January 25, 2012 / 6:47 AM / 8 years ago

貿易赤字材料に円安・株高、米アップル好決算にみる日本の存在感低下

[東京 25日 ロイター] 日本の31年ぶり貿易赤字を材料に、ヘッジファンド勢が円売りを仕掛けた。円安を好感し日経平均.N225も3カ月ぶりに8900円台を一時回復。潤沢な所得収支があることから早期に経常赤字にまで転落することはないとして円債市場に動揺は走っていないが、日本の貿易構造が変化している可能性もあるという。

1月25日、日本の31年ぶり貿易赤字を材料に、ヘッジファンド勢が円売りを仕掛けた。円安を好感し日経平均も3カ月ぶりに8900円台を一時回復した。写真は2010年撮影(2012年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

米アップル(AAPL.O)の好調な決算は、世界市場における日本企業の存在感低下を示すとの指摘もあった。

<短期的には貿易赤字は縮小見通し>

「日本の貿易収支の赤字化をネタに、きのうからファンド勢が大騒ぎしている」(本邦金融機関)──。海外市場で火が付いた円売りは、東京時間になっても続き、ドル/円、ユーロ/円とも約1カ月ぶりの高値に上昇。前日の米株はさえなかったが、日本株は円安を好感し自動車や電機など主力輸出株を中心に買いが先行した。

ただ円売りは仕掛け的な動きが主体で、マーケットは比較的落ち着いている。株高もショートカバーが中心で、市場では「輸出株や金融株に海外勢の買いが先行したが、寄り後は動きが鈍っている。日経平均の8800円台半ばでは先物にヘッジ売りなども出て、上値が圧迫されている。ギリシャ債務協議やユーロ圏の国債大量償還などを控えて何が出るか分からず、悪材料に備えようという動きのようだ」(大手証券エクイティ部)との声も出ていた。

財政赤字をファイナンスする「原資」が枯渇するのではないかとの懸念を材料に、日本国債は売りだというポジショントークも聞かれたが、円債市場は落ち着いており、前場の円債先物は小幅高、10年最長期国債利回り(長期金利)も小幅低下した。日本は世界一の対外債権を有し、毎月、所得収支は安定して1兆円近い黒字となっていることから、多少の貿易赤字となっても経常収支は黒字を維持できている。

タイ洪水など被害を受けたサプライチェーンの回復などが進めば輸出は回復し、原発が一部でも再稼働すればエネルギー輸入額も減少して貿易赤字は解消に向かうと見方は多い。みずほ証券チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は「輸出は供給態勢のたて直し、新興国主導の海外経済の成長持続、日本企業の努力もあり、今年の秋以降のイメージで輸出は前年比でプラスに戻ると考えている。輸入は原発の稼働の問題という大きな事があるが、部分的に再稼働するとみている」とし、貿易黒字に戻る流れにあると指摘している。

12月の輸出は欧州連合(EU)向けが12.7%と大きく落ち込んだが、1月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)速報値は、総合、製造業、サービスの3指数がそろって前月から上昇し、市場予想も上回るなど欧州景気は持ち直しの気配も見せている。欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのメルシュ・ルクセンブルク中央銀行総裁は24日、欧州経済は今年に入り拡大基調に戻ったようだとの認識を示した。

また白川方明日銀総裁は24日、金融政策決定会合後の記者会見で、日本の貿易赤字について「この傾向が2010年代半ばを展望して、定着するとはみていない。足元の要因は一時的な要因と考えている」と述べている。

<世界市場でさえない日本企業>

しかしながら、日本の貿易の見通しが暗くなっていることは否めない。足元は欧州経済が持ち直しているが、ソブリン問題という「爆弾」を抱えたままでは低成長を余儀なくされる。世界銀行は24日、欧州経済について、差し迫ったリセッション(景気後退)が緩やかにとどまっても、強い回復を遂げる可能性はほとんどなく、先行きも成長は弱いとの見通しを示した。欧州の成長は、2030年まで制御可能な水準に減少しないとみられる債務によって圧迫されるという。輸出の回復予想は期待感込みだ。

円高が一服しているとはいえ水準は対ドルで78円前後、対ユーロで101円前後と企業の想定レートぎりぎり。企業向け電力料金は引き上げられ、法人税引き下げもおぼつかない。「企業は海外に出ていかざるを得ず、空洞化が進めば日本の輸出力は低下し、貿易収支も悪化する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)という。

また世界市場で、日本企業の存在感が低下していることも懸念要因だ。米アップルの「アイフォーン(iPhone)」や「アイパッド(iPad)」は10─12月期に販売が倍増。売上高、利益とも過去最高を記録した。「何とか対抗できているのはサムスン電子(005930.KS)ぐらいで、モバイル端末の世界市場で日本企業の存在感は極めて薄い」(国内証券)。数少ない成長分野での劣勢──。日本株のパフォーマンスが悪いのは、日本代表企業の魅力が低下しているためだとの指摘はマーケットで少なくない。

ハイブリッド車や電気自動車技術ではまだ日本メーカーに優位性があるものの、「北米カー・オブ・ザ・イヤー」に韓国・現代自動車(005380.KS)のコンパクトカー「エラントラ」が選ばれるなど、品質などの差は着実に縮まっている。

<エネルギー価格高止まりのおそれも>

輸入額が減少するかも不透明だ。原発再稼働のめどはたっておらず、エネルギー価格も高止まりしている。日米欧がそろって超金融緩和を続けており、「ECBのLTRO(長期流動性供給オペ)やFRBのQE3(量的緩和第3弾)の過剰流動性がコモディティ市場に再び流れ込んだら、エネルギー輸入額の上昇で貿易赤字圧力がかかりつづけるおそれがある」(国内証券)という。

米連邦準備理事会(FRB)は今回の会合で初めて、フェデラルファンド(FF)金利の推移および利上げ開始時期に関するFOMC参加者の見通しを公表する。マーケットでは2014年まで事実上のゼロ金利政策を維持する見通しを示唆するとみられている。インフレ目標の導入やQE3を示唆するような発言があるか市場は注目している。

内需拡大を伴わない貿易赤字で円安・株高が進行したとしても、日本経済にとってはネガティブな面も多い。持続的なリスクオン材料とできるかには疑問が残るとみられている。

(ロイターニュース 伊賀大記;編集 田中志保)

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