January 22, 2013 / 10:07 AM / 6 years ago

アングル:円安はひとまず材料出尽くし、「通貨外交」の本気度は

[東京 22日 ロイター] 日銀の追加緩和決定を受けて、ドル/円はひとまず材料出尽くしとなったが、下値不安を口にする市場参加者は少ない。2月下旬にも提示される見込みの日銀正副総裁人事が、相場をけん引してきた海外勢の「期待」をつなぐ可能性が高いためだ。

1月22日、日銀の追加緩和決定を受けて、ドル/円はひとまず材料出尽くしとなった。円安誘導として海外からの批判も高まるなか、通貨外交に対する安倍政権の本気度が試される。写真は2010年、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

ただ、ここからの円安推進は容易ではない。「円安誘導」として海外からの批判も高まるなか、通貨外交に対する安倍政権の本気度が試される。

<キーワードは「無期限」>

日銀が物価目標2%の導入と、無期限の資産買い入れを発表すると、ドル/円は89.65円付近から90.18円まで急伸した。その後、材料出尽くしから短期筋の利食い売りに「にわかショート」(外銀)も加わり、89円を割り込んでいるが、買い戻しも入り、大きく下押しするまでには至っていない。

キーワードは「無期限」──。みずほ証券チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏は、今回の決定について「『無期限(無制限)緩和』、『オープンエンド』といった言い回しを前面に出すことによって、米連邦準備理事会(FRB)と比べてそん色のない金融緩和を日銀が行っているというイメージを海外の市場参加者に抱いてもらい、円安・ドル高方向への動きを促したいのだろう」と指摘する。日銀総裁・副総裁人事案の提示あたりまでは、小さな調整局面を何度か経つつも、昨年11月半ばに始まった円安・株高の大きな流れ自体は維持される可能性が高いとみる。

<出始めた海外の批判>

しかし、この先もこれまでのように一本調子で円安が進むかどうかは不透明感も強まっている。1ドル90円付近までは「円高修正」という名目も立ったが、ここから先は「露骨な円安誘導」と見なされる可能性があるためだ。

実際、海外からは日本の「円安政策」に批判が強まってきた。米セントルイス連銀のブラード総裁は10日、「日本がより露骨な為替政策を取っているようで、私は少々困惑している」と発言。欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのバイトマン独連銀総裁も21日、日本政府が日銀にさらなる金融緩和を迫ったことは、ハンガリー政府の同国中銀に対する行為と同様、日銀の独立性を危険にさらしていると指摘した上で「意図しようがしまいが結果的に為替レートの問題がますます政治問題化する可能性がある」と警鐘を鳴らした。

米産業界からも声が上がっている。米自動車大手3社(ビッグスリー)で構成する米自動車政策会議(AAPC)のマット・ブラント会長は声明で「再び政権を奪還した自民党は『近隣窮乏化政策』を復活させるつもりだ。日本経済の回復支援に向け、貿易相手国を犠牲にし、円安を通じ貿易をゆがめようとしている」として安倍政権を批判した。

これに対し、日本政府は「過度な円高が是正されている段階」との認識で一致。中尾武彦財務官は14日、「新政権に通貨の切り下げ競争をする意思はない」と語り、円の下落は「それまでの行き過ぎた上昇の調整」と理解を求めた。

しかし市場では、「内需主体での経済拡大シナリオを諸外国に示す」(シティバンク銀行チーフFXストラテジスト、高島修氏)ことができなければ、この先「近隣窮乏化政策」と受け取られる可能性は否定できないとの見方も多い。

<どこからが円安誘導か>

どこまでが円高修正で、どこからが円安誘導なのか──。シティバンク銀行の高島氏は国際通貨基金(IMF)が昨年8月に公表した日本経済に関する年次報告書で、円は過大評価されていると指摘したことに言及し、「報告書では円の実質為替相場は10%前後の過大評価との認識が示されたが、これを名目為替レートに引き直せば、15─20%程度の円安は適正水準への回帰と見なされ得る」として、「ドル/円で言えば、95円前後がひとつの目安」との見方を示した。

一方、みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏は「国際決済銀行(BIS)が公表している実質実効為替レートをみると、円は1980年以降の長期平均と比べて、やや割安の方向にバリュエーションが変わってきている」と指摘、すでに微妙な水準にあるとの見方を示している。

多少の違いこそあれ、ドル/円は90円から上の水準では「雑音が多くなってくる」(邦銀)のは間違いなさそうだ。唐鎌氏は「今までは円高修正だと言えていたのが、ここから先は円安を推進していると映る可能性がある。実際、前週くらいから海外からの声も目立ち始めた。この先は政治の問題に焦点が移っていきそうだ」と指摘する。

政策オプションが限られてきたなかで、数少ない景気・物価押し上げチャネルが円安だ。円高修正から円安誘導へと海外の受け止め方が変わりつつあるなか、これからデビューする国際舞台でいかに「批判」を封じ込めていくのか、「円安」に対する安倍首相の覚悟が問われている。

(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)

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