December 11, 2012 / 8:52 AM / 5 years ago

コラム:米国での出生率低下、その脅威とジレンマ

[ニューヨーク 6日 ロイター] 不安か共感か。社会的変化の触媒としてより強力に働くのはどちらだろうか。富裕国や中所得国で暮らす女性たちは間もなく、この問題を試す社会実験に参加することになるだろう。世界の多くの場所で出生率が低下しているからだ。

12月6日、米国の出生率が過去最低に落ち込んだことが明らかになった今、この脅威に対し、集団的解決策を見つけることが必要になってくるだろう。写真は11月、ニューヨークで撮影(2012年 ロイター/Mike Segar)

人口動態はほどなく、政治の最優先課題に駆け上がることになるはずだ。そこでは、女性、母親、経済について、これまでとはまったく違う新しい考え方が求められる。

そうした変化の要因の1つは、言うなれば米国で生まれた。なぜなら米国はこれまで長い間、西欧やロシア、中国などでの出生率低下を第三者的に眺めてきたからだ。元気で精力的な米国は、人口減少の傾向に逆らってきた。

しかし先週、2011年の米国の出生率が過去最低に落ち込んだことが明らかになった。女性1000人当たりの出生数を示す総出生率は4年連続で下がり、63.2となった。

重要なのは、これまで米国の人口増を支えていた移民女性の出生率低下が顕著なことだ。調査機関ピュー・リサーチ・センターの分析では、米国で生まれた女性の出生率は2007─10年に6%低下した。移民女性に限ると14%の低下となっており、特にメキシコ系移民では23%の落ち込みだ。

これは米国にとっては大きな変化だ。女性1人が生涯に産む子どもの推定人数を表す合計特殊出生率は昨年は1.89となり、他の先進国の水準に一歩近づいたことになる。

シンガポール公務員研修大学(CSC)のジョエル・コトキン氏が最近行った調査では、米国の合計特殊出生率は、ギリシャの1.54、イタリアの1.48、スペインの1.5など、欧州の水準にじわじわと近づいている。日本やシンガポールなどアジアの富裕国では、出生率の低下はさらに急激だ。またベトナムが1.89、ブラジルが1.9になるなど、中所得国や貧困国の多くでも、人口減少が起こるとされる水準(人口置換水準)の2.1を下回るところまで出生率は下がっている。

こうした数字、とりわけ米国の最近の低下は、文化的悲嘆の大合唱を招いている。例えばコトキン氏は出生率の低下について、地域社会や自己犠牲といった伝統的な価値観より自由や個人の幸福などを重んじる新たな社会組織の形態───「ポスト家族主義」の中心的特徴だとみている。

こうした文化的批判の多くは偶然ではなく男性によるものだが、出生率低下の核心部分を見落としている。それは他でもなく、女性の意思によるものという点だ。出生率が低下している国では、女性は3つの決定的な事実に直面しているのだ。

まず第1に、女性は自分たちの妊娠出産について、歴史上かつてないほどの力を手に入れている。第2に、かつて子育て支援の役割を担っていた家族や地域社会の強い絆は、産業化や都市化によって断ち切られている。第3に、女性を取り囲む経済状況は大きく変わっている。出生率が低下している国に住む女性は、出生率が高かった前の世代や、今も高水準を維持している国の女性に比べ、裕福な傾向にある。しかし、こうした変化は、中高所得国の中階級女性の生活を特徴づけるいくつかの重要な点を覆い隠している。

彼女たちは、中流階級としての家族の生活を守るために働く必要があり、かつてないほど仕事をしている。また彼女たちが暮らす社会では、自分たちの子どもの将来を安泰にするためには、多大な時間と金を投じることが求められる。

そして特に欧州と米国では過去10年、とりわけリセッション入りしてからは間違いなく、世帯収入はおそらく頭打ちか、わずかに増えただけだ。

しかし多くの女性にとって、子どもは最も喜ばしく、最も贅沢な消費財というのが真実だ(私自身も3児の母親であることを打ち明けておこう)。彼らは時間的にも金銭的にも高くつくため、中高所得社会では少なからぬ寂しさとともに、欲しいだけの子どもを持つ余裕がないとあきらめる女性が増えている。

ここに不安と共感の問題が持ち上がってくる。過去数十年、フェミニストたちは、女性が母親であり現代社会の参加者であるための方策を求めてきた。しかし、それはしばしば「女性問題」として片付けられてきた。

女性たちは今、自分たちの子宮で意思表明しているのだ。我々は間もなく、我々の社会の将来が、そして人類の未来が、この窮状への集団的解決策を見つけることにかかっていると気付き始めるだろう。

*著者クリスティア・フリーランドは、トムソン・ロイター・デジタルの編集者。前職では英フィナンシャル・タイムズの米国編集責任者などを歴任。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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