April 1, 2013 / 4:58 AM / 7 years ago

焦点:改善期待肩透かしの短観、アベノミクスに「生みの苦しみ」

[東京 1日 ロイター] アベノミクス効果による企業マインドへの働きかけが注目された3月日銀短観は、いまだ企業が慎重姿勢を崩さず、改善への期待は肩透かしを食った格好となった。

4月1日、アベノミクス効果による企業マインドへの働きかけが注目された3月日銀短観は、いまだ企業が慎重姿勢を崩さず、改善への期待は肩透かしを食った格好となった。写真は安倍首相。都内で先月撮影(2013年 ロイター/Toru Hanai)

為替相場は円安基調ながらも、足元ではコストアップが先行しており、専門家からは、アベノミクスは生みの苦しみの段階と位置付けられている。事業計画に盛り込まれている海外需要改善や大幅増益が現実となるためには、円安基調の持続に向けた大胆な金融緩和の実施と、その先のデフレ払しょくにつながる成長戦略の早期実現が望まれる。

<マインド改善は期待はずれ>

3月日銀短観についてエコノミストの間では「企業マインドは予想外に慎重な印象」といった声が大勢を占めている。安倍政権が誕生して初めての日銀短観では、企業マインドへの働きかけがどの程度奏功するかに注目が集まっていたが、円安効果はまだ広がりを見せていない。

大企業製造業では自動車産業の景況感が大きく改善したが、専門家の間では前回調査で中国反日デモで落ち込んだ反動が大きく、その他大幅改善した木材や窯業土石などは復興関連需要によるものと分析されている。中小企業製造業の景況感は足元まだ悪化が継続。大企業の改善が鈍いせいもあり、波及効果はみられていない。

事業計画の前提となる想定為替レートは13年度1ドル85円台と、足元の90円台半ばより大幅に円高の想定となっており、現状程度の為替水準の持続に企業がまだ確信を持ち切れていないことがうかがえる。

マインド効果をはかる上で重要な材料となる設備投資計画は、大企業製造業期初計画が11、12年度より低い伸び率からのスタートとなった。

こうした状況からみて農中総研・主席研究員の南武志氏は「アベノミクスへの期待感は高まったものの、それが輸出など実体経済に好影響を与えている状況に至っていないこともあり、企業経営者のマインドはまだ慎重さが残っている」と分析している。

<物価はコストアップ先行、円安効果の発現にタイムラグ>

アベノミクスが狙うのはまずは大胆な金融緩和によるデフレマインドの払しょくにある。伊藤忠経済研究所・主任研究員の丸山義正氏は「今後のデフレ脱却を考える上では、販売価格判断の動向が重要となる」とみている。実際、今回の短観では仕入価格も販売価格も上昇方向へ大きく振れ、先行きもそうした動きが継続すると予想されていることが鮮明となった。内外での製品需給が改善傾向を示していること、円安による輸入物価の上昇が主因だ。円ベースでの輸入物価指数は2月は前年比で13%も上昇している。

ただ、今のところ販売価格より仕入れ価格の上昇幅が大きい。素材や食品など販売価格の値上げを打ち出す動きもあるが、仕入れ価格の上昇に追い付いていない。丸山氏は「現時点の販売価格判断DIの上昇は物価観の変化よりはコストプッシュ面の影響が大きいと考えられる」と分析する。一方、「非製造業については景況感の改善が共存しているため、価格転嫁の環境が整いつつあるとの認識が生まれつつあるのかもしれない」と、デフレ脱却への兆しも指摘する。

こうした動きについて第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「円安効果は生みの苦しみの段階にある。コストアップが先行している。メリットが出てくるにはタイムラグがある」と見ている。

<大胆緩和で円安持続へ、その先は成長戦略不可欠>

実際、円安や大型補正予算の効果は13年度事業計画にはある程度織り込まれている様子もうかがえる。輸出売上高の計画が前年比3.1%増と12年度より大きく増加する見込みとなっているほか、経常利益も大企業製造業では2ケタ増の計画。非製造業でも12年度よりも増益幅が大きくなる計画だ。

もっともこうした事業計画は想定為替レート85円台が前提となっている。JPモルガン証券・チーフエコノミストの菅野雅明氏は「現状の90円台半ばのレートが持続すれば、もう少し強めの計画となってもおかしくない」とみている。

しかし、たとえ90円台半ばの円安水準が持続しても、円安がさらに進行しなければ増益効果は途切れてしまう。熊野氏は「黒田(日銀)新総裁は今回の短観で企業マインドはもっとよくなるはずと期待していただろうが、改善が限定的だったことで、大胆な緩和で円安をより長期化させる必要性を感じただろう」とみている。さらにいつまでも円安効果が持続するわけではないことから「その先につなげる成長戦略の実現が不可欠になる」とも指摘している。

企業のデフレマインドを払しょくさせ、仕入れ価格の上昇を販売価格に反映させることで増益幅を拡大させることができれば、賃金上昇を伴った物価上昇への期待も開けることになる。バークレイズ証券・チーフエコノミストの森田京平氏は「保守的な想定為替レートが企業マインドの改善が限定的であった主因となった可能性がある。今後の焦点は、企業がいつ実勢見合いの円安水準を想定し始めるか。そのタイミングで短観はもう一段の改善を見せるだろう」とみている。

(ロイターニュース 中川泉;編集 石田仁志)

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