March 28, 2013 / 5:58 AM / 6 years ago

コラム:日経平均2万円超えと長期繁栄の予兆=武者陵司氏

日本株はどこまで上がるか。日経平均株価がまだ9000円台で推移していた昨年11月後半、筆者は1万5000―1万8000円へのトレンド転換も十分に期待できると指摘した。現実は今まさにその方向に進んでいる。それどころか、数年内に2万円、いや2万2000円を目指す展開すら可能性として見えてきたと考えている。

日本株に魔法のごとき推進力を与えているのは、他でもないアベノミクスである。リフレ政策の推進によって長期にわたり日本経済を苦しめてきた円高デフレからの脱却を果たすと公約し、多くの投資家を悲観論の呪縛から解き放った安倍晋三政権の功績は、現時点で判断する限り、大きい。

日本株の異常な割安状態の是正が引き続き進み、現在1.3倍の東証1部平均PBR(株価純資産倍率)が世界平均の1.9倍まで上昇すると考えれば、日経平均2万円は決して夢物語ではない。すでに株価は野田佳彦(当時)首相が解散総選挙実施を表明した11月14日以降の4カ月あまりで約40%上昇し、3月27日終値ベースで1万2493円79銭に達している。

こうした状況下、「バブルが始まった」「財政破綻リスクが高まる」「制御不能のインフレが起こる」といった批判論が増殖しているが、いずれも端(はな)から「アベノミクスは失敗する」と決めつけた結論ありきの議論ばかりだ。

もちろん、リフレ政策が失敗する可能性はゼロだとは思わない。だが、成功しないと決めつけるのは間違いだ。むしろ、筆者は後述するような理由から成功する可能性のほうがはるかに高いと見ている。少なくとも現状の株高の流れをバブルと決めつけるのは、早計である。

<説得力を失った量的緩和批判>

最大の根拠は、米国だ。ご存知のとおり、米国の株価は2009年3月に付けたリーマンショック後の底値から2倍の水準に上昇。ダウ平均株価は史上最高値の更新を続けている。皮肉屋による「異常な量的金融緩和が起こしたバブル」という批判は、海の向こうでは、実体経済と企業業績の顕著な回復により、すでに説得力を失っている。

そもそも、きっかけを与えたのが金融緩和だとしても、健全な成長路線に復することができれば、生産性の高まりによってインフレ抑制下での利益増加が可能となり、金利の急騰、物価の高騰、資産のバブル化は起きるべくもない。

仮に金利が上昇したとしても、それは民間の利子収入増も意味する。もちろん、増加した分が消費に回るかどうかは将来への期待が良くなるか次第だが、言い換えれば、だからこそ、期待に働きかけることは間違っていないと言える。

また、異常な割安状態からの是正という観点からだけでも、日本株の上昇は正当化できる。今回の上げ相場が始まる11月半ば以前、日本株はまさしく一人負けの状態にあった。たとえば、リーマンショック後の底値からの株価の回復度合いは米国株の2倍に対して、日本株は1割と危機の震源地をはるかに下回る低迷ぶりだった。

ちなみに、不動産も同じ状況だ。日米ユーロ圏の不動産のフェアバリュー(適正価格)と時価の推移を対賃料比で見ると、米国とユーロ圏では過去20年間、リーマンショック後を除いて双方の価格がほぼ連動しているのに対して、日本はフェアバリューが横ばいなのに時価が一貫して低下し、両者の乖離(かいり)が大きく広がっている。つまり、株式だけでなく日本の不動産も異常な割安状態に放置されてきたのである。

<500兆円以上の資産効果>

こうした状況下、安倍政権が掲げる世界標準のリフレ政策に賛同する日銀新体制が発足したことは、日本にとって歓迎すべきことだ。欧米では危機という異常事態からの脱却を目指して大胆な量的金融緩和が展開され、投資家のアニマルスピリッツが回復し、市場のリスクテイク姿勢が復活した。遅ればせながら今、日銀がその潮流に合流しようとしている。

