February 15, 2013 / 9:24 AM / in 7 years

コラム:緩和期待一服でも、年内「ドル100円」視野=亀岡裕次氏

円安が日本企業の収益向上期待を生んで株高が進んでいるが、株高は日本だけの現象ではなく世界的なものだ。円安の原因として、主に政府・日銀の政策への期待があるとしても、世界株高にみられるリスク選好の動きもあるだろう。

リスク選好の下では、低金利通貨の円が最も売られやすく、円全面安の展開になりやすい。世界的な景気回復期待とリスク選好が続くか否かが、円相場のカギを握る。

米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和によって米国が低金利になったこともあり、ドルは円に次いでリスク選好時に売られやすく、リスク回避時に買われやすい通貨であった。ただし最近は、株価が上昇するリスク選好の下でも、円を除く他通貨に対するドル安は明確でない。2012年11月以降、政府・日銀の政策による円安期待が高まり、円の対ドルポジションはネットで売り持ちに転じた。ドルに対する円の先安観が生まれたことで、リスク選好時のドル売りが弱まり、円売りに集中しやすくなったものとみられる。

リスク選好時の売り通貨がドルと円に分散するのではなく、円に集中すれば、リスク許容度に応じてクロス円とドル円が同じ様に変動しやすくなる。ドル円は、リスク選好時に上昇(円安)しやすい一方、リスク回避時に下落(円高)しやすくなるだろう。米国では、増税の影響が2月の経済統計に表れる可能性があり、経済指標が市場予想を下回ればリスク回避の円高に振れるかもしれないため注意が必要である。

<外債購入の実現可能性は限りなくゼロか>

日銀の金融緩和政策に対する期待は膨らみにくい状況だ。日銀は2%の物価目標を採用したが、他国のように達成期間を設けなかったので、早期の目標達成のために急速な金融緩和強化を行うとは限らない。

1月および2月の日銀金融政策決定会合で13年の資産買い入れ枠を据え置いたのは、年前半の買い入れ計画がすでに最近の実績に見合ったペースに達しており、日銀オペの札割れも発生している状況下では、買い入れの大幅拡充は困難との判断が働いたためではないだろうか。

山口俊一財務副大臣は2月6日、米通信社のインタビューに答え、日銀金融政策は従来のやり方が良く、政府・日銀が一体となっていれば日銀法改正は必要ないと述べた。金融緩和の実情を意識してか、それとも海外の円安けん制を意識してか、いずれにしても当面は新たな対策の必要性がないと政府が判断しているように受け取れる。

日米欧7カ国(G7)は12日、為替に関する異例の緊急声明を発表した。この背景には、海外諸国が円安進行への警戒感を強めていることがある。G7声明は市場原理を重視しつつも暗に円安をけん制しており、日本が追加的に量的緩和を大幅強化することを難しくするものだろう。

日本政府は、デフレ脱却に向けた金融・経済政策に取り組んでいる結果として円高が修正されたのであり、円安誘導を意図したものではないことが各国に認識されたとの見解を示している。だが、麻生太郎財務相が述べたように「意図しないぐらいに」円安が進んだのであれば、日銀が資産買い入れを大幅に増額する大義名分は立ちにくい。

財政・金融政策が「国内の手段を用いてそれぞれの国内目的を達成することに向けられてきていること」「為替レートを目標にはしないこと」というG7声明からすると、日銀が2%物価目標の達成が見込まれるようになるまでオープンエンド型の資産買い入れを、現行実績ペースを大きく超えない程度に継続していくことはできても、「官民協調外債ファンド」を創設して外債購入する政府プランの実現可能性は限りなくゼロに近いと言えるだろう。

今後、市場は政府が提示する日銀総裁・副総裁人事案などをにらみつつ、日銀が量的緩和ペースを現行より大幅に高める可能性が低いとの判断に傾くことになるのではないか。そして、緩和政策期待のピークアウトが短期的には円高を招く可能性がある。

<円安は調整後、「ドル100円」に向け再始動>

しかし、日銀の金融緩和は短期的に急拡大しなくても、中長期的には円安効果を生みやすい。現在の日米の金融政策をもとにすると、今後の日米のベースマネー増加ペースに大きな差はないとみられるが、日銀は13年後半から14年にかけて資産買い入れを増額する一方で、FRBは減額(さらには停止)する可能性がある。結局、ドルよりも円のベースマネーが相対的に増加することとなり、円安・ドル高要因になるだろう。

また、米国の期待インフレ率は上昇しつつあり、FRBが低金利政策の条件の一つとする2.5%以内に収まらなくなることで、中長期的に利上げ期待や実質金利が上昇することが予想される。一方、日本の期待インフレ率は日銀が2%の物価目標を採用した後に上昇したが、目標には程遠い。日本のインフレ率とその見通しは急速には高まりにくいだろうから、長期にわたって日本の利上げ期待は浮上せずに金融緩和期待が残り、実質金利は低下しやすい。日本の金融緩和が他国に比べ長期化し、実質金利が低下することが、中長期的な円安効果を持つだろう。

早晩、世界的な景気回復を背景に、リスク選好や海外金利上昇も円安に働き始めることになるだろう。米金利動向と大きく乖離した円安は、日銀緩和期待とリスク選好によるものだ。目先は緩和期待低下とリスク回避により一時的な円高の可能性はあるものの、4月頃からは海外金利上昇が円安に作用するだろう。世界的にリスク許容度が上昇(低下)する局面と金利が上昇(低下)する局面は重なりやすい。米金利上昇に対する円安・ドル高の進行度は、リスク選好による円安・ドル高も加わって、過去数年の傾向と比べて大きくなるだろう。

以上のことから、13年3月末頃にかけては、ドル円、クロス円ともにいったんは円高に振れると予想する。円安にピーク感が出れば、日本企業のリパトリ(本国への資金還流)や13年度上半期の輸出予約(外貨売り・円買い)なども出やすく、対ドルで90円程度にはなりやすいだろう。だが、その後は再び円全面安の展開が予想される。日銀の金融緩和期待から世界景気の回復期待(リスク選好・金利上昇)へと主因を変えて円安基調は続き、13年末までに対ドルで100円に接近することになるだろう。

*亀岡裕次氏は、大和証券の投資戦略部担当部長・チーフ為替ストラテジスト。東京工業大学大学院修士課程修了後、大和証券に入社し、大和総研や大和証券キャピタル・マーケッツを経て、2012年4月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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