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エネルギー新時代:重電各社を支える火力復権、受注競争激化も
2012年11月16日 / 06:12 / 5年前

エネルギー新時代:重電各社を支える火力復権、受注競争激化も

[東京 16日 ロイター] 原発の代替電源として火力の存在感が増しており、火力発電設備の需要拡大が東芝(6502.T)など国内重電大手の収益を押し上げている。だが、財務悪化に苦しむ国内電力会社が競争入札を導入したことで、海外勢も本腰を入れるなど受注競争は激化しつつある。

11月16日、原発の代替電源として火力の存在感が増しており、火力発電設備の需要拡大が国内重電大手の収益を押し上げている。写真は東京電力品川火力発電所で10月23日撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

脱原発の流れのなか、中期的に火力依存度が高まるのは必至。国内重電大手は価格競争力とCO2抑制技術の両立、安定成長の維持を一段と求められている。

<新設計画は30基以上>

「かつてないほど火力で受注残が積み上がっている」。東芝の久保誠専務は上期決算会見で、火力事業を含む社会インフラ部門の業績上振れ理由をこう説明した。同部門は上期に過去最高益を達成し、通期でも従来予想から売上高で1100億円、営業利益で150億円引き上げた。日立製作所(6501.T)も「火力が増えている」(中村豊明副社長)として、電力システム部門の今期売上高を従来予想に対し300億円、営業利益を40億円増額。中国景気の減速に伴う建設機械の不振などで全体の売上高予想は下方修正したが、火力の下支えにより利益予想は据え置いた。

原発停止が長引くなか、火力需要は旺盛だ。原発優先時代にはCO2排出量が多い火力は敬遠され、国内発電量全体に占める割合は約6割だったが、今や9割まで上昇。重電大手幹部は「需要が生産に追いつかない」と嬉しい悲鳴を上げる。各地で火力増強の動きもあり、国内の新設計画は30基を超える。全国には熱効率の悪い稼働35年以上の老朽化設備も多く、置き換え需要もさらに膨らむ見通しだ。東京電力(9501.T)だけでも運転開始から40年超になる老朽火力が5年以内に出力全体の4割以上を占める。

海外でも大規模停電が起きたインドや石炭埋蔵量の多いインドネシアなどで需要拡大が期待されている。シェールガス開発に沸く米国、脱原発を掲げるドイツでも火力シフトが進み、新設計画が相次ぐ。国際エネルギー機関(IEA)の試算では、世界の火力発電の設備容量は2035年に5628ギガワットと09年比で7割増となる見通し。特に石炭火力は資源量が豊富で原油やLNG(液化天然ガス)より価格が低位安定しているため大幅に需要が伸び、アジアでは2030年に08年比で倍増する見込みだ。

<海外勢も受注に本腰>

ただ競争環境は変化しつつある。火力設備は、電力会社が任意で決めた相手との随意契約が主流だったが、原発停止で火力の燃料費がかさみ収益が悪化した電力会社がコスト低減のため入札に切り替えたのだ。海外勢も受注に本腰を入れ始めた。米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)は設備全体の設計・建設を担当する東芝と組み、9月に発表した「ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)」と呼ぶ最新鋭ガスタービンの受注を中部電力(9502.T)から真っ先に取り付けた。日本では東芝と組んで産業用などの中小型ガスタービンの実績はあったが、今回のような大型は初めて。GTCCを自社開発し、国内で存在感のある三菱重工業(7011.T)が有力視されていただけに「ちょっとした驚きだった」(重電大手関係者)。

決め手となったのは燃料費に直結する発電効率と入札価格。GE製品は発電効率が62%と世界最高水準で、同社によると、三菱重製品より1ポイント程度上回る。燃料費は相場により変動するが、20年稼働した場合、1ポイントの差が「累計で数百億円の違いにつながる」(同)。受注額は非公表だが「これまでの相場より2割以上安かった」(同)ことも評価されたとみられている。

GEと並ぶガスタービン大手のシーメンスも富士電機(6504.T)と組み、沖縄電力(9511.T)から同社初のGTCCによるLNG火力設備を受注した。シーメンスは入札導入を「透明性が高まる」(広報)と歓迎しており、火力発電設備に加え、3年以内には送電ロスの少ない高圧直流型送電設備の受注を目指すなど、日本での本格的なシェア拡大を狙う。

<価格と性能のバランス>

受注競争に勝つためには「価格と性能のバランスが今まで以上に求められる」と日立電力システム社の藤谷康男・火力担当CEOは話す。同社は6月、老朽化した発電設備が多い欧米で強固な販売網を持つドイツの保守サービス会社の買収を決めた。利益率が高いメンテナンス事業を拡大して収益力を強化すれば、価格引き下げ余力も高まる。また、高温高圧による発電で効率を高めCO2排出量を下げる「超々臨界圧技術」を武器に韓国でも受注に成功するなど、技術力では「圧倒的に世界でリードしている」(藤谷氏)と自負する。東北大学と共同で石炭火力のCO2排出削減技術の開発を進めるなど種蒔きにも余念がない。

三菱重も海外調達拡大による資材費圧縮を進め、海外を中心にプラント修理など保守サービス事業も拡大させ、原動機部門の今期営業利益予想を従来から150億円上乗せした。世界のガスタービン市場で約15―20%のシェアを握る3位の同社は、技術力と収益力を強化し、GEとシーメンスの2強と肩を並べられるシェア30%以上の獲得を目指す。

原子力事業については各社とも基本的なスタンスは変えていない。ある重電大手幹部は「政府の方針が決まらず、どの電源にも肩入れできない」と本音を漏らす。政権が変わったとしても安全性や世論の観点から原発依存度は下げざるを得ない。再生可能エネルギーも直ちに大量の需要を代替することは困難で、現実的に頼れるのは火力だけ。福島第一事故で海外でも原発建設のハードルは高まっており、少なくとも短期的には重電各社の火力強化が進む可能性がある。

これまで国内重電大手は電力会社と一体となって研究開発や発電設備の建設・保守を手掛け、世界トップクラスの技術力を培ってきた。だが、GE、シーメンスはもとより、中国企業も技術で猛追しており、その距離は縮まっている。原発事故で思わぬ需要拡大が生じた火力発電で、環境対応技術や価格競争力を一段と高められれば「世界でも勝ち抜いていく可能性が高まる」(業界アナリスト)との声も聞かれている。

(ロイターニュース 白木真紀;編集 大林優香 宮崎大)

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