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安倍首相誕生織り込み円安・株高、海外経済厳しく「胸突き八丁」
2012年11月16日 / 06:27 / 5年後

安倍首相誕生織り込み円安・株高、海外経済厳しく「胸突き八丁」

[東京 16日 ロイター] マーケットは早くも自民党の安倍晋三首相誕生を織り込み、円安・株高が進んでいる。安倍氏が掲げる積極的な金融緩和や財政出動などへの期待が先行している格好だ。

11月16日、マーケットは早くも自民党の安倍晋三首相誕生を織り込み、円安・株高が進んでいる。安倍氏が掲げる積極的な金融緩和や財政出動などへの期待が先行している格好だ。写真は今月15日撮影(2012年 ロイター/Yuriko Nakao)

ただ、肝心の選挙はこれからで、政策の実現性には疑問もあるほか、海外経済の厳しさは一段と増している。ドル/円や日本株は「胸突き八丁」の正念場に差し掛かっているとの見方も多い。

<円安次第の株高>

日経平均.N225は16日前場までに、この2日間で約350円上昇。取引時間中としては1週間半ぶりに9000円を回復した。一方、過去2日間で米ダウ.DJIは1.6%下落、FTSEユーロファースト300種指数.FTEU3は1.8%下落、上海総合指数.SSECも16日前場までに2%下落しており、日本株は連日の逆行高となっている。

野田佳彦首相が14日の党首討論で16日の衆院解散を明言したことで、支持率が現時点で最も高い自民党の安倍総裁が次期首相になるとの見方が強まり、積極的な金融緩和を求める姿勢などを手掛かりに円安が進行。出遅れ感の強かった日本株に買い戻しが加速している格好だ。「海外勢だけでなく国内勢の買い戻しも入っている」(大手証券トレーダー)とされ、午前の東証1部売買代金は7035億円と膨らみ、先高期待も出てきた。

ただ、セクター間の動きをみる限り、ポジション調整の範囲を出ていないことも確かだ。16日前場の市場ではオリエンタルランド(4661.T)や、ディー・エヌ・エー(2432.T)、グリー(3632.T)など好業績株や高パフォーマンス銘柄が売られる一方、パナソニック(6752.T)やソニー(6758.T)、キヤノン(7751.T)などこれまでさえなかった輸出株が上昇。ディフェンシブ銘柄から景気敏感株へのシフトが加速している。

これらディフェンシブ企業の業績見通しが悪化したわけではなく、円安進行をきっかけに、海外勢などが輸出株売り・内需株買いのポジションを巻き戻していることがマネーシフトの背景とみられている。「積極的に日本が変わると考えて買っている向きも一部にはいるだろうが、弱気なポジションを取っていた投資家が巻き戻していることが、株価上昇の背景にある」(大和住銀投信投資顧問・経済調査部長の門司総一郎氏)という。

円安以外に輸出企業の業績改善が期待できる材料が出ているわけではなく、円安が止まれば日本株の上昇も止まるという「円安次第の日本株高」(国内証券)であり、「日経9000円付近では、国内年金や公的資金系などの売りが出てきやすい。ここからが正念場だ」(東洋証券・情報部長の大塚竜太氏)との見方も多い。

ドル/円は前日の海外市場で81.46円まで上昇して4月25日以来の高値を付けたが、一服感も出始めてきている。バークレイズ銀行のチーフFXストラテジスト、山本雅文氏はドル/円について「目先は日銀法改正、白川総裁早期退任観測やネガティブ金利政策といった極端な材料までこなしつつ上昇していることから、これ以上期待が膨らむ可能性は低そうだ」との見方を示している。

<円債市場にはネガティブ要因も>

また、安倍総裁が掲げる政策が実現するかどうかもまだわからない。12月16日と想定されている総選挙までには1カ月あり、どのような政権が樹立されるかは未知数だ。

りそな銀行のチーフマーケットストラテジスト、黒瀬浩一氏は「市場では選挙の争点が為替相場のように思われているが、実際には自民党の原発推進政策、公共投資拡大などが争点だろう。本当に国民がこのような政策を受け入れるのか。市場が期待しているほど自民党の票が伸びない可能性もある」と指摘する。

さらに円債市場では、安倍総裁が掲げる政策のネガティブな影響を懸念する声もある。安倍総裁が15日の講演で、日銀はゼロかマイナス金利にするぐらいにして貸出を高めてもらいたいと発言したことで、現時点では超過準備の付利引き下げへの思惑が高まり、株高にもかかわらず円債先物は上昇している。しかし、「インフレ目標や、財政拡張による景気刺激、デフレが継続した場合の消費増税延期といった安倍氏の発言をみれば、債券売りの材料も多く隠れていることには十分に留意すべき」(みずほ証券マーケットエコノミストの河上淳氏)との懸念も強まっている。

<米個人消費に懸念も>

独歩高を続ける日本株をよそに、海外株は依然軟調だ。米国の「財政の崖」への懸念が続いており、海外勢は「淡々とリスクオフを進めている」(米系証券)という。国内材料が一巡すれば、日本株が利益確定売りの対象にされる可能性もある。

米株上昇の象徴的な存在だった米アップル(AAPL.O)の株価は、15日終値で525ドルまで下落し、今年2月27日の水準まで落ち込んだ。上場来高値705ドルを付けた9月21日から、3カ月足らずで25%の急落となっている。

また米小売り最大手ウォルマート・ストアーズ(WMT.N)が15日発表した第3・四半期(8─10月)決算は、売上高が予想を下回り、同社株は3%を超える値下がりとなった。同社のホーリー最高財務責任者(CFO)は「現在のマクロ経済状況が消費者を圧迫している」と指摘。米国経済の回復を支えていた個人消費にも懸念が出始めている。

米国の政府債務は約16兆ドル、州の債務も4兆ドルある。「財政の崖」がたとえ回避されたとしても、20兆ドル(1ドル81円で1620兆円)にのぼる「借金」が消えるわけではない。いずれ財政再建に取り組まなければならないことには変わらず、T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏は米株安の背景について「財政緊縮による景気減速を織り込み始めているのではないか」と分析している。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 山川薫)

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