March 28, 2013 / 8:43 AM / 5 years ago

コラム:キプロスの教訓、今後も続く危機という名の「茶番」

キプロスでの危機が過ぎ去った今、ようやく明らかになったことがある。キプロスが引き起こした「危機」は、騒がれていたほど注目には値しなかったということだ。

3月27日、キプロスでの危機が過ぎ去った今、ようやく明らかになったことがある。キプロスが引き起こした「危機」は、騒がれていたほど注目には値しなかったということだ。写真はキプロスの国旗(2013年 ロイター/Yorgos Karahalis)

欧州連合(EU)の国内総生産(GDP)のわずか1%を占めるだけのキプロスは、ロシア人に租税回避地として利用されている国だ。仮にキプロスが地中海の債務の波に飲みこまれたとしても、ユーロ圏が破綻することはなかっただろう。

それにしても何という話だろうか。100万ユーロが積まれたキプロス行きの飛行機、ユーロ圏崩壊の危機をはらんだ土壇場のやり取り、モスクワでの緊急会談失敗──ニュースは数々の三文芝居で埋め尽くされた。

しかし、そんな世界を舞台にしたドラマの裏側で、キプロスの全政党はユーロ圏にとどまることを支持していたし、ドイツ政府もユーロ圏に対して献身的であり続けている。そうした中、キプロスがどうやってユーロ圏の存亡を揺るがせたというのだろうか。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のダイセルブルーム議長からは軽率な警告も飛び出したが、痛みを伴うキプロスの救済策が今後の「前例」になることもないだろう。キプロス支援策は将来の銀行破綻処理のモデルになると議長が発言すると、金融市場には動揺が走った。しかしその数時間後に議長は前言を撤回、「例外的な課題があるキプロスは特別なケースだ。マクロ経済調整プログラムは危機が懸念される国の状況に応じて変わるもので、一律のひな形が使用されることはない」と述べた。

キプロス問題はギリシャやイタリア、スペインでの危機再来ではなかった。キプロス救済策が、将来ユーロ圏の周縁国で危機が発生した際の前例を作り出したということもない。これは茶番だったのだ。

だが茶番から透けて見えることもある。これによってユーロ圏の新たな真実が浮き彫りになったということだ。言い換えれば、ユーロ圏が何かを実行する際には、必要のない危機を作り出す必要があるという真実だ。

組織としてのEUには多くの不確定要素があるため、何か行動を起こすためには恐ろしい脅威やギリギリの期限といったものが必要になる。良識のある人のほとんどは、今やユーロ圏が崩壊することはないことを知っている。だからこそ、ドイツは変革を望むなら以前にも増して声高に危機を叫ばなければならない。差し迫った危機がない場合、抜本的な変化を起こす方法は、市場の力が与える痛みを利用した方法に限られる。

キプロスの事例は2つの危機の在り方を浮かび上がらせた。1つは公の場で演じられる危機、そしてもう1つは、それほど注目を浴びていないが本質的にはもっと懸念されるべき危機だ。

でっち上げられたものであろうとなかろうと、危機は依然として欧州にある程度変化をもたらす役割を果たしていると言える。ただでっち上げの危機は、政治指導者たちの行く手を阻むだけではなく、欧州が集団としてまとまりにくくなる原因にもなる。

例えば、今のユーロ圏の外交はどうだろうか。フランスはマリに介入したが、事実上単独で行ったものだ。ある統計によれば、EU全体の対中貿易の中でドイツが占める割合は約半分と、ドイツは中国と良好な関係を築いているが、他のEU諸国は中国との関係に及び腰だ。

また、EU加盟27カ国のうちフランスと英国を除く25カ国は、シリアの反体制派への武器供与に反対の立場を取っている。EU内部で足並みが揃わないことで、一貫性のある外交政策を行うことが難しくなる場合が多くなるのだ。

では、これを踏まえた上で今後の見通しはどうなるのか。群れを統率するためならいつでもうそをつかなければならない欧州に、私たちはどんな期待を抱くことができるのか。

もし私が欧州の財務相だったとしたら、やはりうそでも「ユーロ圏が崩壊の危機にある」と言うだろう。こうした方法は、EUの小国で起きた債務危機に世界の注目を向けさせる。欧州でまた別の「危機」が持ち上がった時(にわかには信じられないが、私が聞いた話では次はスロベニアだそうだ)、私たちは抜け出たばかりの恐怖に再び押し戻されることになるだろう。

キプロスはギリシャとは違うだろうし、これからの債務危機における対応の前例を定めたわけでもないだろう。市場の力とメディアの熱狂が作り出す「でっち上げの危機」はきっと今後も目にするだろうし、キプロスはその現象を明らかにしてくれた。

*本稿は、国際政治学者イアン・ブレマー氏とのインタビューに基づくものです。

*筆者は国際政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシア・グループの社長。スタンフォード大学で博士号(政治学)取得後、フーバー研究所の研究員に最年少で就任。その後、コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所などを経て、現在に至る。全米でベストセラーとなった「The End of the Free Market」(邦訳は『自由市場の終焉 国家資本主義とどう闘うか』など著書多数。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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