追加緩和をアピールするための増額としての意味しかなくなりつつある。実体経済や物価に効果があるわけではないのはもはや周知の事実で、みずほ証券チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は「日銀は景気は弱含みとなっているへと現状判断を下方修正した。だが、今回の追加緩和が景気や物価に対して有する刺激効果は、直接的にはほとんどない」と言い切る。

日銀自身、超低金利下でこれ以上の金利低下が経済を刺激する効果がほとんどないことは認識している。効果があるとすれば、景気状況に合わせて中央銀行がきちんと動くという信頼感、そして企業や市場の間に安心感を醸成するという程度だが、それも重要という立場だ。

<14年度の物価見通しは相当強気>

実効性なき追加緩和を織り込んだところで、1%という物価目標は政策効果では達成できそうにない。今日発表された「展望リポート」では14年度の物価見通しも0.8%の上昇にとどまり、1%には届かない。それでも「着実に1%に近づいていく」と表現した背景には、国際商品市況の上昇や海外経済の持ち直しといった外部要因を前提にしている面が大きい。

エコノミストからはそうした外部要因が実現したとしても、見通しは上方バイアスがかかっているとの見方が目立つ。伊藤忠経済研究所・主任研究員の丸山義正氏は「日銀の14年度のインフレ率見通しは相当に強気なもの。消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動も踏まえれば、14年度のインフレ率は、消費税率引き上げの影響を含まないベースで2013年度よりむしろ低下し、ゼロ近くにとどまる可能性が高い」と指摘する。

白川方明総裁は会見で、木内昇英委員と佐藤健裕委員が、14年度に「1%に近づいていく」との表現に反対したことを明らにした。展望リポートで示された見通しが、必ずしも政策委員の間で共有されたものではないことがうかがえる。

<政府と日銀の共同文書、多様な解釈>

日銀は今回、新たな貸出支援策も打ち出した。貸し出しを増加させた金融機関が、同額の資金供給を受けられる制度で、すでに海外の中央銀行が導入している。ただ、金融機関の貸し出しが伸びないのは資金不足のせいではなく、企業の資金需要が低迷していることが主因であることは、日銀も承知している。こうした新制度をあえて導入した点に、日銀の苦しい立場が透けて見えるというのが、エコノミストのもっぱらの評価だ。

日銀が並べた多種多様なメニューの中で、エコノミストや市場関係者の注目を最も集めたのは、政府と日銀が共同で発表した「デフレ脱却に向けた取り組み」の文書だった。決定会合に出席した前原誠司経済財政担当相は、この共同文書を「政府・日銀の一体的な取り組みがこれにより担保される」として評価。ゴールドマン・サックス証券は「政府と日銀の政策的アコードへの第一歩」と、消費税引き上げに向けて日銀への圧力がますます強まる材料と見ている。

一方で、逆に政府に対する圧力が強まるとの見方もある。RBS証券は「日銀が金融環境を緩和的に維持した上で、政府がデフレを生みやすい経済構造を変革するという、役割分担が明確になった」と指摘。日銀側は十分に役割を果たせていると受け取れる内容だとし、「従来の枠組みを超えた劇薬的な金融政策がとられる可能性は大きく低下した」としている。

第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「日銀側にも思惑がある。外債購入やインフレターゲット総裁の責任論といった厳し内容を盛り込んで日銀法を改正されたくはない。だから、野田首相が率る官邸に対して120%の協力をした」と解釈している。

(ロイターニュース 中川泉;編集 久保信博)

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