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コラム:REIT高騰に続くか、マンション投資の鉄則=竹中正治氏
2013年4月19日 / 08:09 / 5年前

コラム:REIT高騰に続くか、マンション投資の鉄則=竹中正治氏

前回のコラムで日本の不動産投資信託(REIT)市場が再びミニバブル的な高騰を起こす可能性を指摘したが、まさにその通りの展開になってきた。

3月以降のREIT相場は賃料収入との比較、予定配当利回り、あるいはP/NAV指標(投資口価格/1口当たりの純資産額)など、いずれの指標でみても、ますます割高になっており、その割高度は2007年の前回ピーク時に匹敵するか、それ以上だ。

一方で、個別の商業ビルやマンションなどの現物の不動産物件の価格は、統計データで見る限り昨年の水準と比較して今のところ目立った上昇は示していない。たとえば、東京都区部の中古マンション価格指数(IPD・リクルート住宅価格指数)は12年12月時点で底を打ったものの、13年2月時点では底値から0.2%の上昇にとどまっている。オフィスビルでは一目でわかる適当な指数がないが、各種不動産レポートを読む限り概ね同様の状態だ。

ところが、東証REIT指数は前年同月比で今年2月末は38.1%、3月末では66.0%と高騰している。ご存じの通り、REITは商業ビルやマンションなどの賃料収入を主に配当するファンドであり、その資産は収益不動産そのものであるにもかかわらず、REITと現物不動産の間に著しい価格の乖離(かいり)が起こっているのだ。なぜだろうか。

<REIT相場の先行、個別物件の遅行>

その理由の筆頭に考えられるのは、個別不動産とREIT市場の流動性の違いだ。いつでも即座に売買できるREIT市場の流動性の高さは、投資家の先行きへの期待を反映して実体経済に比べて先行的な変動を生み出す。

もちろん、投資家のセンチメントは悲観・楽観双方に同調的かつ過剰に振れやすいので、底値と高値の振れ幅も大きくなる。経済学のテキストが語る「合理的期待形成仮説」とは異なり、市場の高い流動性は資産価格の過大評価や過小評価の度合いに拍車をかける面があるのだ。

また、今REITを買っている投資家層の合理性にも問題がありそうだ。価格の合理的な判断ができない大衆的な資金が、投資信託や地銀などからREITに流入している(銀行の投融資を「大衆的資金」というのはやや奇妙かもしれないが、事実そうした投資行動をしてきた)。

しかし、商業ビルやマンションなど個別の収益不動産価格とREITの市場価格の乖離は今に始まったことではない。東証REIT指数は、公表が開始された03年3月から04年12月までに約48%も上昇しているが、たとえば同じ期間に東京都区部の中古マンション価格指数は3.3%しか上昇しなかった。

その後、REIT価格指数はそこからさらに77%も高騰し07年5月にピークをつけるが、同マンション価格指数も遅れて30%余り上昇し08年2月にピークをつけた。つまり、REIT相場の先行、個別物件の遅行という関係があるのだ。そこで、同マンション価格指数に対してREIT指数(いずれも前年同月比変化)を6カ月先行させて相関関係を示したのが下の図である。

両者の相関係数は0.765とかなり高い(正の相関係数は0から1の値をとり、1の時は完全な比例関係になる)。今回もこの相関関係が働くならば、今後マンションなどの個別の不動産物件価格も数カ月遅れながら上昇が始まることになる(図中の赤線の方向への変化)。

実際、不動産業界関係者に話を聞くと、今年に入ってから都心部を中心に不動産投資マネーの動きが明らかに活発化しており、売り手も次第に強気になり始めているという。実体経済の景気回復が持続する限り、今後数カ月のうちに現物不動産価格の上昇がデータでも明瞭に確認できるものになるだろう。

ちなみに、REITについて付け加えれば、不動産証券化協会の3月のレポートによると、海外投資家は12年12月に200億円ほど買い越したが、その後は目立っていない。買い手の筆頭は投資信託で2月約400億円、3月約200億円の買い越し、次いで民間銀行が両月とも約200億円余り買い越している。

「日銀がREITも買ってくれる」という期待もあるようだが、政策発表で表明されている通り、その規模は年間で300億円に過ぎない。今後景気回復が続けば、賃料の上昇と空室率の低下でREITの収益も増加するが、その増加率は景気変動に伴う一般企業の純利益の変化よりもずっと穏やかなものだ。

