February 22, 2013 / 10:07 AM / 7 years ago

アングル:円安が鉄鋼大手の収益押し上げへ、トヨタ単体黒字化も追い風

[東京 22日 ロイター] 円安の進展が新日鉄住金(5401.T)とJFEホールディングス(5411.T)の来期収益を大幅に押し上げそうだ。鉄鋼各社は原材料を輸入するため、為替変動による直接的な収益影響は「中立」としているが、1ドル90円台の為替水準が続けば輸出の採算改善や出荷拡大につながる。

2月22日、円安の進展が新日鉄住金とJFEホールディングスの来期収益を大幅に押し上げそうだ。写真は2010年、都内で撮影(2013年 ロイター/Yuriko Nakao)

トヨタ自動車(7203.T)が今期単体黒字化を見込むなど大口顧客の収益改善も価格交渉には追い風となる。対韓国ウォンでも円安が進み「新年度に向け輸出競争力が上がるという期待感はある」(JFEの岡田伸一副社長)など、逆風続きだった鉄鋼業界に明るい光が見え始めた。

円はドルとウォンに対し、昨年10月以降、約17%下落した。鉄鋼大手は超円高を背景に輸出の採算悪化に悩まされていただけに、円安基調の定着で経営環境が好転するとの期待が高まりつつある。トムソン・ロイター・エスティメーツによると、アナリストの13年3月期経常利益予測(平均値)は日鉄住金が639億円、JFEが484億円で、14年3月期は日鉄住金2790億円、JFE1894億円。両社ともに前期比4倍前後の増益となる見込みだ。

UBS証券の山口敦アナリストは、日鉄住金の来期業績は「韓国、台湾で1450万トンの設備増強が進展し、下期には国際市況に悪影響が出る可能性があるが、円安定着ならば大幅な増益となる可能性が高い」(14日付レポート)と予想する。

足元で原材料価格が上昇しているため、今期は収益圧迫要因だった在庫評価損益が来期は大きく改善するほか、円安効果が寄与する。大和証券の五百旗頭治郎シニアアナリストは、日鉄住金の来期経常利益を4150億円、JFEは3000億円と予想するが、前期比増益分の約半分を在庫などの評価損益改善が占め、円安効果は新日鉄で900億─1000億円、JFEで750億円程度と分析する。「日鉄住金の誕生で国内の競争が1つ減ったことや建築向け鋼材需要の増加などで、国内でも鋼材の値上げが通る」とみており、鋼材販売価格から原材料単価を差し引いたスプレッドは日鉄住金でトン当たり2000円、JFEで同2500円程度上向くと試算する。

ゴールドマン・サックスの竹本祐也アナリストも「1ドル90円超では内外価格差がほとんど解消するため、国内スプレッドの縮小に歯止めがかかる」とみており、海外勢に対するコスト競争力向上で輸出数量も増加すると予想する。今期はトヨタの単体営業損益が5年ぶりに黒字転換する見通しで、「部品メーカーへの値下げ圧力が緩み、素材各社が価格交渉を進めやすくなる」ことも追い風とみる。同氏によれば、日鉄住金、JFE、神戸製鋼所(5406.T)の高炉3社の経常利益は1ドル85円前提の予想数値に比べ、1ドル100円で約1500億円、110円で約3300億円増加する見込みで、円安が進めば、増益効果も一段と高まる公算が大きい。

<先行きへの不安感と期待感が交錯>

ただ、アジアの需給ギャップ解消の道筋は見えておらず、鉄鋼各社は慎重姿勢を崩していない。JFEの岡田副社長は1月末の決算会見で、安倍政権の経済・金融対策で市場経済全体に上昇機運はあるが「実際のプラス要素は来年度になる」と指摘。日鉄住金の本部文雄副社長は今月14日の決算発表で、経済対策の効果は「鋼材に限ればまだみえてきていない」とし、造船など製造業向けは依然として厳しい環境が続いているとの認識を示した。

それでも、円安で「相対的に韓国ウォンに対するポジショニングも是正されつつある」(JFE副社長)ほか、「輸出中心に、これまでは損益的に販売が難しかったところも少し状況が変わってきた」(日鉄住金副社長)と変化の手ごたえを感じ始めた向きもある。電炉大手の東京製鉄(5423.T)は今週、円安で「輸出価格に比べ国内価格の割安感が浮き彫りになった」(今村清志営業本部長)として、3月契約の鋼材値上げを発表。円安で韓国などの輸入鋼材が減速する一方で、老朽化インフラの補修工事など土木向け需要の増加や物流倉庫など民間設備投資の回復で、「鋼材需要の先行きに明るさが広がりつつある」(同本部長)としており、期待感も膨らみ始めた。

<海外戦略への影響>

円安のもう一つの恩恵は、顧客の国内生産増加で鋼材需要が拡大すること。ただ「アジアなどの需要拡大地域へ日本の製造業が生産移管する流れは止まらない」(外資系証券)とみられ、鉄鋼各社にとっても海外戦略の重要性は変わりそうもない。

JFEは、台湾の義聯集団がベトナムで計画する高炉一貫製鉄所プロジェクトへの参画に向け、事業化検証を実施中で、今年度中にも最終判断を行う方針。まず粗鋼能力350万トン程度の薄板中心の製鉄所を2016年に立ち上げる想定だが、「東南アジア地域では新たな高炉建設計画が目白押しで供給過剰感が強い。川上の高炉建設は財務負担も大きいだけに、川下展開を強化し顧客層の拡大を先行させた方がいい」(日系証券アナリスト)との見方もある。

日鉄住金は3月中に中期経営計画を公表する。粗鋼生産量でアルセロールミタルISPA.ASに次ぐ世界第2位の鉄鋼メーカーとなった同社の目標には「アジアや米州地域等での高炉を含む製造販売拠点の強化・新設」や、「世界の粗鋼生産規模を(現行の5000万トンから)6000─7000万トンに引き上げる」ことも含まれており、中計ではより具体的な海外戦略の方向性が示される見通し。「コスト削減の詳細だけでなく世界戦略や成長戦略も明確に示してほしい」(大和の五百旗頭氏)との声も多く、発表内容が注目されそうだ。

(ロイターニュース 大林優香;編集 吉瀬邦彦)

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