[東京 3日 ロイター] パナソニック6752.Tは3日、2012年3月期の連結最終損益の赤字額が7800億円になると発表した。前年同期は740億円の黒字。従来予想の4200億円の赤字から大幅に下方修正した。02年3月期の4278億円を上回り、同社として過去最大の赤字となる。
<のれん代の減損処理「出し切った」、来期は2500億円の増益効果>
今期は、三洋電機の事業価値を見直し、韓国メーカーとの競争が激化している民生用リチウムイオン電池の収益悪化を織り込んだ結果、同社買収で発生した「のれん代」の減損処理額を2500億円と見込んだ。のれん減損を含む今期の構造改革費用は7640億円で、従来計画の5140億円から積み増す。
巨額赤字を受けて同日夕に記者会見した大坪文雄社長は、三洋電機とパナソニック電工との統合で「課題認識しているものを今回、すべて出し切った」とし、構造改革効果、3社統合効果、タイ洪水被害からの挽回などで、来期については現段階で2500億円の営業増益効果を見込んでいることを明らかにした。
<欧州発の世界景気後退で、今期はデジタル家電など大幅減収>
通期の売上高は従来予想の前年比8.0%減の8兆円(従来予想8兆3000億円)、営業利益は同90.2%減の300億円となる見込み。タイ洪水のほか欧州発の世界景気後退でデジタル家電を中心に大幅な減収になる見込み。さらに法人税率の変更による繰延税金資産の取り崩しも当期純損益の修正要因となる。1―3月期の想定為替想定レートは1ドル77円(従来想定76円)、1ユーロ100円(同105円)にそれぞれ修正した。
今期の薄型テレビの販売計画は1800万台に下方修正した。従来計画は1900万台だった。今期のテレビ事業の営業損益は赤字の見通しだが、プラズマパネル工場の閉鎖など拠点・人員の削減や原材料のコストダウンで来期の黒字化を目指す。
<テレビ事業は来期黒字化へ>
記者会見で大坪社長は「今期は課題事業の赤字が高収益事業の黒字を相殺している」と指摘し、来期に向けて、テレビと半導体関連の課題事業を再建し、海外の白物家電や環境エネルギーなど成長分野を強化していく考えを示した。来期の営業利益の改善効果2500億円については、1)課題事業の構造改革、2)3社統合、3)固定費削減、4)海外部材調達の拡大、タイ洪水被害からの挽回――が内訳で、これに加えて、成長事業の増益効果を見込むという。
巨額赤字の経営責任について大坪社長は「責任を痛感している」としたが「われわれに課されているのは来年度以降の収益回復だ」との認識を示した。
11年3月期の三洋電機ののれん代は5180億円で、今期はここから2500億円を減損処理する。記者会見した上野山実常務は、三洋のれん代の一段の減損について「太陽電池、自動車用電池、電子デバイスは棄損する要素はない」として必要性を否定した。また上野山常務はテレビ事業について「今の段階で1000億円を超える収支改善を見込んでいるので、来期の黒字化はみえてきている」と述べた。
<中長期的な業績回復に不安>
11年4―12月の連結業績は、売上高が前年比10.3%減の5兆9653億円、営業利益は同85%減の395億円、当期純損益は3338億円の赤字(前年同期は1147億円の黒字)になった。世界的なデジタル家電の需要低迷や価格低下のほか円高進行が響いた。さらに薄型テレビ事業と半導体事業の構造改革費用を計上し、最終損益は赤字に転落した。
4―12月期の薄型テレビの販売は前年比8%減の1472万台だった。
SBI証券の投資調査部長、鈴木英之氏は「2002年3月期に過去最大の赤字を記録したのは、ITバブルの崩壊でパソコンなどが急激に落ち込んだためだったが、当時は薄型テレビの成長など期待感がまだあった。今回は同社に限らず『うみ』を出し切った感が乏しい。中期的な業績回復に不安が残る」と指摘している。
(ロイターニュース 村井令二、取材協力 伊賀大記 ;編集 石田仁志)
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