December 14, 2012 / 2:11 AM / 7 years ago

インタビュー:日銀は極端な国債購入拡大回避を=伊藤・東大大学院教授

[東京 14日 ロイター] 東京大学大学院教授・公共政策大学院院長の伊藤隆敏氏は、日銀が次期政権とインフレターゲット導入で合意した場合、その達成のための手段は日銀自身が考えるものであると同時に、達成責任は日銀が負うことを意味する、とした。

12月14日、東京大学大学院教授の伊藤隆敏氏は、日銀が次期政権とインフレターゲット導入で合意した場合、その達成のための手段は日銀自身が考えるものであると同時に、達成責任は日銀が負うことを意味する、とした。5月撮影(2012年 ロイター/Toru Hanai)

ただし金融緩和手段として、日銀はすでに相当規模の国債を買い入れており、極端な国債購入に偏るのは財政ファイナンスの視点から望ましくないと指摘。現行日銀法の範囲内で可能な、国際協力目的の外債購入などを活用すべきとの考えを示した。ロイターのインタビューで語った。

<インフレターゲット、日銀に手段選択権限と達成責任>

総選挙で自民党主体の政権が誕生した場合、安倍晋三総裁の主張するように、日銀と政府がインフレターゲット導入で合意する可能性がある。伊藤氏は「インフレターゲットのフレーム導入に政府と日銀が合意するのであれば、手段は日銀にゆだねられる。その代わり、目標達成の責任も日銀に生じるということを承知したということになる。その点はしっかり認識しておくべき」との見解を示した。日銀にとっては手段の自由は確保されるものの、これまでと異なり物価上昇の達成への取り組み強化を迫られることになるというものだ。

目標達成に最も効果があるやり方について、一時的な減税やマネー供給拡大など財政・金融政策の同時発動が必要との考えを示した。同氏は「現在はデフレスパイラルの状態に陥っている。物価が下落しているので、賃金は下がり、投資も増えないため、成長率も上がらない。そのためデフレ予想から脱却できず、物価が下落するという悪循環になっている。このどこかを断ち切るのではなく、全てを同時に断ち切る必要がある。そのためには、財政・金融政策を両方同時に強化しなければならない」と述べた。

具体的には「例えば期限付きの減税措置や一時的な財政拡大といった手段もある」と指摘。財政支出の時限的拡大措置を挙げたほか、「マネーの供給もその一部としてあるだろう。国民がデフレから脱却できると思うようになることが必要だ」として、日銀の金融緩和強化に言及した。

<国債大規模買い入れは危険、法改正なしに外債購入が可能>

ただしマネー供給の方法として伊藤氏は、極端な国債買い入れ額の拡大には懸念を示した。日銀は現在、年間21.6兆円の長期国債買い入れに加えて、資産買入基金で13年末まで長期国債39兆円の買い入れ枠を設けて、買い入れを実施している。

伊藤氏はこうした状況について「すでに日銀は相当規模の国債を買い入れており、満期構成は違うものの、金額上は国債の新規発行額とほぼ同額を買い入れている」と指摘。財政ファインナンスの懸念を誘う規模との認識を示した。

そのうえで「ほかに購入できるリスク資産があれば、国債だけ極端に買い入れ額を増やさないことが望ましい」と述べた。

伊藤氏は、市場規模が小さく、買入余地が少ない資産でも、市場規模拡大をはかり、買い入れ額を増やすことが可能な例として上場投資信託(ETF)を挙げた。

また、外債購入についても外為法の改正なしに日銀が実施できる方法として「日銀法40条3項により、国際協力を目的に購入が可能だ。欧州危機対応への協力として例えばスペイン国債を購入することも可能だ」と指摘した。

財政支出の拡大に関して、自民党は大規模な公共工事を掲げているが、こうしたインフラの維持管理費が将来の大きな負担になるとの批判もある。伊藤氏は「誰も新たなインフラ投資を大規模にやるとは考えていないはずだ。老朽設備の更新投資のことを言っている」として、自民党が政権を担ったとしても、新規のインフラ投資には慎重であるべきとの見解を示した。

<デフレ脱却しても賃金上昇には時間かかる>

ただ、日本経済がデフレを脱却しても、企業が賃金を引き上げなければ、本格的な消費拡大や景気回復に至らない懸念がある。過去を振り返っても、企業業績の好調時には企業は配当を優先し、賃金、特に正社員の給与は右肩下がりが続いてきた。

伊藤氏は「人材によって賃金が上がるはずだ。景気がよくなれば賃金も後からついてくる」としながらも「雇用・賃金は遅行指標なので時間はかかる」との見方を示した。「小泉改革の際には、格差は拡大したとはいえ、規制改革などで景気は上向きだった。もう少し長く改革が続けば、雇用・賃金に波及していたはず」として、デフレ脱却後においても、すぐに雇用・賃金に波及することは難しいとの見通しを示した。

(ロイターニュース 中川泉、アントニー・スロドコフスキー;編集 石田仁志)

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