結論として、今の局面で合理的な投資選択は、すでに著しく割高になったREITから、まだ相対的に割安に放置されている個別不動産物件にシフトすることだろう。

<マンション投資「5つの鉄則>

では、こうした状況をふまえた上で、どうすればマンション投資で成功できるのか。投資のご判断はくれぐれも全て自己責任でお願いしたいが、少なくとも以下の「5つの鉄則」を肝に銘じる必要があると、筆者は自身の投資経験から考えている。

東京都心のマンションを念頭に順番に説明しよう。

1.買うのは不況時、売るのは好況時

これは株式を含むリスク性資産全般の長期投資に適用できるルールだ。価格に比べて賃料の変化ははるかに安定しているので、不況で価格が下落した局面では賃料のリターンは上がり、好況時には下がる。たとえば、高騰したREITの配当利回りは現在では平均3%そこそこだが、昨年暮れ前までは6%を超えていた。賃料のリターンが上がった時にこそ買えば良いのだ。実に簡単な投資方針なのだが、実践できる方はなぜか少ない。

不況時ほど心をときめかせて、ショッピングしよう。そうした局面は、リーマンショック後では09年と12年だった。現在は景気の回復は緒についたばかりなので、まだ間に合う最終局面かもしれない。実際、足元のデータ(東日本不動産流通機構)では、今年1―3月期の東京23区の中古マンションの平米当たり単価は前期比2―3%の上昇に転じており、潮目の変化を感じる。

2.中古マンションを十分に物色して安く買う

新築マンションは一般に価格の2割前後が「新築プレミアム」である。一度でも入居すれば直ちにプレミアムは剥げ落ちる。したがって、投資の経験者は(特殊な事情で例外的に安く売りに出る場合を除いて)新築物件は買わない。

当然のことだが、投資の基本は割安で買い割高で売ることだ。しかし、規模や築年数、質も異なるマンションの価格をどうすれば適正に見抜けるだろうか。そのためには、将来にわたって得られる純賃料収入を自分が求める投資リターン(割引率)で割引いて、その現在価値を算出すること(ディスカウント・キャッシュフロー法)で適正価格を判断できる。あるいは、逆にキャッシュフローから内部収益率(IRR)を計算する方法が合理的だ。

こうした計算はエクセルを利用すれば簡単にできるが、それでも「算数は苦手なので・・・」という方は、年間の純賃料(経費差引後)を購入価格で割る、以下のキャップレート方式で割安、割高の大よそのめどをつけることができる。

まず購入を検討する物件の賃料水準を確認する。様々な物件の価格や賃料水準は今日ではインターネット上の各種不動産検索サイトで調べることができる。

すでに賃借人が入っている物件なら、とりあえず現在の賃料から「管理費」「修繕積立金」「固定資産税」などを引いて純賃料を出して12倍すれば年間純賃料収入になる。それを提示されている購入価格で割って利回りを求めるだけだ。

ただし、築年数の古い物件ほど資産としての寿命は短くなるので、高いキャップレートを適用しなくてはならない。東京都心の物件では、大雑把に言って、築10年までの中古なら6%前後、築10―15年なら7%以上を現在の目安にしよう。自分が目標とするキャップレートが出る水準まで価格を値切ればよい。

3.空室リスクの低い物件を選ぶ

筆者は都区部の駅近徒歩数分の物件しか投資の対象にしない。不便なロケーションや郊外の物件なら賃料の表面利回りがもっと高い物件もあるが、それは空室リスクの高さと裏腹だ。ローンで買った場合は、賃料収入を得られない期間はローン返済の元利金を全部自己資金で負担することになる。それを払えずに破綻する個人もいる。他に本業がある個人投資家にとっては心理的・経済的ストレスが最小限ですむ投資法が適している。したがって、空室リスクの低い物件を選ぶことが大切だ。

4.2―3割は自己資金を用意し、金利も比較して銀行から低い金利で借りる

この点「プロでない限り、借入を伴う投資はリスクが高いので一般個人投資家は手を出すべきではない」と考えている方々が圧倒的に多い。しかし、もし本当にそう考えるなら、居住目的で不動産を購入する場合にも住宅ローンを利用するのはリスクが高過ぎるので、すべきではないということになる。自分が失職して所得が大幅に減少した場合には返済不能になるからだ。

一方、借入を伴う投資目的の場合は、適当な額の頭金さえあれば、後は家賃収入で返済できる。空室になって家賃収入が一時的に途絶えた時のみ自己資金の追加投入が必要になるだけだ。その時に自分の所得が大幅に減少していなければ返済を持続できる。

つまり、自己居住目的の場合、ローン(「住宅ローン」と呼ばれる)の返済は自分の所得のみに依存するが、投資目的の場合のローン(「アパート・ローン」と呼んで区別される)の返済は賃借人の所得と自分の所得の二重の源泉で担保されている。したがって、返済不能になるリスクは自己居住の場合よりも低いはずだ。

