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コラム:キプロスの預金課税が正しい理由
2013年3月19日 / 08:59 / 5年前

コラム:キプロスの預金課税が正しい理由

欧州連合(EU)がまとめたキプロス支援案に対する反応は、当初の「ショック」が落ち着き、ありきたりとも言える「非難」に変わった。

3月18日、EUがまとめたキプロス支援案には預金への課税が含まれるが、国際金融全体にとってはプラスと言えるかもしれない。写真はEU支援策に対する抗議デモ(2013年 ロイター/Yorgos Karahalis)

英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙は論説で「欧州が支援策でまた失敗」の見出しを掲げたほか、ニューヨーク・タイムズ紙のコラムニストを務める米経済学者ポール・クルーグマン氏は、「まるでギリシャ語やイタリア語で『預金を下ろしておこう』と書かれたネオンサインを掲げているようだ」とブログに綴った。

広く報道されているように、今回の支援策には重要な増税要素がある。キプロスに銀行口座を持つ人は、キプロス人であろうとなかろうと、預金に1回限り最大約10%の税金が課されるというものだ。徴収税額は58億ユーロ(約7200億円)に上るとみられる。

欧州全土で銀行の取り付け騒ぎが起こるという物騒なシナリオもあり得なくはないが、EU当局者がキプロスへの措置は例外的だと強調したことで、欧州の市場は18日午後までに落ち着きを取り戻した。

EUがこうした措置に踏み切ったのには、やむにやまれぬ事情が2つある。1つは、キプロスが1990年代にロシア人にとってのオフショア金融センターとして生まれ変わり、不透明なタックスヘイブン(租税回避地)の世界リストで上位に入っていたことが挙げられる。国際的な圧力が増す中、キプロスは2004年にEUに加盟するため、オフショア課税の枠組みを廃止したが、同国の銀行への疑念はぬぐえていない。

独シュピーゲル誌によれば、ドイツの外事情報当局は昨年11月、EUのキプロス救済基金はロシアの富豪の懐を潤すだけにすぎないと警告した。同情報当局は、キプロスの銀行にあるロシアマネーを260億ドル(訂正)と試算しており、これは今回のEU支援策のたっぷり2倍以上にあたる金額だ。ロシアの富豪ドミトリー・リボロフレフ氏は、国内最大手キプロス銀行の株式約10%を保有している。キプロスは、国際水準を満たすと約束しながらも潔白とはみなされていない国の1つとして、経済協力開発機構(OECD)のリストでは「グレー」な国家とされている。

このような状況で、厳しい条件なしにキプロスに国内総生産(GDP)の半分以上に当たる支援の小切手を切ることは、政治的な矛盾を生む。フランスとドイツは長年、タックスヘイブンの危険性を非難しており、不正を取り締まるため、G8やG20などの場でも他国に協力を呼び掛けてきた。キプロス国民自身に痛みを求めないとなると、独仏のこれまでの厳しい態度とは矛盾が生じることになる。

人気のあるタックスヘイブンでさえ100%安全ではないと示した点で、EUは国際金融全体にとって良い仕事をしたと言えるかもしれない。

今回のEUの支援策を支持する第2の理由は、モラルの観点というより経済的な打撃といった観点だ。2008年当時のアイルランド人やスペイン人、ギリシャ人に尋ねてみればいい。1回限りの家計への非常に厳しい影響か、5年にわたる経済低迷のどちらがいいかと。はっきり答えられる人は少ないだろう。

こんな選択は誰もしたくないし、キプロス国民には選択肢が与えられているわけでもない。しかし、こうした短期型の厳しいショック療法には前例がある。アイスランドだ。

アイスランドでは2008年、銀行が経営破たんに陥り、オンライン口座にあった英国人やオランダ人の預金も消滅してしまった。アイルランドやギリシャとは違い、アイスランドは政府の資金を投入して銀行を救済する道を選ばなかった。

同国のグリムソン大統領は、フランスのインターネット新聞とのインタビューで「われわれは今回の危機が、単なる経済や金融に関するものではないことに気づいた。これは政治、民主主義、そして法律に関わる根深い危機なのだ」と語った。アイスランドでは、銀行の従業員や政治家が犯罪捜査の対象となったほか、なぜそもそも国家がこうした状況に陥ったのかを調査する特別検察官を設置することなどを含め、多くの法的措置が行われた。

アイスランドの約3倍の人口を抱えるキプロスだが、銀行預金に関する騒ぎが一旦落ちつけば、国民はアイスランド国民と同じように、なぜ危機が起きたのかをつぶさに調べようとするかもしれない。

キプロス国民にとっての大きな問題は、なぜ銀行はロシアなどからGDPを軽く超える資金を引きつけておきながら、国全体を窮地に追いやるほどの状態になってしまったのかということだ。おそらく教訓は、タックスヘイブンであることに大した価値はないということだろう。そしてキプロスの場合にもこれが当てはまるのなら、EUの措置はこうしたことに気づかせた点で極めて有益だと言えるだろう。

*6段落目の260億ユーロを260億ドルに訂正します。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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