黒田日銀の量的緩和の新機軸となるであろうリスク資産の大量購入は、市場にポジティブサプライズを与え続けるに違いない。まず、すでに低水準にある長期金利が現在の0.5%台から0.4%台まで低下する可能性がある。長期金利の低下は日本株や不動産の割安感を一段と際立させ、両相場を押し上げることになろう。

控えめに見積もっても、今後数年間で、年間の国内総生産(GDP)と同規模の500兆円以上の資産効果(株と不動産のキャピタルゲイン)を日本にもたらす可能性がある。資産価格上昇を起点とする好循環は、すさまじい威力を発揮するだろう。リーマンショック後の資産価格下落を起点とする悪循環の逆バージョンと考えればよい。安倍政権と黒田日銀の使命であるデフレ脱却は、そうしたムード大転換を伴って初めて可能となる。その意味でも、黒田日銀には是非とも悲観の呪縛を木っ端微塵(こっぱみじん)に砕いてもらいたいものだ。

<米国経済に灯る長期繁栄の予兆>

最後に付け加えれば、今回の株価の上昇局面、特にダウ平均株価の史上最高値更新は、新たな長期繁栄の時代の始まりと捉えることも可能だと考えている。

過去80年間で長期低迷の後に最高値を更新したのは、今回を除けば4回あるが、そのうち持続性のある株高、長期繁栄につながったのは1954年と82年の2回だけだ。残りの2回(1972年と2006年)は、いうなれば「まやかしの高値波乱」だった。

筆者は実は、今回の高値更新は3度目の長期繁栄の予兆の可能性が高いと見ている。というのも、過去2回の本物の株高をもたらしたのと同じ3つの条件が整いつつあるからだ。第1に地政学レジームの変化、第2に技術革新と生産性革命、第3に通貨・信用システム(あるいは需要創造メカニズム)の転換だ。

地政学レジームの変化については、過去においては第二次世界大戦に前後しての西側世界における米国覇権の確立、その後の米国の価値観と制度の世界的普及(すなわち世界制覇)があったが、今回は、大げさに言えば、米国を中心とする世界共和国(グローバル・コモンウェルス)への転換である。

民主主義、人権擁護、市場経済、資本主義、インターネット環境への対応、世界各国の夜警国家化などを骨格とする世界共和国の実現によって、米国は国益を貫徹しようとしているように見受けられる。実際、オバマ大統領のもとで、国際世論に極端に配慮した政策にシフトしつつある。核廃絶の呼びかけ、自制的リビア攻撃、イスラエルに対する67年以降の占領地返還要求などはその最たる例だ。

2点目の技術革新と生産性革命については、今後、インターネット革命のさらなる深化、シェールガスを中心とする新エネルギー革命が展望される。また、グローバリゼーションの進展により引き続き着実な生産性の向上が期待できる。過去2回の長期繁栄をもたらした、電気・自動車・石油化学革命や情報化革命に匹敵する大きなインパクトを与えるだろう。

最後の3点目については、40年代から60年代にかけての繁栄をもたらした管理通貨制度の導入、80年代以降の世界経済拡大に貢献したペーパードルの垂れ流しを経て、現在は次なる通貨・信用システムないしは需要創造メカニズムの確立が模索されている。

その姿は他の2条件に比べるとまだ不明瞭だが、資産市場に中立を装わず、リスクテイカーをサポートする政策にいち早く転換した米連邦準備理事会(FRB)の近年の動きは、そのヒントを与えているのではないか。新しいシステムやメカニズムが確立すれば、経済・雇用や株式は再び大きく上昇する時代に入る可能性が高い。

このように考えると、現在は停滞からの出口に差し掛かっていると考えたほうがよさそうだ。悲観の呪縛に囚われ、ブラックスワンに備えるばかりでは、長期繁栄の予兆を見逃すことになるだろう。

*武者陵司氏は、武者リサーチ代表。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。1987年まで企業調査アナリストとして、繊維・建設・不動産・自動車・電機エレクトロニクスなどを担当。その後、大和総研アメリカのチーフアナリスト、大和総研の企業調査第二部長などを経て、1997年ドイツ証券入社。調査部長兼チーフストラテジスト、副会長兼チーフ・インベストメント・アドバイザーを歴任。2009年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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