January 16, 2013 / 9:37 AM / 7 years ago

コラム:アベノミクス成功のカギは「外交力」

田巻 一彦

1月16日、経済減速の下で日本がアベノミクスを起動させ、円安を起点に輸出ドライブをかければ、米欧はじめ諸外国から「近隣窮乏化政策」との批判を受けるリスクが高まるだろう。写真は安倍首相。都内で先月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 16日 ロイター] 世界銀行が2013年世界経済の成長率見通しを3.0%から2.4%に引き下げたが、このような経済減速の下で日本がアベノミクスを起動させ、円安を起点に輸出ドライブをかければ、米欧はじめ諸外国から「近隣窮乏化政策」との批判を受けるリスクが高まるだろう。

言い換えればアベノミクスがうまく成果を出すための条件として、諸外国の不満を噴出させない「外交力」が求められる。特に米国から円安政策を批判され、外為市場に疑心暗鬼が広がれば、円安/株高でロケットスタートを目論む安倍晋三首相の政権戦略にも大きな影響を与えかねないと指摘したい。

<円反騰し88円前半、甘利・石破発言が背景に>

16日の市場では、自民党の石破茂幹事長の発言が話題になった。16日朝の経団連との会合で、石破幹事長は、昨年末に適度なドル円相場は85―90円くらいとの認識を示した主旨について、輸出産業は100円がいいというところもあるが、たとえば農業では燃料・肥料・餌代などが高騰するため産業によっては円安が好ましくないところもあるとし、どの辺りの水準がおさめどころかを考えなければならないという意味で発言したと説明した。

甘利明経済再生担当相が15日、過剰な円安傾向に警戒感を示しており、政府・与党が円安の天井について意識し始めたのではないか、との思惑が外為市場で浮上。一部の市場関係者には90円が当面の上限との思惑が出ていたという。また、ユーロ圏財務相会合のユンケル議長が15日にユーロ高に警戒感を示したことも、円安の進展を阻む要因として意識された。

<円安止まると株も調整売り>

ポジション調整のドル売り/円買いで88円前半までドル/円は水準を切り下げ、日経平均.N225が前日比270円を超す下落にもつながった。多くの市場関係者は、ここまでの一方向の円安/株高局面における調整に過ぎないと見ているが、円安が止まると株高も止まるというアベノミクス効果の構造的な特徴も露呈したと言えるだろう。

アベノミクスの大きな特徴の1つは、日銀の積極的な金融緩和によって、米連邦準備理事会(FRB)よりも緩和姿勢が積極的であることを市場にアピールし、円高圧力のかかりやすかった外為市場で円安バイアスを強め、輸出系企業の業績を後押し。これにより株価の押し上げを図り、閉塞的な心理状況を変えるという戦術だ。

<世銀が今年の世界経済見通しを下方修正、動き出した円安批判>

単純化すれば、円安─輸出振興で日本経済に活気を取り戻す作戦とみられるが、世界経済が減速する中で、この戦術を強引に展開すれば、米欧諸国からの反発を招く可能性がある。実際、世界銀行は15日、最新の「世界経済展望」で2013年の経済見通しを昨年6月時点の3.0%から2.4%に下方修正した。先進国では米国が1.9%と相対的に高い伸びとなるが、それでも2%を割り込む水準に低迷。ユーロ圏はマイナス0.1%、日本は0.8%と振るわない予想になっている。

円安を起点にした輸出強化の政策対応は、米欧をはじめ他の輸出競争国から、かなりの脅威として意識される可能性がある。米セントルイス地区連銀のブラード総裁は今月10日、日本がより明白な為替政策を取っているようで、私は困惑していると発言。名指しはしなかったものの、通貨安政策は近隣窮乏化政策であり、好ましい結果をもたらさないとの見解も示した。

<当面の焦点はルー次期米財務長官の為替発言>

このように円安を推し進める政策は、米欧から批判を受けるリスクがある。そこを大きな波風を立てずに乗り切る「外交力」が安倍政権にあるのかどうかが、アベノミクスの行方を大きく左右することになるだろう。

特に米国から名指しで円安誘導と批判されるような展開になれば、外為市場のムードはガラリと変化し、円買いの圧力が再び、力を増してくる可能性も否定できない。オバマ米大統領から次期財務長官に指名されたルー氏が、どのような為替政策のスタンスを表明するのか──。この点が、より重要になってくると予想する。

もし、米国が円安批判を大々的に展開するようなことになれば、アベノミクスは仕切り直しを求められ、参院選に向けて経済面でロケットスタートを切るという政権戦略も大幅な手直しを迫られることになると指摘したい。次期日銀総裁には、国際社会へのメッセージ力を求めているようだが、安倍首相と閣僚こそ、円安で後ろ指を差されない国際的なメッセージ力が要求されると考える。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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