November 8, 2012 / 11:12 AM / 6 years ago

アングル:遠のく超円高の再来リスク、金看板「経常黒字国」に向かい風

[東京 8日 ロイター] 9月経常収支が季節調整済で初の赤字を記録したことで、経常黒字国という日本の「金看板」に向かい風が吹いている。経常赤字の定着を予想する声はあまり聞かれないものの、「日本発」の円売り要因が相次いでいることを踏まえ、リスク回避局面でも円高に進みにくくなるとの見方が増えている。

11月8日、9月経常収支が季節調整済で初の赤字を記録したことで、経常黒字国という日本の「金看板」に向かい風が吹いている。昨年8月撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

政府・日銀による過去最大の為替介入から1年、円を取り巻く環境は変わり、短期的にはドル/円が75―76円台という歴史的な円高水準に戻るとみる向きは少ない。

<リスク回避場面でも買われず>

9月の経常収支が季節調整済で初の赤字に転落したことに、三井住友銀行・市場営業統括部の山下えつ子チーフ・エコノミストは驚いた。原燃料の輸入増や輸出不振で貿易収支は赤字定着が見込まれる半面、経常収支は低位ながらも黒字を維持するとの見方が広く共有されてきた。経常黒字国という日本に与えられた「金看板」こそは、為替市場でリスク回避が強まる場面で円が買われやすい理由とされてきた。

しかし、9月の経常赤字でこうした見方が揺さぶられた。「今後ずっと経常赤字が続けば、歴史的に振り返ったときに、ここを境にして為替を取り巻く環境が変わったことになり、円安への歴史的な転換点になる可能性がある」と、山下氏は言う。

市場では、今後も赤字が定着するとみる向きは少ない。アール・ビー・エス証券の西岡純子チーフ・エコノミストは、米国や中国景気の底打ち反転で輸出が減少を続けることは考えにくいため、「経常赤字幅が拡大していくとはみていない」と話す。それでも世界的に金利水準が低く、円高の定着で円建て収支が圧縮される結果、所得収支が伸びにくいなど「経常収支は回復しにくい」と指摘する。

「東日本大震災直後のように、日本のファンダメンタルズに高い評価を与えていた時代は終わっている」――ブラウン・ブラザーズ・ハリマンの村田雅志シニア通貨ストラテジストはこう話す。日本の景気悪化、改善の見通しが立たない財政、貿易赤字の定着、さらには経常収支の悪化と「慢性的な円安要因」(村田氏)が居並ぶ中、米国の「財政の崖」問題でドルが年末にかけて売られやすくなっても、ドル/円がどんどん下がる展開にはなりにくいという。

米大統領選の開票が行われた7日の東京市場では、開票状況が分刻みで伝わり、オバマ大統領の再選が濃厚になるとドル安の流れが強まった。ドル/円はいったん80円を割り込んだが、オバマ氏当選の報道後にクロス円が上昇すると、つれて80円をすぐに回復。同日の米国市場ではダウ工業株30種.DJIが急落し、米金利も急低下したものの、ドル/円の安値は79.75円と水準観を大きく狂わせるような下げにはならなかった。

バークレイズ銀行・トレーディング部の小川統也ディレクターは「今までであれば、7日のような株安/債券高の展開ならドル/円は78円台に入ってもおかしくない。79円後半にとどまったということは、日本の要因もあり、米国の要因だけではドル/円は動かないということを示唆している」と話す。

<歴史的な円高には戻らない>

ドル/円は10月、ソフトバンク(9984.T)による米スプリント・ネクステル(S.N)の大型買収報道を起点に上昇を始め、その後も過去最大の赤字を記録した9月貿易収支、日銀の追加金融緩和、日本国債のリスクに警鐘を鳴らす格付け会社のリポートなど、「日本発」の円売り要因が相次いだ。

オバマ大統領の再選で財政の崖問題がクローズアップされ、ドイツで市場予想を下回る経済指標が相次ぎドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が懸念を示しても、短期的にはドル/円が75―76円台という歴史的な円高水準に戻るとの見方は少なくなってきている。

大手商社の為替市場担当者は11月のドル/円予想レンジを78―82円に設定。米国株式が上がればドル/円の上昇が見込まれるが、日本発の円売り要因が意識されて「上がりだせば上昇ピッチは強くなる」とみている。

<動かないニューマネー、控える輸出の厚い売り>

もっとも、このまま一本調子の円安基調をたどると予想する向きは多くない。ある大手証券会社の社員は「日本人が円キャリーに向かう地合いとは程遠い」と話す。「販売サイドは個人向けに(外貨建ての)大型商品を仕掛けてきているが、ニューマネーが動いているようには見えない。家計が既存の資産に加えて預金から海外資産に移しているというよりは、既存の投信を売る形で乗り換えている側面が強い」と言う。

パナソニック(6752.T)やシャープ(6753.T)といった日本を代表する製造業が巨額の赤字見通しを発表し、海外勢の円売り要因になったが、日本の家計の投資マインドにはマイナスに作用し、家計発の円売りを阻害するものとなっている。

また、輸出企業の厚い売り注文も控えている。業績悪化を反映して輸出勢のドル売り/円買いフローが減少するとの見方も出ているが「輸出企業はドル/円の戻りを待っている。配当、金利収入がたくさんあり、円転しなければならない玉はいろいろある」と、前出の大手商社関係者は話す。

(ロイターニュース 和田崇彦;編集 久保信博)

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