November 20, 2012 / 5:52 AM / in 7 years

焦点:地上侵攻の先にある「苦悩」、イスラエルにジレンマ

[エルサレム 19日 ロイター] イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの空爆が続く中、イスラエルが地上侵攻に踏み切ったとしても、ハマスとの衝突で生じている問題の長期的な解決策にはならないとみられる。イスラエルは地上軍を派遣する前に、侵攻がもたらす可能性について熟考する必要がある。

11月19日、イスラエルがガザの地上侵攻に踏み切ったとしても、ハマスとの衝突で生じている問題の長期的な解決策にはならないとみられる。写真はガザ境界に配置されたイスラエル軍の戦車部隊。17日撮影(2012年 ロイター/Ronen Zvulun)

ガザ空爆についてイスラエルは、同国へのロケット弾攻撃の阻止に必要な措置だとしている。しかし、人口が密集するガザへの攻撃は、軍事的にも外交的にも逆効果となる可能性もある。このことから、半分でも納得のいく合意をハマスから引き出せれば、ネタニヤフ首相は停戦を受け入れるだろう。

同国の外務・国防委員会のEinat Wilf議員はロイターに対し、「最終的な解決策が存在すると考えたことはない」と語った上で、「少なくともハマスが攻撃を中止するなど、理想的でなくても合理的な解決法にたどり着く可能性があれば、政府はそれを受け入れる」との考えを示した。

イスラエルと周辺地域にいつの日か平和が訪れるという「夢」は失われて久しく、イスラエル国民の大半は、国益を守るため同国軍が定期的に戦争を展開する必要があると考えているようにみえる。

イスラエルは2005年、ガザから軍部隊を撤退させ、入植地を撤去した。しかし、イスラエルの存在を認めない過激派による砲撃は続き、2008─09年に3週間にわたるガザへの大規模攻撃を実施。パレスチナ側の死者は民間人が大半を占める1400人以上に達した。一時的な攻撃中止はあったが、その後もガザからイスラエルへの砲撃は再開されている。

<ガザを「平坦化」>

19日までにイスラエル軍がガザで行った空爆は1350回に上る。犠牲者は約100人に達し、半数以上が民間人だ。

ネタニヤフ首相の支持者には、今こそガザを攻撃してハマスを排除する時だと主張する人物もいる。首相率いる右派リクードに所属するダニー・ダノン議員は「小規模な攻撃を続けて時間を稼ぐことも可能だが、いずれはハマス体制倒壊という最大の問題に取り組まなければならない」と強調。選挙を先送りにし、ハマス打倒を優先すべきだと述べた。また、シャロン元首相の息子でコラムニストのギラード・シャロン氏は、19日付のエルサレム・ポスト紙で「ガザ地区をすべて平坦化すべき」との強硬論を展開した。

もちろん、こうした提案をする軍事・情報当局者はおらず、彼らは軍事攻撃だけでガザの過激派を阻止することはできないと理解している。

イスラエル戦略担当省のYosef Kuperwasser氏は先月、記者団に対し「万一の場合にはガザでの攻撃拡大も可能だ。しかし、本質的な問題解決にはつながらない」と指摘。「テロリストを生み出す憎悪の植え付けという大きく深い問題がある」と述べた。

<エジプトとイラン>

ネタニヤフ首相はガザだけでなく、エジプトとの将来的な外交関係や、核兵器開発疑惑を抱えるイランに与える影響も考慮して戦略を練る必要がある。

エジプトでは昨年、イスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ大統領が選出された。これまでの間、同国とイスラエルが1979年に締結した平和条約は固守されているが、ガザ侵攻によって情勢が変化する可能性もある。

一方、イランにとって中東情勢の緊迫化は恩恵につながる。同国の核兵器開発を警戒するネタニヤフ首相は、武力行使も辞さない構えを示している。イスラエルのヘルズリヤにある学際センター(IDC)のイラン専門家Meir Javedanfar氏は、「イスラエルのガザ地上侵攻はイランにとって大きな関心事」と述べ、その理由を国際社会でのイスラエルの地位が大きく損なわれるためだと説明。「ハマスとイランの戦争でイスラエルが勝利すべき分野は、(軍事力などの)『ハードパワー』でなく(政治的価値観などで影響力を行使する)『ソフトパワー』だ」との考えを示した。

国連総会では今月、パレスチナの資格を現在の「組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案の採択が行われる。しかしイスラエルは強く反発しており、ガザ攻撃の展開にかかわらず、新たな和平交渉が実現するには長い時間がかかりそうだ。

イスラエルとパレスチナの間で行われた前回の直接交渉は、イスラエルによる占領地の入植活動をめぐって2010年に決裂した。

前出のWilf議員は、「交渉というのは、合意に至る可能性が高い場合にのみ行われるべき」と指摘。「問題解決に近づいているとは全く考えられない」と語った。

(ロイター日本語サービス 原文執筆:Crispian Balmer、翻訳:本田ももこ、編集:橋本俊樹)

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