しかも、超低金利の今日、賃料収入のリターンが借入金利を上回る結果、借入を利用すると自己資金部分のインカム・リターンはとても高くなる。これが、「金融レバレッジ」の効果だ。

たとえば、3000万円のマンション(純賃料リターン6%)を自己資金1000万円、銀行借入2000万円(借入金利2.5%)で購入した場合、ネット受取り所得(賃料収入から利息支払いを引いた額)は130万円となり、自己資金1000万円に対する投資リターン(ROE)は13%になる。図式で示せば、ROE=純賃料利回り+(純賃料利回り-借入金利)×レバレッジ比率だ。レバレッジ比率は、いわずもがな、借入金額を自己資金で割ったものである。

銀行から好条件の借入れをするためには、まずあなたが別の本業で相応の所得があること、そして投資の2―3割程度は自己資金を用意することだ。その上で複数の銀行に借入を打診すれば、中期の固定金利で2%程度は出てくるだろう。今後デフレが終焉すれば金利は上がる。つまり、今の金利が低いからと言って変動金利で借りると金利コストが将来上がる。したがって、3―5年程度の固定金利約定で借りるのが良いだろう。

ローン期間自体は家賃収入で無理なく返済できる10年から20年程度に設定するのが妥当だろう。この種の個人向けローンは毎月の元利支払いが同額となる元利均等返済となる。その計算には銀行の住宅ローンのサイトなどにある計算ツールが簡単に利用できる。

「金融レバレッジ」は2000年代の米国の住宅バブル発生と崩壊の元凶として強調されたので、条件反射的に危険視する方もいるだろうが、「何とかとハサミは使いよう」のたとえ通り、資産価格が落ち込んでいる時に利用すれば有効なツールであり、反対に資産価格高騰局面で使えば我が身を切る刃物になるというだけのことだ。

近年でも05―07年頃にマンション投資をして、賃貸人が出て空室になった時に、元利金が払えなくなって個人破産したり、銀行との交渉で購入物件の任意売却を余儀なくされる人も増えているようだ。そうした事例を聞くと、本稿で述べている5つの鉄則(ルール)を破っているケースばかりである。

つまり、割高な新築マンションを僅かな頭金のみで(あるいは全額借入で)、売り手業者の言い値で購入し、借入金利も高く、空室時に自分でローン返済をする余裕がないというケースだ。銀行は十分な頭金(めどとして購入資金の2―3割)のない借り手へのローンは返済不能になるリスクが高いので、それに見合った高い金利を適用する。こういう条件がそろうと、失敗はほとんど必然だ。

とりわけ素人がやる典型的な過ちの一つとして、自己資金なしで、つまり購入金額全額をローンで賄い、しかも月々のキャッシュフローで自分の払いが出ないようにしようとすることだ。これは合理的な投資の立場からは全く意味がない。むしろ自己資金がない分だけ、ローンの返済期間は長くなり、適用金利は高くなる。合理性のある投資とは、キャッシュフローの単純な出入りではなく、キャッシュフロー全体の内部収益率(IRR)を高めることだ。

5.ワンルームよりも大きめのマンション投資を優先する

20平米前後のワンルーム・マンションは「住むために買う人」が存在しない市場だ。将来売りたいと思っても、購入層はあなたと同じでみな賃貸運用目的の投資家ばかりだから、賃料の利回り計算をする。その結果、マンションの市況が良くなっても価格はなかなか上昇せず、老朽化による減損分だけ下がり続ける傾向が強い。どうしても買うなら、最後まで持ち切ってペイする価格で買う必要があろう。

ところが、もう少し大きな物件、40―70平米だと居住目的で購入する層がいる。こうした方々の多くは本稿で紹介した利回り計算などせずに「お値段が手頃で、気にいれば買う」という投資合理性の低い行動をとっている。ただ、そのおかげで高めの価格で売れる可能性が高い。投資の世界は情報と合理性で武装した者が優位に立つ世界だ。

最後に言い添えると、賃料集金を含む各種資産管理業務は専門の業者に委託するのが普通だ(委託手数料は賃料の3―5%程度)。多くの仲介業者は資産管理サービスも兼ねている。ある程度の業歴を有する信用できる会社を選ぶのは当然のことである。

*前回のコラムはこちら(here

*竹中正治氏は龍谷大学経済学部教授。1979年東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、為替資金部次長、調査部次長、ワシントンDC駐在員事務所長、国際通貨研究所チーフエコノミストを経て、2009年4月より現職、経済学博士(京都大学)。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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