February 4, 2013 / 1:32 AM / in 7 years

焦点:深刻化する中国の大気汚染、背景に複雑な政治力学

[北京 3日 ロイター] 中国の首都、北京を覆う深刻な大気汚染。悪化する大気汚染の背景には、環境基準の強化に抵抗する国営企業2社、中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油(シノペック)の存在が浮かび上がっている。

2月3日、北京を覆う深刻な大気汚染の背景には、環境基準の強化に抵抗する国営企業2社、中国石油天然ガス集団(CNPC)と中国石油(シノペック)の存在が浮かび上がっている。写真は北京市内で1月撮影(2013年 ロイター/Jason Lee)

同国の環境保護省と2社の間ではお役所的なやりとりが行われるだけで、大気汚染の主因とされる自動車用ディーゼル燃料の環境基準強化は遅々として進んでいない。もちろん大気汚染の原因は他にも多く考えられるが、この2社がなかなか腰を上げない上、環境基準に無関心であることが、権限のさほど強くない環境保護省が直面する試練を浮き彫りにしているとアナリストらは指摘する。

大気汚染に対する国民の怒りは高まる一方、経済成長を最優先してきた中国では、国営企業が省庁より力を持ってきた経緯もあり、習近平氏率いる新政権が強大な既得権益に毅然とした態度で臨めるかには疑問も残る。

「共産党の新指導部は、CNPCやシノペックをの力を弱める必要がある」。国家行政学院の汪玉凱教授は、2社の力が強大になり過ぎたと指摘している。

環境基準強化の遅れは、費用の問題に起因する。つまり、クリーンな燃料への移行費用は誰が負担するかということだ。スコットランドのダンディー大学でエネルギー経済学を専門とするXiaoyi Mu氏によると、クリーンなディーゼル燃料を供給するためには、石油企業は硫黄分の除去費用として数十億ドルを投じる必要がある。

CNPCの子会社であるペトロチャイナ(0857.HK)はロイターに宛てた声明の中で、2012年に同社が生産した自動車用ディーゼル燃料は全て中国の環境基準を満たしており、「燃料品質の改善にも取り組んでいる」と回答。

シノペックからはコメントを得られていないが、新華社が先週報じたところによると、同社の傅成玉会長は石油会社が大気汚染の責任の一端を担っていることを認める一方で、燃料が基準を満たしていないのではなく、基準そのものが不十分なのだと述べた。

<複雑な力関係>

大気汚染問題をめぐる国営企業と省庁の綱引きは何年にもわたって続いている。環境基準の強化が何度も遅れていることに業を煮やした環境保護省の張力軍次官は、2011年後半にCNPCとシノペックの幹部らとの会議を開き、これ以上は基準の強化を遅らせるつもりはないと明言した。

この会議に同席した自動車排ガスコントロールセンターの湯大網センター長によれば、張次官は「燃料に高い硫黄分が含まれて環境基準を満たさず、車が故障したりしたとしても、それはあなた方の責任であって環境保護省は一切関係ない」と強い態度を示したという。

2社の幹部はこれに対し、2012年の旧正月以降にクリーンな燃料を供給することを誓約したが、湯氏によれば、数カ月後に同省が検査を実施したところ、2社は依然として通常のディーゼル燃料を供給していた。

北京では今年1月、大気が「重度の汚染」レベル以上を記録したのは21日を数え、市民の間では政治的な綱引きに対する不満が急速に高まっている。

市民からは「環境保護省こそ責任がある」という声も上がっているが、同省には、国営企業との複雑な力関係を前に、簡単には法律が施行できないという現実も立ちはだかっている。

<政治的な迷路>

中国では環境に関する政策の策定に、国家発展改革委員会(NDRC)や工業情報化省(MIIT)など10以上の組織が関与する。

米国の環境保護庁とは異なり、中国の環境保護省には排出の基準を定める権限はない上、環境問題に関して他の省庁が何らかの決定を下す場合に相談すら受けないこともある。

自動車排ガスコントロールセンターのDing Yan氏によると、NDRCとMIITが環境対応車への補助金政策を検討する会議を開いた際、環境保護省には連絡さえなかった。

中国は2008年、環境問題に取り組む姿勢を強化するため、従来の国家環境保護総局を環境保護省に格上げした。しかし同省には依然として、巨大国営企業や地方政府を従わせるだけの権限は与えられていない。「環境保護省の役割を本当に機能させたいのなら、習近平氏や李克強氏のような最高指導者が必要だ」とDing氏は言う。

<きれいな空気のコスト>

大気汚染のレベルが深刻になったことを受けて、北京市当局は緊急措置として工場103カ所の閉鎖や、公用車の使用削減の方針を打ち出したが、大気の状態はいまだ改善していない。

次期国家主席に内定している習近平氏が国営石油企業の影響力を抑え込むつもりかどうかは今のところ不明だが、国民の怒りが高まるにつれ、政治への圧力は膨らみつつある。

ペトロチャイナやシノペックにとって頭の痛い問題は、国際的なエネルギー価格が高止まりする一方で、ガソリンスタンドでの販売価格を決める権限は政府にあるということだ。Tang氏によれば、CNPCとシノペックは、環境保護省に対し、「適正な価格を決めてくれれば」クリーンな燃料を供給すると条件付きで申し出ているという。

NDRC能源研究所のJiang Kejun氏は、クリーンな燃料を作るためのコストをCNPCやシノペックに背負わせるのは現実的ではないと指摘する。「自分自身は環境問題の専門家で、CNPCやシノペックの行動は嫌悪している」と断った上で、「しかし、エネルギー価格が大幅に上昇するということは世間に発信しなければならない」とし、「安い燃料費ときれいな空気の両方を同時に手に入れる方法はない」と語った。

環境問題に取り組む非営利団体(NPO)の国際クリーン交通委員会(ICCT)によると、新たな基準では排出される微小粒子物質や窒素酸化物を、トラックから8割、バスから3割削減することを目標としている。同委員会が環境保護省のデータとして示したところによれば、中国では大型トラックは交通量全体の約5%に過ぎないが、排出される微小粒子物質は全体の6割強を占めている。

環境保護省に近い筋からは、石油会社がクリーンなディーゼル燃料生産に必要なコストを相殺するための税優遇措置について、同国の財政省が協議に加わったとの話も出ている。

また、中国のメディアは先週、政府がディーゼル燃料に含まれる硫黄分を欧州連合(EU)の規制値と同じ50ppm以下とする基準強化を適用する見通しだと報じた。移行期間が与えられるため、新基準が全国で義務付けられるのは2014年末以降になるという。

しかし、より高いレベルでの政治的関与がなければ、その遅れがさらに長引く可能性も否めない。

(原文執筆:Sui-Lee Wee、Hui Li、翻訳:梅川崇、編集:宮井伸明)

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