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コラム

コラム:「成長と賃上げ」つなぐ包括的資本主義

経済政策に関する議論はたいがい、意見が一致することのない分野に集中するものだ。最低賃金をめぐって労使は対立し、規制においては政府と自由市場が相反する。とはいえ、インフラや教育への公共投資の必要性など、多くの分野で米国の企業と労働者が意を同じくするのもまた事実だ。

4月2日、米議会が経済回復に向けての政策で意見が一致することはあまりないが、今こそ包括的資本主義を協議の優先事項に持ってくるべきだ。写真は2012年7月、ニューヨークで行われた反格差社会デモで撮影(2013年 ロイター)

民主党系シンクタンクであるアメリカ進歩センター(CAP)が発表したリポートでは、新たな労使の協力関係が指摘されている。つまりそれは、企業と労働組合の幹部が、イノベーションと賃金上昇を両立できる可能性を見いだしているということだ。

「包括的資本主義」は、企業の業績が順調なら、労働者も豊かであるべきというシンプルな考え方に基づいている。包括的資本主義を推進するメカニズムは、広範囲な利益分配やストックオプション、協同組合や従業員の持ち株制度まで多岐にわたる。

これは、グローバル経済で米国企業の競争力を高めるイノベーションへとつながるものだ。新製品や効率向上のためのアイデアは、トップダウンでもたらされるとは限らない。それは往々にして、現場の労働者から生み出されるものだ。それなのに、労働者が寄与した利益を彼らに還元するという戦略は概して無視されている。

呼び名こそまだ存在しなかったが、包括的資本主義は米国建国当時から企業風土として存在していた。全米自動車労働組合(UAW)のトップだったウォルター・ルーサー氏は1958年、デトロイトの自動車メーカーとの交渉で、利益分配を主要な要求の1つとして挙げていた。こうした概念はその後、レーガン元大統領やハンフリー元副大統領の支持を受けた。

現在、中小企業から労働組合化されているボーイング、そしてマイクロソフトなどの巨大IT企業まで多くの米国企業が包括的資本主義を実践している。

うまく機能すれば、従業員はより高額な報酬を得るだけでなく、高く評価されていると感じ、改革へのポジティブな提言を進んでするようになるだろう。企業側には、従業員の生産性向上や収益の改善、長期的競争力拡大というメリットがある。

これを体現した会社がある。超高性能のグラファイト電極を製造するC/Gエレクトローズは、利益分配と持ち株制度が企業文化に深く根付いている。同社では、従業員が業務改善に取り組んだ結果、必要最低限の投資で生産が50%以上増加。他の製造ラインの従業員も、生産増に対処するために業務改善を進めた。

そして、企業にも従業員にもプラスとなる結果を生み出した。従業員への利益分配額は、標準的報酬額を大幅に上回った。劇的な効率向上により、業績も押し上げられた。

残念なことに、米国人労働者の半数以上はこうした広範囲にわたる利益分配を享受しておらず、利益分配を採り入れている企業の大半も限られた範囲でしか実施していない。

従業員が投資されていると感じられる環境づくりを米国企業はほとんど行っていないのが現状だ。業績が好調な場合はトップのみに巨額の報酬が支払われる一方で、従業員は革新的なアイデアを自由に発言することもままならない。

広範な利益分配プログラムに参加する企業と従業員の数大幅を増やすためにすべきことはたくさんある。

しかし、包括的資本主義に対する政府の支援には一貫性がみられない。実質的に全く支援がない場合もあるし、最悪のケースでは邪魔する場合さえある。

民主党も共和党も、特に経済回復に向けての政策で意見が一致することはあまりないようだが、今こそ包括的資本主義を協議の優先事項に持ってくるべきだ。

政策立案者は、包括的資本主義がいかにイノベーションと持続的成長をもたらすかについて、それを採用する企業と従業員にぜひともヒアリングしてもらいたい。

(2日 ロイター)

*筆者のネイサン・ミリコウスキーはシードリフト・コークスの会長やC/Gエレクトローズの最高経営責任者(CEO)を歴任。アンドリュー・スターンはサービス従業員国際労働組合(SEIU)の元議長で、現在は米コロンビア大学リッチマンセンターのシニアフェロー。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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