March 22, 2013 / 6:48 AM / 6 years ago

アングル:日銀期待織り込む市場、「異次元」政策なければ円高も

[東京 22日 ロイター] 新生日銀への過度な期待を織り込んでしまった為替市場では円高リスクが高まり始めている。4月3─4日の金融政策決定会合で「異次元」の政策を打ち出すことができなければ、失望からの円買い戻しが加速する可能性があるという。

3月22日、新生日銀への過度な期待を織り込んでしまった為替市場では円高リスクが高まり始めている。写真は黒田東彦総裁。21日撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

銀行券ルールの撤廃だけでなく、無期限・無制限の金融緩和によるバランスシート拡大などが打ち出せるかが焦点になる。

<新生日銀に冷たい為替市場>

新生日銀に対する為替市場の反応は円買いだった。日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁が21日、就任会見に臨んだが、「目新しい内容はなかった」(国内金融機関)と受け止められ、前日のニューヨーク市場でドル/円は94.55円まで下落した。東京市場でも依然95円を下回った水準で推移しており、戻りは鈍い。

日本の株式市場は円高に加え、キプロス問題への警戒もありいったんリスクオフに傾いているが、「金融緩和期待は根強く、強気ムードが途切れたわけではない」(大手証券)という。円債市場でも、日銀による国債購入期待を強めており、長期金利が一段と低下している。

為替市場だけが新生日銀に比較的冷たいのは、海外勢が日銀が掲げる物価目標2%は「従来の延長線上の金融政策では達成できない」(外銀)と判断。政策は「異次元」の領域に入り込まざるを得ず、結果的に円安が進むという読みから、円売りに前のめりになっていたことが背景にある。

過去20年で、消費者物価の前年比が2%を超えたのは、1997年の消費税率引き上げ時と2008年の国際商品市況高騰時の2回しかない。黒田総裁や岩田副総裁が「2年程度で2%達成」を声高に叫ぶほど、否応なしに海外勢の「異次元」への期待は高まっていった。

だが、期待が裏切られれば失望に変わる。JPモルガン・チェース銀銀行債券為替調査部長、佐々木融氏は「海外投資家は日銀が到達した事があまり多くない消費者物価の前年比2%を達成するために大胆な政策を実施することを期待しているが、実際に発表される政策が現在予想されている程度の政策にとどまれば失望感が強まり、円は一段と買い戻される可能性が高い」と指摘する。

<銀行券ルール廃止だけでは失望か>

為替市場を満足させるような「異次元」の政策とは何か。現時点で市場が予想している次の一手は、1)国債買い入れ年限の長期化、2)リスク性資産の購入、3)無期限資産購入の前倒し、4)金融調節の一環としての買入(輪番オペ)と資産買入等基金の統合(事実上の銀行券ルールの撤廃)──などがある。

これまでは、日銀がこだわり続けた銀行券ルールの撤廃に踏み切れば海外勢はレジームチェンジと受け止め、円売り材料になるとみられていた。だが、前日は黒田総裁が「日銀券ルールのようなものがないと財政ファイナンスになるとか、その懸念があるということはない」と述べ、撤廃を示唆したにもかかわらず反応は鈍かった。

為替市場では「国債買い入れ年限の長期化や銀行券ルールの撤廃は異次元ではない」(外銀)との見方も出始めている。そうした政策にとどまれば「年度末から4月にかけてドル/円は90円前後、ユーロ/円は115円前後への調整をみるのではないか」と佐々木氏は指摘する。

もっとも、この点については「年限長期化やリスク資産の購入拡大などは政策手段としては織り込まれているが、規模まではっきりと織り込んでいるわけではない。年限を10年ゾーンまで広げたり、リスク性資産をマーケットが驚くような金額で買うと言えば、織り込めていない情報として反応する可能性はある」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニア為替・債券ストラテジスト、植野大作氏)との見方もあった。

<期待はバランスシート無制限拡大>

黒田総裁は就任会見で「日銀はいろいろなことをやってきたが、その結果、非常に分かりにくくなっている」と指摘。「もっと端的に、バランスシートの負債側と資産側でどういう動きになっているのか、それをどう方向に向けようとしているのかが分かるような金融政策を運営することが市場との対話を強化する上でも重要だ」と強調した。

この発言を素直に受け止めれば、現在、輪番オペと資産買入等基金、そして基金の延長線上に2014年から開始予定の「期限を定めない資産買入」の3種類ある国債買い入れを「シンプルな枠組みにするために統合する」(国内証券)とみるのが自然だ。

ただ、これだけでは「異次元」には不十分と受け止められる可能性がある。このため、植野氏はどんな政策を繰り出すにせよ「無期限の資産購入が無制限のバランスシートの膨張につながるという期待が出ることが重要だ」と指摘する。足元では日米マネタリーベース比較とドル/円相場との関係は途切れているが、海外勢の中には為替相場を語る上で「バランスシート」信奉者は少なくない。

2014年に開始する「期限を定めない資産買入」は償還を考慮すると、基金残高は10兆円程度増えて頭打ちとなる。植野氏は「物価目標2%を達成するまでは、バランスシートが膨張し続けるというスキームを導入することが重要。これが導入できれば本当の意味での『オープンエンドのバランスシート膨張』期待が浸透するので、相場に与える影響は大きいだろう」と予想する。

ただ、2%の物価目標を達成するまでバランスシートを拡大し続けることにコミットすれば「半永久的にバランスシートを拡大させる必要がある」(外資系証券)と懸念もある。黒田総裁率いる新生日銀は「異次元」の世界にどこまで踏み込めるのかを市場は見極めようとしている。

(ロイターニュース 志田義寧 編集:伊賀大記)

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